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7話 ~上位魔族との闘い その2 決戦~

令和一発目の投稿です。二日経ってるけど…

修正しました。





 魔物が住み着いた廃鉱。そこを疲労困憊の四人が進む。休息は満足に取れなかった。この暑さと湿度に加えて、罠の真っ只中にいるのだから。体力の回復もままならない。道具の類もほぼ尽き、緊張感が辺りを支配する。だが幸いなのは魔物に遭遇することもなく、おおよそ地図の通りに進めたということか。


 「やっぱりさっきの場所に全ての魔物がいたようだな」


 タクミは予測が当たっていたことに、顔を歪める。この先にいるものは、数に勝る力を持った魔物ということだ。


 (せやな。こっから先は厳しいで)


 ふと、ナナシは思う。

 タクミは戦う毎に強くなっている。そして彼の成長を感じる度にナナシの心は喜びに震えるのだ。それは自身の望みに近づいているからか。それとも―。


 ―まさかな。


 人間を信じる事などあるものか。自分の心に浮かんだ感情を否定する。タクミはあくまで利用すべき者でしかないのだ。しかしー。


 「ナナシ、これをどう思う?」


 「うるせ。さっさと行くぞ」


 「ったく、お前はよぉ…」


 気が付けばタクミはよく自分に語り掛ける様になっていた。まだ学校にいた頃はほとんど会話など無かったのに、だ。それだけ彼もまた変わり始めていると言う事か。

 だが、それがどうした。と頭に浮かんだ思いを打ち消す。

 これはあくまでなれ合っているふりでしかないのだ。そうだ、信じているのではない。この程度、乗り越えて貰わなければならないからだ。


 「ナナシ、どうした?」


 タクミが何をしている。といった表情でナナシを見ていた。


 (む。なんでもないわい)


 多少慌てたような声に、タクミはますます首を傾げた。まったく、妙に勘が鋭い奴め。宝玉の煌めきにいつもの冷たさは無かった。


 「そろそろ最奥部です。各々準備を」


 ロインが前を睨みつけたまま皆に言う。そして手持ちの武器を素早く確認、ヒカルが剣を抜く。タクミがナナシを棒に、シアーが錫杖を握る。それぞれが大きく息を吐く。


 「行くぞ!!」


 掛け声とともに四人が一斉に雪崩込んだ。シアーを中心にタクミ、ロイン、ヒカルが三方に広がる。それぞれ武器を構え油断なく辺りを見回すが、


 「―なんだ?」


 違和感に初めに気付いたのはタクミだった。

 この場所に来てから周りの景色が薄っすらと見えるのだ。始めは目が慣れたと思ったがありえないと首を振る。ここは光も届かぬ廃鉱の最奥。ましてや蓄光石の光一つで見渡せるはずもないのだ。

 気を付けろ。と叫ぼうとした時だ。ヒカルがすでに前方に向かって走り出していた。その先を見れば傷だらけの女人が鎖でつながれているではないか。


 ―あの馬鹿。


 どう見ても罠だ。叫ぶ間もなくヒカルの頭上から岩が落下した―。



 彼女に真っ先に気付いたのはヒカルだ。鎖で縛られ、体中が傷と汚物で汚されている。


 「っ…!」


 一刻も早く助けなければ。考えるより先に身体が動いた。そしてその事に注力している彼は気付くことが無かった。何故手持ちの小さな蓄光石一つでそこまで見えるのか。

 程なく女人の下へ辿り着き、


 「大丈夫ですか!?今助け―」


 うっ、とヒカルは絶句した。彼女の肌は冷たく、呼吸も小さく浅い。その目は虚ろで反応も微かだ。一体どれほどの目に合わされたのか。それに彼女の傷一つ一つがとても深い。にも関わらず血が流れていないのだ。それらが結びつける結論は一つ。彼女はもはや虫の息だ。

 早くシアーに回復魔法を掛けて貰わなければ。自身が魔法を使えないことに歯がゆさを覚えるが事態は一刻を争う。シアーを呼ぼうと振り返った時だ。タクミが何か叫ぼうとしているのが見えた。

