Nが付くお方
「ぎゃーっ!!」
「うわーっっ!!」
「何やってんのーっっ!!」
麗亜のもう一人の小学校時代からの友人、栗田猪日登美も参加して三人でゲームを進めていたが、その中で<Nの付くお方>が顕現してしまい、新たに作った探索者が永遠に発狂してしまい、前回に引き続いてキャラクターをロストするという悲惨な結末を迎えてしまったのだった。
日登美をゲームマスターにして進めてたのである意味ではゲームマスターたる日登美の勝ちと言えばそうなのだが、彼女はみんなと一緒に楽しむのが目的の<エンジョイ勢>なので、この手のガチな結末はあまり望んでいなかった。むしろ邪悪な存在を退けて『良かった良かった』で終わりたかったのだ。
その、ほわんとした印象の、さらりとしたセミロングの髪が男性ウケしそうないかにも可愛い系のフェミニンな見た目通りに、ハッピーエンドが好きな女性だった。
それでこんな陰惨なゲームをしてるのもおかしいと思うかもしれないけれど、そういうのこそ『良かった良かった』で終わってほしいと願うという、ある意味では倒錯した嗜好の持ち主であるとも言えるかもしれない。
まあそういう、やっぱりどこか<普通じゃない>からこそ麗亜と気が合うとも言えるだろう。
と、三人がゲームを楽しんでる間、璃音は普通の人形のふりをしてベッドの上に座っていた。そうして、麗亜の友人達を観察していた。
考えてみれば、生きている人形に監視されているという、ホラーとしては定番のシチュエーションとも言えるのに、残念ながら璃音自身は自分の正体を麗亜以外に明かす気はなかった。
ただ、これまでの主人達のように、ここでロクでもない展開にでもなるのなら、その限りではなかったけれど。
でも、真尋も日登美も、とてもいい友人だった。二人を前にした麗亜の表情も穏やかで、ゲームの結果は散々でも朗らかに笑っていた。
それは、璃音の知らない人間関係だった。彼女がこれまで見てきたそれは、互いに傷付けあい足を引っ張り合い貶めあうものばかりだった。だから皆、荒んだ表情をして心が荒れていた。
なのに、今、璃音の前で繰り広げられているのは、とても楽しげで、のんびりとしていて、柔らかかった。
まるで、麗亜のおっぱいのように心地好かった。
『人間って、一体なんなのよ……』
璃音は三人の様子を見ながら、そんなことを考えていた。
彼女がこれまで見てきたのも、確かに人間の一面だった。でも、今、ここにあるものも、やっぱり人間の一面なのだった。




