第52話「縁と浮世は末を待て」
「それだけだと違うかもだろ?」
「サイトがあったんだ。ちゃき専用のサイトが。配置の仕方が他のブログと同じだった。それと……寂しくなった時、俺はいつも一夏さんの作った曲を聞いてたんだ。そしたら分かっちゃった。だってあの人、いつも似たような曲調なんだもん」
腐るほど聞いた曲を、俺は未だに口ずさんでしまう。歌詞を付けて欲しいような気がしたけれど、あの歌の作者に作詞は向かないような気がした。
「あの時あの歌が流行り出したのは、俺と同じことに気付いた人がいたからなんだろうな」
「あの歌詞の意味は?」
「ふっ……きっとあの人のことだから意味なんてないんだよ」
クリスマスソングが轟く街は、赤と緑の二色で染まっている。藍色の空からは、真白な雪が降り注いでいた。
「神様からのクリスマスプレゼントみたいだね」
「それ職業病? 随分ロマンチックなこと言うね」
「そうかも」
「認めちゃうわけ?」
「「ホワイトクリスマスなんて何年ぶりだろ」」
すれ違った女性と言葉が重なる。思わず綻んだ口元で、同じことを思った人は、どんな人だろう? と背後を振り仰いだ。
「一夏さん……?」
「隼君?」
名を呼ぶと同時に彼女を抱き寄せていた。髪が短くなっていても、少し大人びていても、そこにいたのは紛れもない一夏さんだった。
「好きです。好きです。好きです。好きです……!」
「あはは、見付かっちゃった……」
僕の腕で力なく笑う彼女の肩が震えている。口吻は明るいのに、泣いてるみたいな声で言葉を紡ぐものだから胸が締め付けられた。それを宥めるように背を摩ると、僕の背中に腕を回してくれる。それだけで胸懐は満ち足りていた。
「答えをくれませんか?」
「私で良ければ」
喜ぶ間もなく唇を奪われる。それを甘受していれば温もりが溶けて一つになった。
「唇、冷たいね」
「一夏さんもですよ」
誓いの口付けは冷たくも、柔らかく、甘露な味わいだった。
愛したことが罪でもいい。愛されたことが罪でもいい。僕達は、お互いを愛してしまっただけだから。
答えは初めから決まっていた。初対面で惹かれ合ったからこそ、僕達は間違った途を歩んでしまったのだ。今だからこそ、それが分かる。
彼女も、それに苦しみ、逃げ続けていたに違いない。だから僕が彼女を赦すのだ。そして僕も彼女に赦されたい。そうして共に歩むことが出来たなら、僕達は幸せになれる筈だ。
世間は、きっと僕達を赦さない。僕達が愛し合うことを赦してはくれない。けれども、恋とは本来、罪悪で身勝手なものなのだ。
——罰というものが存在するのなら共に受けよう。コレは君に捧げた恋だから。




