個人チャット
「璃音って、ホントは大学生じゃないでしょ?」
皆がいるところでは深入りしてこなかったけれど、クエストが一段落して殆どのメンバーがログアウトした時、セレナが個人チャットでそんなことを話しかけてきた。
「やっぱり分かりますか?」
リア(=麗亜)が応えると、
「まあそりゃね。話してる内容がぜんぜん大学生らしくなかったし。中学生か、もしかしたら小学生かなって思ってた」
とセレナが言う。
「当たらずとも遠からずって感じですね」
確かに、璃音が生きた人形になってからでも最大十年としてもまだ精々小学四年生程度だから、そういう意味では小学生と言ってもいいかもしれない。もっとも、本当は人間ですらないけれど。さすがにそこまでは見抜かれてなかったようだ。いくら何でも一緒にネットゲームをやってる相手が人間じゃないものだなんて、普通は想像もしないだろう。
「こういうこと訊くのはマナー違反だって分かってて訊くけど、もしかしてリアとはリアルで家族とか?」
「いえ、家族ではないですけど、一緒に暮らしてます。そういう意味では家族みたいなものですか」
「ふうん。訳アリなんだ?」
「そうですね」
「だと思ったよ。ここに来た時もホント酷かったから。完全に<荒らし>みたいなものだったもん。よく垢BANされなかったなって思うくらい。最近では落ち着いてきたかなと思うけどさ。それもリアのおかげなのかな?」
「私のおかげかどうかは分かりませんけど、変わってきたのはそうだと思います。それに、私が彼女と一緒に暮らし始めた頃にはもう皆さんと上手くやってたみたいですよ」
「それなのに、また何かあったってこと?」
「まあそういうことですね」
「さすがに詳しい事情を訊くのは無理かな?」
「はい、それは勘弁してあげてください。<病気>だと思ってもらえればいいです。いつ治るのかは見当も付きませんけど」
「そう…。あの子も大変なんだね……」
「セレナさんもですか?」
「そりゃ、いろいろあるよ。人間だから」
「ですね」
「ま、そういうのはさて置いてさ、璃音に伝えてよ。『いつまでも待ってる』って。戻りたくなったらいつでも戻ってきていいってさ』
「ありがとうございます」
そんなやり取りをして、麗亜はゲームからログアウトした。璃音が昼間にやってるゲームの方は麗亜は参加していなかったから、新たにアバターを作って話をするのもかえって変だと思って敢えて何もしなかった。
あるユーザーがある日を境に突然いなくなるなんてことは、ネットゲームの中では普通のことだからというのもある。
セレナ達については、自分も関わっているからというのもあったのだった。




