4.朝の習慣の変化─1
偶然の出会いで、同じクラスの女の子、月子と友達になった優希。偶然月子と出会った日から、優希の朝は以前とは違った時間となっていた。
電車で田村さんと初めて出会った日から、僕の朝の習慣が変わった。
僕は田村さんと話したいがために、朝起きる時間を以前より遅くしているのだ。そして毎朝、同じ遅い時間の電車に乗り、田村さんと話して学校に行く。今では、遅い時間の電車が普通の時間の電車と感じるようになってしまった。
さ、今日もよく寝た。そろそろ駅に向かおう。
「じゃあ、またね、田村さん」
「ええ、またね優希君」
ああ、もう学校に着いてしまった。もっと話したかったな。いやまあ、話そうと思えば学校でも話せると思う。でも、僕と話しているところを見られたら、冷やかされるに違いない。僕が冷やかされる分にはいいけど、田村さんに悪い。それに、田村さんが冷やかされる所を僕は見たくない。登校中以外で話すのは無理だと判断し、我慢しているのだ。ちなみに下校中は、田村さんが友達と一緒に帰るため、話すことはできない。
「ああ、早く明日の朝にならないかなぁ……」
気づいたら無意識にそう呟いていた。まあ、これが僕の本音だ。だってこれから、今日の学校が始まるんだ。つまりこれから……
「はは、今日も素晴らしい一日が始まろうとしているのに、何を言っているんだ?」
これから始まるんだ。今日もパシリが。
でも、昔とは違う。昔は、パシリから始まり、最悪な気分で終わるような日常だった。今の一日の始まりは、田村さんから始まる。一日の終わりは、明日の朝が楽しみで、期待を膨らませて終えることができる。今の僕は、幸せ者だ。
ある朝、ここ数日は晴れが続いていて、天気予報も晴れだったのに雨が降った。嫌な感じだな。また僕の傘が誰かに使われるんじゃないか。そんな不安を抱えながら、僕は家を出た。
駅について、電車を待っていた。今日は田村さんと何を話そう。僕はさっき抱えていた傘の不安を忘れて、今はいい気分になっていた。
ようやく電車が来た。僕は余裕を持って電車に乗り、田村さんの姿を探した。
──しかし、どれだけ探しても、そこに田村さんの姿はなかった。どうしたんだろうか。僕と同じ寝坊をしてしまったのか?それとも、田村さんの身な何か……。
……いや、考えすぎだ。少し落ち着こう。別に一人で登校するなんて、普通のことだったじゃないか。電車で誰かの姿探す何て、僕らしくないだろう。田村さんだって人間だ。寝坊することだってあるさ。
僕は心に穴が空いたような気持ちで、一人で電車に揺られて学校へ向かった。
読んでいただき、ありがとうございます。今回は優希の生活の変化と、月子というたった一人の女の子によって生まれた喪失感が表れた話でした。次回に続きます。
これからも、よろしくお願いします。