奇妙な同居人
璃音の姿でありながら璃音ではない<その子>の前で、麗亜は敢えて何も言わずに美味しそうにただ夕食を食べた。おかずを頬張り、白いご飯を頬張り、味噌汁をすすった。
そんな麗亜の姿を、<その子>は見詰めていた。そんな彼女の目に、羨ましそうな光が宿るのを、ごくりと喉を鳴らすのを、麗亜は見逃さなかった。
「…食べる?」
そう聞いたけど、彼女はビクッと体を竦ませる。
まだ早かったかな……
しかし、彼女の目は麗亜が箸でつまんでいるジャガイモに釘付けだった。
「いいよ、食べて」
小さく切ったジャガイモを小皿に取り分けて、彼女の側のコタツの端に置く。そのまま麗亜はまた自分の分を食べ始めた。彼女が怯えながら警戒しながらそろそろと近付いてきて、そっと小皿に乗せられたジャガイモの切れ端を手に取ってまた部屋の隅に戻って隠れるようにしながら食べても、何も言わなかった。
そして、また、今度は人参の切れ端を小皿に乗せる。するとやはり彼女は恐る恐る近付いてきて人参を手に取って部屋の隅に戻ってそれを食べた。
人形の筈の彼女がどうして食べられるのか気になったけれど、生きて動いて喋って泣いて呼吸までするようになってたのだから今度は食べられるようになったのだとしても不思議じゃないと麗亜は自分に言い聞かせた。今はそんなことを気にしてる場合じゃない。
さらに、ご飯を少しと肉も小皿に乗せると、彼女はそれも手に取って食べた。
小さな欠片のようなものだったけれど、三分の一スケールの人形である彼女にしてみればそれなりの量だったみたいで、さらに置いたジャガイモの欠片にはもう手を付けなかった。
満足したのかは分からない。どうしても我慢できなかったから少しだけ食べたけど、それ以上は遠慮しているのかもしれない。でも無理に食べさせようとも思わなかった。今はただ、自分が危険で怖い存在じゃないっていうことを彼女に理解してもらうことが必要だと麗亜は考えた。
『相当、辛い経験してきたみたいだね……』
彼女が璃音なのか、そうじゃないのかは今は分からない。ただ、とにかく彼女に信頼してもらわないと何も始まらないと自分に言い聞かせる。
お風呂に入っていつものように裸で寛ぐ。彼女はやっぱり部屋の隅から動こうとはしない。
なので麗亜は、璃音と一緒にやっていたネットゲームにログオンし、
「璃音はレポートがいろいろヤバいらしくてしばらくログインできないって言ってました」
と、仲間に伝えた。
「ふうん、レポートねえ……」
セレナがそんな風に言ったけれど、それ以上は特にツッコんでも来なかったのだった。




