第6話VSデストロイ・ワーム
「オラァっ!」
バギャン!と言う音を立てながら、フレドリリスを殴り飛ばす。
だが、その攻撃もあまり通ってはいないようで、吹っ飛びはしない。
「キュイいイイいい!!」
デストロイ・ワームがこちらに迫ってくる。
「っ!グラビティ・ルベナスト!!」
デストロイ・ワームのいる場所だけ超重力がのしかかる。
が、それをものともせずデストロイ・ワームは地中に潜る。
ちっくしょうめが。
俺の持っている魔法が全くきいてやしない。
ショットガンを打ち込んでも、あの虫の甲羅は固くて通らないし、あの鳥は避けるし。
もうこうなったら、後先考えず持てる力全てでやらなきゃ無理だな。
「〝全てを燃やすがごときその赤燐を持つ龍よ。今我が契約に基づき、起きたまへ!火竜召喚・クルル〟!」
そう唱えれば、ゴアッ!と俺の周りを炎が包み込む。
そうしてその炎が空中で収束し、フレドリリスやデストロイ・ワームに負けを取らない大きさの赤龍が姿を現した。
「がぁぁぁぁぁぁぁああ!!」
「クルル!出た直後で悪いが俺がこのムカデを倒すまで、時間稼ぎを任せたい!フレドリリスの相手をしてくれ!」
クルルに向かってそう叫べば、クルルは首を縦に降ってフレドリリスの方に飛んでいった。
さて……。
「一体一だぞ。この虫が。」
地中から出てきたデストロイ・ワームと対峙する。
まずは一体。
こいつを狩る!
思考超加速を発動する。
そして同時に鑑定を発動した。
俺の攻撃が通らない。
魔法も物理も全てだ。
なら、相手から取ってしまえばいいじゃない。
こいつのスキルはだいたい見てきた。
その中でも気になったのは、やはり腐食攻撃だとか古代魔法だろうか。
まだ見ていないデストロイワームというのも気になるし、魔力変換っていうのも気になるな。
だが、そんなものよりも今1番気になったのはやはり……。
「〝創作スキル・暴食〟」
スキルで作り出す。
暴食。
このスキルは割と破格の能力をしている。
喰らえば喰らうだけHP、MPは回復する。
それは土でも意思でもなんでもいい。
食えば回復するのだ。
しかも、食うものが相手の肉である場合、一定の量を喰らえば、ランダムで相手のスキルも会得できてしまうのだ。
ゲット出来るスキルには上限がないと来た。
「これで後で回してもいいスキルというものが出来たわけだ。」
ニヤリと口角を上げて、ガチャッとショットガンをリロードする。
やつを倒すためにどうするべきか、だ次は。
考えをフル回転させる。
おそらくやつを倒すには、やつのスキルやら魔法が必要になってくる。
俺のスキルではどうしても倒すまでには至らない。
何を今すぐに作るべきだ。
毒魔法をとったところで、やつには状態異常無効のスキルがあって、意味などない。
かと言って、霧魔法を覚えても意味は無いし、古代魔法は未だに見ていなく、どんなものなのかよく分からない。
だとしたら、残る選択肢はひとつになるわけで……。
「創作スキル・闇魔法の極み」
頭の中に闇魔法の知識が一気に入り込んでくる。
なるほど……こいつはなかなか。
「さて、始めようか。テメーの持ってるもので、てめーを屠ってやるよ。」
地をけって、一気にデストロイ・ワームとの距離を縮める。
瞬間に至近距離からのショットガンを見舞ってやった。
「ギィィィイイ!」
「〝ダークネス・リベリオン〟!」
大きめの魔法陣が4つデストロイ・ワームを囲むようにして出現する。
そこから、黒い棘がデストロイ・ワームを襲う。
「ギィィィイイいイイ!」
「〝創作スキル・霧魔法の極み〟、〝霧魔法・シャドル〟」
俺とデストロイ・ワームの周りを霧が包み込む。
やつには魔力感知も気配感知も何も無い。
だからこそ、この戦法が通じる。
霧の中でデストロイ・ワームに向かって四方八方から発砲していく。
玉はショットガンに付与されたスキルにより、分裂、分散をしてデストロイ・ワームに直撃して行った。
「ギュイイイイイイイ!」
あと少し。
あと少しで、足の1本を持って行ける!
