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愛して、私の生き人形(マイドール)  作者: せんのあすむ
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困った時は

麗亜れいあのことを信頼できるようになったのか、璃音りおんはしっかりと彼女に甘えるようになっていった。


ただ困ったのが、それまでは一人で留守番をしていても平気だったらしいのに、麗亜が仕事から帰ってくるとしがみついて泣くようになったことだった。一人でいるのがどうしようもなく寂しいらしい。


以前は警戒していたからいない方が安心できていただけで、麗亜に甘えられるようになってからは彼女の姿を求めてしまうようだった。帰ってからもずっと彼女に縋りついて片時も離れようとしなかった。


「ごめんね、寂しかったよね」


今日も、麗亜が玄関を開けるなり「うあ~っ!」って泣きながら部屋から走り出てきた璃音を抱きあげて、そう声を掛けた。


人間ならばここで保育園に預けるなりという選択肢も出てくるし、実はすぐ近所に認可外ではあるが民間の保育園があるのだ。しかもそこは少人数制で、施設そのものは決して新しくない為かあまり人気がないらしく、常に園児募集の看板が出ている状態だからいつでも入所できると話に聞いた。


実は、麗亜の友人の門崎真尋かんざきまひろがそこの出身で、しかも彼女の母親がかつてそこで保育士をしていたこともあった。だから内情もよく知っていて、商売が決して上手くはないが誠実な園長が運営しているところだそうだった。利用した保護者達の評価は良いのだが、個人の家を改装したような小さな施設で園庭も狭く砂場すらない上にとにかく『古そう』というので、見学に来た保護者がその場で踵を返してしまうようだ。


そういう、良心的ではあっても商売っ気がないことで評価されずに見逃される施設があるというのは残念なことかもしれない。


とは言え、さすがに璃音をそこに預ける訳にもいかない。生きた人形なんて他人に知られたらそれこそ騒ぎになってしまう。


『どうしよう…ただ我慢しろっていうのも可哀想だし……』


そんな風に悩んでいた麗亜の携帯に着信があった。『噂をすれば影』ということか、門崎真尋からだった。


「麗亜、今度の土曜日、いてる?」


真尋からの問い掛けに、麗亜は「え…と」と口籠った。以前、真尋達が来た時には璃音は普通の人形のふりをしてくれていたから大丈夫だったけれど、今の璃音にはそれはできなかった。自分が人形であることをどうやら理解していないようなのだ。印象では、精々二~三歳くらいの幼児といった感じだった。


『どうしよう…』と戸惑っていた麗亜に何かを感じたのか、真尋が言った。


「どうした? なんか悩み事? 私でよかったら力になるよ」


そう言ってもらえた時、麗亜は藁にも縋る思いで言ったのだった。


「実は……」



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