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蛇──という怪人10

 扉を調べて、周囲を探索してそのまま帰ってたりはしないかなー、と楽観的に考えたいた可能性は二階からの侵入後家の一階に何かの気配を感じたことだ否定された。


 んー、気配を消しきれてないけど基本的な隠密は出来てるようなんだよねぇ...素人じゃないのは確かかな。

 二階の窓は鍵かかってなかけど痕跡は無かったし一階の窓からでも侵入したかな。

 骨が折れている足の調子を確認する。二階の窓まで一度に飛び上がったが...最低限体重が掛かっている分痛みはあるが特に問題なく(鱗装で無理矢理)稼働出来るな。無理な足技は封印する必要があるけど問題ないだろう。鱗装を使えばいくらでも代用できる技ばかりだ。


 床にへばりつくようにして五体を床に密着させる。


 さてと、ここからが鱗装の真骨頂だ。

 この鱗装、体に纏わせてあるとはいえその抗生物質は半液体。上手くコントロールする必要はあるけど...流れを作り、体に沿って流し続ければ......こうして無音で地面を這いつくばって移動ができる。


 まぁ、絵面は最悪に近いけどね。(恐らく)顔も起伏もない全身真っ黒な変態が床や果ては壁を無音で更にそこそこの速度で移動しているんだ。僕も初見なら悲鳴を上げる自信があるね。


 二階の一室からゆっくりと扉を開き、廊下に出た後はその粘着力を生かして壁へと登り、天井へと移動する。

 電気は通っている筈だけど...まぁ、侵入者なんだし当たり前だが点けてないのだろう。家の中は外からの光のみで照らされており、所々が薄暗く僕としては非常にやり易く簡単に一階まで移動できた。


 さてさて、目標の侵入者は...居たねぇ。どうやらリビングの方を探っているようだけどそこには何も残していないんだよね。


 さてさて、気付かれないように侵入者の背後であり頭上を位置取る。人型を崩し、平べったく平らに成るようにして最低限の膜だけを残して天井と同化させる。

 いの一番に奇襲を仕掛けてもいいんだけど...ちょっとくらいは情報がほしいんだよね、何でここに入ってきたかとか、何処の組織の人間(怪人)だとか。見た感じは長ズボンに長袖のフード付きの上着を着こんだ...女?服の上からわかる骨格と肉付きからはそうだと思うんだけど...足音が軽すぎてもしかしたら子供かもと勘違いしそうになる。

 軽すぎる割にはその他の技術に未熟が有りすぎるし呼吸だって隠せていない。


 そんなあべこべで不思議な侵入者を眺めて五分ほどたっただろうか、遂に侵入者が動きを見せてリビングを漁る手を止めて居間の方へと歩きだした。


 「ここにも手掛かりは無し、報告に行った先輩も戻らない、ならもう一度...」


 何かの情報を整理するように呟く声は確かな女性の声。不用心だが僕にとっては有り難い、これでもう一人居る事とそのもう一人がもうすぐ帰ってくるという事も分かった。報告ということは組織単位で決定か...不味いなここを凌いでも直ぐ様に移動しないといけないかもしれない。隠し方は自信があるが肝心な強度の方は破壊特化の怪人やヒーローがくれば突破できないこともないという程度だ。


 ここは隠れたままやり過ごして、何もなかったという情報を持って帰ってもらった方が良いか。


 そう思い、完全なステルスに移行しようする。


 「さっきは下に反応が合ったしもう一度試して──」


 あ、不味っ!


 全身をぞわりと()()()()()()()()()()()()()()()()()。実際に耳に聞こえた訳じゃない、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()空気の振動を感じとり、感覚から予想し結論付けた。


 けどそれは今重要じゃない、問題なのは何故それを感じたかで何をされたかである。


 恐らく僕の考えている通りで間違いはないだろう。その証拠にびくりと震えた後ゆっくりと此方に振り返ってきている。音の反響による探知か、物理的に形をなしている上にまだ音の吸収の調節が出来ていない鱗装では完全にバレたと思って間違いない。


 仕方がない...やるか。


 「ひぃ!?」


 へばりついていた天井から離れそのまま落下しながら覆い被さる。当然位置がバレてる上に形すら浮き彫りにされているであろうその行動は回避されるが...何やら様子がおかしいな?