「落ちろ!」
ガウン!と足に向けて打ち込めば、足の1本が宙を舞った。
即座に宙を舞った足の方に飛び上がる。
そしてそのまま風魔法でその場に停滞する。
あまり食いたくは無いが、勝つためには仕方の無いこと。
掴んだ足に豪快に噛ぶりつく。
生々しい食感が口の中に広がった。
本当ならば気持ち悪いと思って吐き出してしまうのだろう。
だが、〝暴食〟のスキルが発動しているせいか、吐き気というものはなかった。
ガツガツと食えるし、それどころかすんなりと喉を通った。
「たった2日で人間やめられる世界とか、マジパネェ。」
俺は神を倒す頃にはどんな化け物になっているんだろうな。
そう思いながら、食い終わったデストロイ・ワームの足を捨てる。
そして、右手をデストロイ・ワームにかざした。
「なかなか俺は引き運がいいらしい。……〝古代魔法・ダークファントム〟。」
闇のモヤが辺りを包み込む。
すると、先程捨てたデストロイ・ワームの足がうぞうぞと動き出した。
きっも!
なにあれきっも!
いやゲットした時にこういうものっていうのはわかったけど……まさかここまで生理的に来るとは……。
この魔法を使うのは、この1回きりにしようかな……。
そうこうしてるうちに、足だったそれはまっ黒なデストロイ・ワームに変化していた。
ダークファントムは相手の一部を触媒とすることで、スキルや魔法を除く、ステータスをコピーした同じ生物を作り出すことが出来る魔法だ。
さすが古代魔法。
効果がほかの魔法とは桁違いだ。
「やれ!デストロイ・ワーム(仮)!」
「ギュイイイイイイイ!」
デストロイ・ワーム(仮)は地中に潜り込む。
そして、背後から出現してデストロイ・ワームに攻撃をしかけた。
そこからはまさに大怪獣バトルである。
噛みつき攻撃にしたって、俺の攻撃を遥かに超える火力をしていやがる。
まぁ、魔法やスキルは除かれているとはいえ、ステータスだけなら本体と同じだからな。
そりゃこうなるか。
「俺も少しは加勢するか、な!」
少しその戦場から距離をあける。
離れても、スキル・スコーピングアイがあるおかげで遠くからの射撃は簡単に出来てしまう。
方目を瞑りショットガンを構える。
狙うは本体の目だ。
目を片方でも奪ってしまえば、奴とて機動力は一気に落ちる。
機動力が落ちれば、あとはダークファントムで作り出したデストロイ・ワームにぶち殺してもらえばいいだけだ。
「テメーの負けだ、虫が。」
ガウン!!と一発発砲すれば、それはデストロイ・ワームの目に吸われるように命中した。
「ギュイイィィィイイイィイ!!??」
突然の攻撃にデストロイ・ワームは体勢を崩す。
随分と俺の作りだしたデストロイ・ワーム(仮)に苦戦しているようだな。
「やっちまえ、デストロイ・ワーム(仮)。」
その呟きに反応するが如く、体勢を崩したデストロイ・ワームに咆哮を上げながら襲いかかるデストロイ・ワーム(仮)。
今まではスキルや魔法の差で少しばかり劣勢であったが、体勢を大きく崩したデストロイ・ワームには先程の劣勢が嘘であったかのように優勢に変わった。
ステータスだけは全く同じだからな。
まぁ、あとは任せてもいいだろう。
あの状態からは消耗したデストロイ・ワームでも少しばかり厳しいはずだ。
古代魔法恐るべしだな。
…そうして、油断した瞬間だった。
その死の光を横目で視認出来た。
「………っ!!??」
極太の光線が風を裂き、地を抉りとる。
その光線に何とか反応はしたものの、俺の左足を持っていかれた。
「がァァァああ!?」
勢いよく地面を転がる。
避けきれなかった…!
