納得できない
『自分も失敗するのに他人の失敗は許さないなんて、ズルいんじゃないかな』
そう言われて、璃音は二の句を継げなかった。確かに自分だって失敗はする。些細な失敗についてあれこれ言われると腹が立った。だから他人に対してもそれを責めた。自分ばかりが言われるのが嫌だったからそれを責めた。
なのに、麗亜はまったく違うことを言う。自分も失敗するんだから他人の失敗も責めないとか言う。
理解できない。分からない。腹が立ったらそれは言うべきじゃないのか。それを言わないなんて、自分ばかり我慢することになるんじゃないのか。そんな不公平なことは納得できない。
そのことを思うと、ようやく言葉が出てきた。
「他の奴は言ってくるぞ! なのに自分ばっかり我慢しろってこと!? そんなの不公平だろ!!」
と的確なところを突けたと思った。なのに、麗亜はまるで平然としてた。
「でもそれで言い返したら、相手もまた言い返してくるよね。そうやって言い合いになってるのよく見るけど、私、そういうの時間の無駄にしか見えないんだよね。だって、いつまで経っても平行線でしょ? そういうの。
それにさ、言った言わないで揉めてるのもよく見るよね。で最後はお決まりの、『どっちが先に原因を作ったか』で水掛け論ってやつ。
いつになったら終わるのかなって思ってたら、結論なんか出ないで結局は根負けした方がいなくなって終わり。な~んにも結論が出てないから問題は何一つ解決してないのに残ってる方が自分が正しかったから勝ったとか言ってるの。
客観的に見たらどっちもどっちなんだよね。時間を無駄にしただけって感じかな。
私はそういうの好きじゃないな~。だから自分が言わなくちゃと思ったことだけ言ったらそれで終わり。別に言いたいことも無かったらもう何も言わない。
そんな感じかな~」
「だからそれが分からないって! 言われっぱなしで我慢できるわけないだろ!!」
「え~? でも私、璃音には言われっぱなしって多かったと思うけど、我慢するどころか腹も立たなかったけどな~」
そうだった。璃音が一方的に罵っても、麗亜は言い返すどころかニコニコ笑ってそれを聞き流すことが多かった。すると言い合いにならないから何となくそのままで終わって、すぐ他のことができた。
言い合いになる時間を他のことに使えるというわけだった。
それに、麗亜が言い返してこないからそれ以上腹も立たなくてすぐに終わった。言われてみれば確かに時間を無駄にはしてない気がする。
「でも…! でも……!」
それでも璃音は納得できなかったのだった。