 「ば、化け物...?」


 誰が化け物だ、失礼だなぁ。


 寝転んだ状態のヘドロの海から上体を起こし、さながら泥から体を作り出すようにして徐々に人型を伴っていく。

 うーん...仕掛けてこないな、隙だらけのこの瞬間に何かしてくると思っていたんだけど。フードを目深に被っている為か顔が分かりずらいな...何を感じて考えているか予想できないか。


 楽しくお喋りしている暇はない、推定彼女が言っていた先輩が来るまでの時間も分からない。素早く仕留めて拘束後地下へご案内して少しでも時間を稼いで離脱の準備をしないといけない。


 さて、事前情報ほぼ無しのぶっつけ本番の戦闘。大嫌いで大不得意の状況戦だけど...何とかしないとね。


 「......っ!」


 逃げようとした侵入者に超低姿勢で追い付き、姿勢を回転、殆ど床に寝そべるような姿勢を保ちながら二つの足で踏ん張り、侵入者の真下からギリギリ鼻先を掠めるように左の抜き手を放つ。

 その抜き手を驚きながらも姿勢を後ろへ倒し、尻餅を付きながらも後ろへ翔び回避する侵入者。


 逃がすわけないでしょ、姿も見せてしまったし。

 幸い戦闘に自身があるタイプじゃなさそうだ、いや幸いじゃないなそれなら僕なら敵地らしき場所に一人置いていく訳が無い、先輩とやらが帰ってくるまで思ったよりも時間はなさそうか。


 「はぁっはぁっはぁっ、黒い...影?」


 何の事だ、と思ったけど恐らく今の僕の姿だろう。

 全身が黒く、顔も無く、一目じゃ前を向いているのか後ろを向いているのか分かりゃしない。

 あぁ、そうだな。どうやらこの侵入者は、見かけの恐怖に弱いようだ。

 仰々しく右手を顔に当てて、隠し...蛇の目と呼ばれる紋様を浮かび上がらせる。


 「...っ!」


 全身が黒い人型のナニカに血を思わせる赤い円と空白の白が円の中に浮かび上がる。


 どうやら不評だったようで、侵入者は戦闘体制を立て直していた。まぁ、もう遅いんだけど。


 顔に注目させていた間、床に面している足の裏で表面を流すことで少しの距離を縮める。僕の、射程距離だ。


 侵入者には突然僕が目の前に瞬間移動した様に感じるだろう。驚愕の余り一瞬だけ時間を止めたように動きが止まる、ほら詰みだ。


 「しまっ、あぁぁ!」


 下から突き上げるように手の甲をフード越しに目に当たる部分に当てる。大したダメージにはならない、叩いた感じ余りにも軽い体重は怪人のものだろう。もう少し情報があれば何の怪人で、深度はどれくらいとか当てて見せるのだが今回は無理だな。


 とまぁ、軽い怯みは次の怯みへと繋げさせ、体の不自由を大きくさせる。目──余り効いてなさそうだ──耳──完全に潰すのは可哀想だし後ろに引っ張って姿勢を崩す──腕を──防ごうと動かす腕を流して体を泳がして崩す──膝──もがく足を躱して更に崩して肩に触れて押し倒す──肺──軽い体重だ、肺がある部分に腰を下ろし両膝をそれぞれの腕に載せてやれば良い──的確に、正確に完全に詰めていく。


 「ぐぅっぁ!」


 一通りの動作が終わった時には身動きが取れなくなった不審者とそれに馬乗りに成るようにして上に陣取る僕という構図があった。


 うん、大分上手くできたな。後は鼓膜を護るように膜を調整し音を吸収するようにする。自分の出した音でのエコーロケーション(反響定位)が可能のようなのだ、なりふり構わなければ耳から脳を破壊できるような音波攻撃が出来るだろう。後は背中から首に掛けて膜を硬質化させ万一に備える。


一瞬の瞬間的にしか持たない拘束で充分、先輩とやらの気配もしない。


 せめても優しく、一瞬で意識を奪えるようにその顔を覆うように膜を操作しようとして───ちらりと見えた赤い羽根のような物に気を取られた瞬間。横合いから振り抜かれた剣撃にぶち抜かれて吹き飛んだ。

ちなみにやろうとしたことは鱗装で顔を覆い、人型の怪人なら大概は共通で持つ頸動脈を圧迫し、恐怖と窒息にて一瞬で落とすつもりでした、無理でも窒息は生き物にとって特効に過ぎる。

...優しくとは

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