 それは何か確信があった訳ではない。ただ勘が命令しただけだ。飛べと―。

 後は一瞬の判断だった。女人の前を飛び退くと同時、上から巨大な丸い岩石が降ってきたのだ。


 「クッ…」


 土煙を腕で庇う。これほど巨大な岩石が降ってきたというのに、何の気配も感じなかった。それにこの薄明るさ、ここでようやくヒカルも気付いた。おそらく気配殺しの結界魔法か。

 轟音と共に降った岩石に亀裂が走り、内部から光が漏れ出た。まるで卵が孵化するように割れ、光が辺り一面を白に染めた。


 「くっ…!」


 「ちっ!」


 「うっ…!」


 「きゃっ…!」


 それぞれが光から目を逸らす。やがて光が収まりそこにいたのは―。


 「…ガーゴイル…」


 小さく呟いた声は誰のものだったか。



 鍛えられたかのような太い腕と脚。強靭な爪と翼を持った鳥とも獣とも思わしきその面。その赤い目は獲物を前に爛々と煌めいている。

 ガーゴイル。石の怪鳥と呼ばれる魔物である。元は神殿や遺跡の彫像だったものが長い時間を掛けて魔力を帯び、魔物化したものと伝えられている。


 「―――ァ!!」


 魔物特有の濁った鳴き声だ。あまりの轟音に誰もが耳をふさぐ。一鳴きすれば、両手を高く掲げた。天を向いた掌からは濁った光が溢れ出る。溢れた光はガーゴイルの周囲に零れ落ちる。光が生物の様に歪み、人の形を成した。それは歪な剣を持った意思持たぬ不気味な七体の少女達。


 「ファミリア…」


 ロインが苦々しげに呟く。自身の手駒として、ファミリアたる使い魔を召喚するその力。そしてその嘴の様な口から漏れ出たのは―。


 「…シ…ネ」


 言葉を使うのは知性を得た証。それらは一つの事実を意味していた。


 「―コイツが上位魔族か!」


 七体のファミリアが方々に飛び出した。ガーゴイルの傍にいるヒカルに四体。残り三体がロインとタクミにだ。


 「ちっ!ヒカル戻れ!!」


 タクミが叫ぶ。ヒカル一人が離れているこの状態では、何よりもヒカルが危うい。


 「ここは私が引き受ける!二人は早く若の下へ!!」


 ロインが二つの火球をファミリアへと放つ。火球はそれぞれ螺旋を描きながら彼女達の足元へ着弾。地面を抉る衝撃と土煙がファミリアの動きを止める。


 「今だ!!」


 タクミとシアーは走り出す。僅かに煙が晴れ、そこから二人を逃すまいとファミリアの一体が飛び出そうとするが、その脇を銀閃が掠め地面に短剣が突き刺さる。


 「行かせるものかよ」


 ロインが懐から素早く短剣を取り出し投擲する。短剣はファミリアの傍を掠めるだけだ。だが構わない。注意をこちらに引き付けることが出来ればそれでいいのだ。

 ようやく土煙が全て晴れた。三体がまずはロインから片付けるべきと判断したのだろう。それぞれが歪な剣を構え、にじり寄ってきた。

 ロインがゆっくりと腰に差された剣に手をやる。剣を抜くのは久しぶりだ。手首を翻せば固い金属音が鳴った。瞬間彼の雰囲気が変わった。睨みつける視線もまた鋭い刃の様だ。


 「さぁ、来るがいい」



 それは幸いと言って良いのだろう。ガーゴイルは未だ動く素振りを見せず、ヒカルの相手は目下四体のファミリアだ。

 四対一。普通ならば形勢不利とも言える状態だ。しかしながらヒカルは互角に切り結ぶ。ヒカルの剣の腕はロイン仕込みのものだ。この程度で追い詰められる程や(・)わ(・)ではない。ヒカルが一体のファミリアの剣を叩き落す。無防備になったファミリアを残る三体に向け蹴り飛ばした。三体が受け止める形となり、ヒカルに向かうことが出来ない。今を好機とばかりに、タクミ達の下へ戻ろうとした時だ。


 「なにっ!?」


 ガーゴイルが厭らしい笑みを浮かべ、石の爪が女人の胸にあてがわれた。先端が彼女の身体に食い込み、僅かな血が滴り落ちる。


 「―ぅ」


 彼女はうつむいたまま僅かな反応を見せるだけだ。


 「止めろ!!」


 ヒカルが叫び、その足を止める。ガーゴイルは理解していた。ヒカルが彼女を見捨てることが出来ないと言う事を。ならばこうすれば?

