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愛して、私の生き人形(マイドール)  作者: せんのあすむ
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家宅捜索

ドラッグ。それが危険な禁止薬物であることは璃音りおんにもすぐにピンときた。人形として部屋に置かれてただけの頃にもテレビなどを散々見てきて知識だけは豊富にあった。特に前の主人がどろどろとした陰惨なドラマが好きだったらしく、とにかく犯罪行為やら社会の裏側やらでぐちゃぐちゃになる人間模様を夢中になって見ていた。


その所為か本人もDV男と離れられないとか、絵に描いたような底辺の人生を送ってるようだったけれど。


『またか~……』


璃音は思わず頭を抱えそうになりながら水商売の嬢らしき女性の姿を見守ることになった。


ただ、その女性は、薬物に手を出しているらしいことと部屋の片付けが苦手らしいことを除けば暮らしぶりそのものは淡々としていて穏やかだった。携帯電話に頻繁に電話がかかってきて、それに出るたびに人が変わったように高い声で媚を売るように鼻にかかった話し方をしていても、電話を切れば落ち着いたものだった。たぶん、客からの電話だったのだろう。


そんな感じで平穏に過ぎた日々も、また唐突に終わりを告げた。


女性が突然、部屋に返ってこなくなったのだ。それから数日して部屋のドアが開いたと思ったら、いかめしい顔をした男が何人もドカドカと部屋に上がり込んで荷物を漁り始めた。


刑事だった。家宅捜索というやつだ。


そうやって部屋中をひっくり返さんばかりの勢いで漁っていた男達の一人が、古い携帯電話のバッテリーが入ってる部分を開けた時、声を上げた。


「ありました!」


声を上げた男の手には女性が何度も取り出して使っていた小さな透明なビニール袋があった。薬物を小分けにした<パケ>と言われるものだった。


「よし、これでもう完全にクロだな。他にもないか徹底的に調べろ」


年配の刑事がそう指示して、さらに部屋中を探し、結局、他にもパケや空になったパケが見付かった。


女性は、薬物を所持していたところを現行犯逮捕され、それに伴って家宅捜索が行われたということだった。


その後、女性は帰ってこなかった。もう何度目かの逮捕であり、このまま裁判で実刑が出て刑務所に収監されるのは間違いない情勢だった。


更にその後、女性の親族らしき人物が来て、部屋の荷物をすべて運び出してしまった。どうせこの部屋には本人は帰ってこれないからだろう。


璃音も運び出され、しかし不用品として処分されるものとは別にその親族の自宅に持ち帰られた。


「ほれ、人形だぞ。立派だろ。大事にするんだぞ」


そう言って差し出された璃音を「わあ!」と嬉しそうな笑顔で受け取ったのは、五歳くらいの女の子だった。



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