俺には痛覚無効スキルがない。
そのせいで思考が鈍る。
痛い。
「ぐぅっ…く、そったれが!」
なんだあの攻撃。
あんなもん全身で食らってたら確実に俺は死んでた。
たとえ超速再生があろうと全身が消し飛んでしまえば意味なんてない。
あくまでも体の一部が残っていれば再生できると言うだけなのだ。
左足が再生する。
「ちっ…!デストロイ・ワーム(仮)も持っていかれたか…。」
先の攻撃は自身のステータスを持ってしても、一撃で仕留めるような即死攻撃って訳か。
「まぁ、いいさ…。〝鑑定〟」
巨害虫・デストロイワームLv1342
体力 1628/2468512.0
攻撃 2241325.0
防御2567124.0
素早さ1852415.0
魔力 1243524.0
魔力防御 842359.0
スキル・バッシブスキル
拒悪の魔眼、デストロイワーム、絶対防御、暴食(最上級)、魔法付与、状態異常無効、物理系ダメージ軽減、暗視(最上級)、腐食(最上級)、剛力(最上級)、魔力変換、視覚強化、炎耐性(最上級)、光耐性(最上級)、毒無効、麻痺無効、やけど無効、物理耐性(上級)、耐久(最上級)、MPドレイン(最上級)、HPドレイン(最上級)、毒魔法の極み、霧魔法の極み、闇魔法の極み、古代魔法、退光属性(上級)、毒強化(上級)、毒牙(中級)、毒生成(最上級)、溶解液生成(最上級)
魔法、技能
毒、霧、闇魔法の最上級まで扱うことが出来る。
闇霧、毒霧、ブラッドポイズン、ダークファントム、パワータックル、ダークブレイン
固有魔法
デストロイ・バニシング
デストロイ・ワーム(仮)のおかげでレッドゲージまで突入できた。
あれなら、物理耐性のスキルがあろうと一撃さえ加えられれば絶命する。
そう確信して、即座にデストロイ・ワームとの距離を詰める。
それに反応したのか、デストロイ・ワームもこちらに突撃してくる。
さすがに骨が折れたが…。
「終わりだ、このクソ虫が。〝創作・魔法付与〟」
魔法付与のスキルを作り出し、ショットガンの銃弾に魔法を付与する。
そうして、走りながらショットガンをデストロイ・ワームの口の中に打ち込む。
「いくら外が固くてもよ、中からの攻撃は弱いだろう?」
口の中に入ったあたりで、刻み込んだ魔法が発動する。
付与した魔法は〝イグニス・ザ・オルテン〟
チェックメイトだ。
次の瞬間にドガガガガガン!と連続した爆発音が鳴り響く。
「ギュイイイイイイイ?!」
悲鳴とともにデストロイ・ワームがそのまま地に落ちた。
「…ふぅ……これでやっと一体か…。」
さすがにジャイアントキリングがあっても1000以上のレベル差があるとキツいか。
その代わりに今のでかなりレベルは上がったがな。
新たなスキルなんかも手に入った。
さて…。
上を見る。
それと同時にクルルが落ちてきた。
「クルル………。」
見れば、所々ボロボロになっている。
格上相手によくここまで持ちこたえてくれたものだ。
「ご苦労だった。お前のおかげで準備万端だ。少し休め。」
クルルの足元に魔法陣が出現して、クルルが光の粒子に変わる。
「第2ラウンドの始まりだ、こら。」
「ピィィィイイイイ!!」
そうして、巨怪鳥と俺は対峙するのだった。