 果たしてガーゴイルの想像通りヒカルはこちらへ向かい走り出した。それはファミリア達にも背を向けるということだ。体勢を整えた彼女達は当然その隙を見逃すはずもない。


 「ぐっ!!」


 一体のファミリアが背中からヒカルの右肩を斬り裂いた。膝を突き左手で肩を押さえるものの、裂けた肩からどんどん血が溢れ出してくる。追い打ちを掛けるべく残る三体がヒカルに向けその刃を突き立てようとする。地面を転がりながら刃を躱すが、その拍子に剣が手から零れ落ちヒカルから離れた。


 「くそっ!」


 剣を拾おうと手を伸ばす。だがその手が剣を掴むより早く、ファミリアの一刺しが貫く。


 「うあぁあっ…ぅ!!」


 ヒカルの表情が痛みに歪む。ファミリア達が生気の無い表情のまま不気味に笑う。地面に這いつくばる様に縫い止められたこの人間は何と無様なことか。さらに痛めつけるべくヒカルに近づく。

 ガーゴイルの石で出来たその顔が愉悦に浸る。自身もこの人間を存分に嬲ろうと動きだす。その時だ。


 (ぬっひょおぉおぉっ!?)


 珍妙な叫びと共にナナシがヒカルとファミリアの間に割って入った。ファミリアが何事かと飛び退き、距離を取る。ヒカルが目を見開いてナナシを辿ればその先にはタクミとシアーが。伸ばされたナナシはさながら如意棒か。


 (あいたたた。兄さんは孫悟空か!?)


 「はっ!誰かの掌の上だ。その通りだよ」


 相変わらずの捻くれた態度を取りながらもヒカルに駆け寄り、「抜くぞ」と手を貫いていた剣を引き抜く。抜く瞬間に「うっ…!」とヒカルが息を漏らしながらも手を確認する。手指は何とか動いた。


 「大丈夫ですか、兄さん!?」


 シアーが起き上がるヒカルを支える様に、肩の傷口に手をあてがった。手から淡い光が生まれ、傷口から血が止まりだす。回復魔法だ。

 彼女はヒカルの手をちらと見る。そっちの傷も心配だが、こちらの傷が大きい。今の自分では、離れた傷を同時に治すことは難しい。


 「シアー。ソイツを任せたぜ」


 「タクミさん…?」


 「こっちは何とかしてやる」


 ぶっきらぼうにそう言うと、振り向くことなくナナシを構えた。今の二人は無防備だ。回復魔法はシアーの消耗もあるせいか、いつもより手間取っている。その時間をタクミが稼ごうというのだ。その目には恐怖は無く、負けぬと気概に溢れている。今度こそガーゴイルが不快そうに目を細めた。人間如きが逆らうのか。

 四体のファミリアがガーゴイルの前に立つ。歪な剣を構え、タクミを討たんと生気の無い目で見やる。


 「はっ。俺如きには三下で充分ってか」


 (たかが石ころが偉そうにしよるで)


 タクミの不敵な視線とファミリア達の意思持たぬ視線。それらが交錯するように―。


 「おぉっ!!」


 タクミが短く叫び突撃する。四対一。形勢が不利なのは承知の上だ。だがなんとか時間は稼いでやる。シアーがタクミを不安そうに見る中、彼女の手が掴まれた。


 「兄さん…!?」


 「シアー頼む!!俺よりも彼女に回復魔法を!!」


 ―こいつは!!


 ヒカルの叫びにも似た嘆願がタクミの耳にも入ってきた。まだそんなことを言うのか。何もタクミとて女人を見捨てたい訳ではない。だが彼女を助けるには今の自分たちの状況が悪すぎる。

 どちらかを選ぶしかなければ、タクミは選択することを躊躇わない。


 ―それでいいのか?


 心の奥底に仕舞いこんだ感情が問いかける。ズキリと胸の奥が痛み、眉を顰める。


 (兄さん、前や!!)


 彼の意識が一瞬戦闘からそちらに取られた。僅かに下げられたナナシを隙と見て、ファミリアの剣が振るわれる。


 「ちぃ!!」


 ナナシの声に身体が反応し、何とか剣を受け止めた。だがそれだけで追撃を防ぐ術は無い。タクミと相対する彼女の影からさらに左右から二体のファミリアが飛び出た。

 タクミめがけ二振りの刃が振り下ろされた。その刹那―。

 彼の眼前を水流が迸り、ファミリア達を押し流した。


 「タクミ!!無事か!?」


 ロインがタクミの隣に立つ。見れば彼も所々に傷が目立つが、大きな傷は無い様だ。ロインの戦っていた場所では倒れたファミリアが光に還っていた。


 「ここは私が受け持つ!」


 タクミは頷き、ヒカルに向かって走る。どこかに潜んでいたのか、残る一体がタクミの前へと躍り出た。剣を振り翳し、タクミを両断すべく振り下ろす。


 「おぉっ!!」


 彼はそれに怯まず足を止めない。剣が彼の頭を捉える直前、タクミはナナシを振りぬいた。

 渾身の一撃だ。手に伝わる嫌な感触に苦虫を噛んだ表情になる。ファミリアが吹き飛ばされ、ファミリアは光に還りだす。光を一瞬だけ見やると、再び走り出した。



 一方ガーゴイルは下劣な笑みを深め、女人をその巨大な手で掴みこんだ。


 「―ぅぁ…」


 力を込めれば、女人から搾りかすの様な苦悶の声が聞こえた。それが何よりガーゴイルにとって愉快だったし、何よりこうすれば、


 「やめろ!!」


 ヒカルの悲痛な声が響いた。やはりこうすればこの人間は自分から離れなくなる。まったく良い餌だ。と更にその手に力を込める。みしみしと彼女の身体が軋む。 


 「くそっ!!」


 「待って下さい。兄さん!!」


 ガーゴイルへ向かうヒカルをシアーが慌てて止める。回復魔法による治療はまだ済んでいないのだ。そんな状態で戦えばどうなるかなど火を見るより明らかだ。

 そこにタクミが戻ってきた。ヒカルを見るその目は怒りに染まっている。


 「いい加減にしろ。この野郎!!」


 ヒカルの胸倉を掴み上げた。かつてないタクミの様子に、シアーは驚いたように身体を硬直させた。魔法の光が手から消えた。


 「状況が分からねぇのか!!」


 「分かっているさ!!」


 ヒカルも負けじと叫び、タクミの腕を強引に振り払う。


 「それでも助けたいんだ!!」


 俯きながらも叫ぶ彼の表情は読めない。だが感情が爆発した今、言葉は溢れて止まらない。


 「だって、俺は王族で、彼女はこの国の民なんだ!!!」


 ―王は民草の為に在れ。


 いつかヒカルがま(・)だ(・)父(・)で(・)あ(・)っ(・)た(・)リオから言われた言葉。記憶はおぼろげでもこの言葉だけははっきりと覚えている。


 「お前…」タクミが掴んだ手を放した。何か言おうとした時だ。


 「いけない!!」


 シアーの叫びが二人を現実に引き戻す。好機とばかりに女人から手を離し、ガーゴイルが飛び上がり天を仰ぐ。その口から紅蓮の炎が溢れ出した。


 「二人とも私の後ろに!!」


 シアーが前に出ると同時、炎が放たれた。全て焼き尽くされるかもしれないが、まぁ良い。ガーゴイルは気にも留めない。所詮玩具だ。また捕まえればいい。


 「はっ!」


 錫杖を前に突き出すと淡く輝き出した。そして見えない壁、障壁魔法が発現する。障壁と炎がぶつかった。炎は障壁をものともせぬ様に押し切ろうとする。


 「うぁ…ぅ」


 追いやられる様にシアーの足がずり下がる。何とか踏ん張って錫杖を握る手に力を込める。錫杖が輝きを強め、彼女が腕を前に突き出す。


 「ちっ、ナナシ!!」


 (アカン!あれはただの炎や)


 「くっ…うぅ…!」


 炎の威力は未だ衰えず、とうとう障壁がぴしり。と鳴った。彼女の顔を汗がつたい落ちる。その顔は苦悶に耐えるかのようだ。障壁に亀裂が広がれば彼女の顔から血の気が失せていく。


 「うぁ…ぁあ…っ!」


 遂に限界を迎えた。障壁が甲高い音と共に砕け散ったのだ。その砕けた衝撃は放射状に広がり、相殺するように炎を消し、辺り一帯に土煙を巻き上げる。


 「皆!?」


 ロインが叫ぶも答える声は無い。

 ガーゴイルは忌々しく三人のいた場所を睨みつけた。自慢の炎が防がれたことに誇りが傷つけられた様だ。

 やがて土煙が収まるとそこには三人の姿があった。


 「あ…ぁ」


 膝が崩れ、倒れこむシアー。手放した錫杖が地面に音を立てて倒れる。急いでタクミとヒカルが抱きかかえたおかげで、彼女が地面に倒れることは無かった。しかし彼女の身体は服越しでも分かるほど冷たく、顔色は蒼白だ。息をするのも苦しいのか浅く短い。まるで喘ぐ様だ。


 ―魔力切れ。とうとう彼女の魔力が底を突いたのだ。


 「ちっ、しっかりしろ!」


 「シアー!!」


 二人の呼びかけに彼女は薄く目を開け、


 「ぅ……」


 息は絶え絶えだが、それでも口はこう動いた。


 ―ごめんなさい。と。


 口の動きを読んだタクミは、すっと彼女の手に自身の手を添えた。ぎゅっと弱々しく、だが確かに握られた。


 「…なんでお前が謝んだよ」


 どこまで他人を考えるのだ。この兄妹は―。


 すべての元凶たるガーゴイルを睨みつけた。対するガーゴイルは口角を持ち上げ、獲物の生存を喜んでいる様では無いか。彼等を嘲笑う様に、見下す様に―。

 なんと浅ましき笑みか。だがタクミはこの表情に覚えがある。それはかつての自分がしていたそれだ。斜に構え全てを見下していた自分の笑い顔そのものだ。


 ―そういうことかよ。


 自分が何故ヒカルとシアーが苦手だったのか理解した。自分はヒカル達の側にいるが、本来はガーゴイルと同じ側に立つ人間だったのだ。

 真直ぐで損得勘定を持たないヒカル達。一方で捻くれて冷酷に切り捨てるべきを切り捨てる自分。まるで対極にいるかのような自分達。

 それでもそんな自分を彼等はこちら側だと真直ぐな視線をぶつけてくるのだ。そうなれば或いは。と希望を持ってしまうのだ。


 ―だったら、コイツは俺が倒さねえとな。


 タクミの手が握られ、その瞳はガーゴイルを睨みつける。まるで過去の自分の様な魔物を。何が上位魔族だ。


 「覚悟しやがれ」


 意を決した声色にヒカルが驚いたようにタクミを見る。そこに残ったファミリアを倒したのか、遅れてロインが駆け寄ってきた。


 「皆無事か!?」


 「オッサン、シアーを頼む」


 ロインにシアーを大事そうに渡す。浅く、苦しむような呼吸をする彼女をこれ以上苦しませない様に。彼女に目配せをした。もう心配はするな、と。


 「君はどうするつもりだ?」


 「決まってんだろ」


 無理だ。ロインは叫ぶ。いくらタクミが成長してきているとはいえ、上位魔族と化したガーゴイルとは比べるべきも無い。まして回復の手段も尽きた今、死にに行くようなものだ。

 タクミを止めようと肩に手をやった時だ。タクミがロインを見た。瞬間、彼の肌が粟立った。その目には覚悟、意思、殺意―様々なものが宿っていた。そしてロインは知っている。かつて一度この目をした師と向き合ったことがあるのだ。そして師はこの目をこう呼んでいた。


 「…修羅」


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