アナバンス諸島沖海戦 第一次夜戦②
8月22日(0200時)
日本側
さて…少し時間を巻き戻す。現在、南シナ海はイギリスの東洋艦隊・フランス艦隊、日本側では総統第1艦隊(第0艦隊)・第1支援艦隊が存在している。実はこの海域には、これらの艦隊以外にとある艦隊…いや水雷戦隊が存在していた。その水雷戦隊の名は「第六百六十六水雷戦隊」である。名を編成は以下の通り。
第六百六十六水雷戦隊
旗艦…軽巡「九竜」
第四十四駆逐隊…駆逐艦「第二百一」「第二百二」「第二百三」「第二百四」
第四十九駆逐隊…駆逐艦「第二百五」「第二百六」「第二百七」「第二百八」
第六十六駆逐隊…駆逐艦「第二百九」「第二百十」「第二百十一」「第二百十二」
第九十九駆逐隊…駆逐艦「第二百十三」「第二百十四」「第二百十五」「第二百十六」
である。
これらの性能についても説明する。
紅水型巡洋艦 (準川辺型巡洋艦)
基準排水量…8600t、全長…190m、全幅…18m、軸数…4軸、軸馬力…11万馬力、
最大速力…36ノット、航続距離…6000海里―16ノット
兵装
50口径14センチ連装砲6基12門 艦首側…3基、艦尾側…3基
50口径14センチ単装砲4基4門
53.3センチ3連装魚雷発射管4基
同型艦…8隻
第201型駆逐艦 (戦前増強量産型駆逐艦第3弾)
基準排水量…1400t、全長…109m、全幅…9.5m、軸数…2軸、軸馬力…5万馬力、
最大速力…36ノット、航続距離…5000海里―14ノット
兵装
45口径12センチ連装砲2基4門 艦首側…1基、艦尾側…1基
53.3センチ3連装魚雷発射管3基
同型艦…50隻
元々第666水雷戦隊は、総統第1艦隊に所属している戦隊である。しかし、艦隊とは同行せずに様々な任務を行うことが多く、一部の水兵からは独立水雷戦隊と言われている。
本来、この戦隊は別任務のためナトゥナ諸島を航行していた。その時に偵察艦「長門」の敵襲の一報を受け、本戦隊が一番敵艦隊に近いことから迎撃を行うことになったのだ。
そして先ほど第49駆逐隊・第99駆逐隊による奇襲攻撃を終わらせたばかりだった。
「司令官、先ほどの雷撃の結果ですが、敵巡洋艦3隻並びに駆逐艦7隻を撃沈したとのことです。なお、敵駆逐艦7隻中3隻はフランスの艦艇のようです。」
「ほぉ~あの暗闇で沈めるとは流石だな。艦長、確か…我々の搭載している魚雷の射程範囲は36ノットで7.6㎞だったな」
第666水雷戦隊司令官 南山 徳介少将は通信長の報告を受けて少し驚き、第666水雷戦隊旗艦軽巡「九竜」艦長 小野 道彦中佐に尋ねていた。
「司令官、その通りです!なので、彼らは敵艦隊に突撃し、雷撃を行ったのでしょう。司令官、彼らは素晴らしい水雷魂をお持ちですよ!」
南山少将の質問に小野中佐は少し興奮気味に答えた。彼が興奮するのも無理はない。日本帝国海軍の駆逐艦が搭載している魚雷は6年式53.3センチ魚雷である。これは36ノットで7.6km・32ノットで10kmである。この魚雷は世界各国の魚雷との性能差に遅れを取らない性能を有しているが、これらは全て最大射程であるため有効射程になるには敵艦隊に近づく必要がある。しかし敵艦隊に近づくことはできても敵艦の砲撃の雨を進まなければならないし、砲弾の雨を越えて魚雷を発射しても当たらないことがしばしばある。今回は夜間と言うこともあり、敵に気付かれずに魚雷を発射することができ予想以上の成果が出た。そのため彼は興奮しているのだ。
「そうだな。ちなみに被害艦はいるのか?」
「いえ、いません。全艦無傷です」
「そうか、あの厳しい訓練の成果が出ているな。さて、我々の本来の任務を考えるとこれ以上はよくないな。彼らは一旦この海域から離脱させておこう。通信長、『集合場所に向かえ』と伝えておいてくれ」
「はっ!了解しました」
そう言って通信長は艦橋から出て行った。
「さて、次は我々の番だ」
南山少将はそう言うと無線電話を持った。
「こちら南山だ、全艦に告ぐ。先ほど第49駆逐隊と第99駆逐隊が奇襲を仕掛け巡洋艦3隻・駆逐艦7隻を沈めた。この成果に遅れを取ってはならない。全艦仏艦隊に突撃し殲滅せよ!」
南山少将の指示により軽巡「九竜」を先頭に突撃を開始する。
「敵艦影見ゆ!敵艦影の大きさから敵駆逐艦と認む。距離8000!」
その報告が、巨大双眼鏡に張り付く見張り員から届いたのは、突撃命令が出て数分後だった。
「どうやら気づかれたようだ。艦長、本艦は敵残存駆逐艦の撃滅を優先する」
「わかりました!目標敵駆逐艦!砲術長、今の話聞いたな!」
「了解であります!一撃で海の底に送って見せましょう!」
砲術長の返事と共に主砲6基が、敵駆逐艦の方へと回頭する。
現在「九竜」は3隻の敵残存駆逐艦と渡り合うことになっていた。
「一斉打ち方始め!」
小野中佐が、砲術長に命じると同時に、各砲塔が敵駆逐艦に対し砲弾を放つ。
本来なら各砲塔が1門ずつ砲弾を放ち、砲弾の誤差を修正しながら行う相互射撃が一般だが、今回は距離が8000メートルと近距離であるため、一射目から斉射することになったのだ。
「敵巡洋艦斉射!」
「なんだと!?」
見張り員から、悲痛な報告が入るとともに艦長が驚愕した。
先ほどの戦闘で多くの見方艦が沈没し、敵を取るために敵巡洋艦を一方的に3隻で打ちのめそうと奇襲を仕掛けたのだが、敵巡洋艦に発見され、一射目から敵巡洋艦が斉射したのだ。
「艦長、回避運動を!」
「いや、一射目から斉射したが、本艦には当たらん」
確かにこの艦長の言っている通り、一射目から斉射して砲弾が当たるのは少ない。しかもこの時、敵巡洋艦は前基と後基で狙っていた艦は異なっていた。そのため斉射しても実際に飛んできた砲弾は半分である。なので、艦長は回避運動を行わなかった。
しかし直後、後ろから強い衝撃が、艦橋を襲った。その衝撃は艦全体に届き、乗員を一人残らず深い闇へと送った。
「敵一番艦並びに二番艦轟沈!」
見張り員の歓喜の声が上がる。
敵一番艦並びに二番艦は、魚雷発射管が誘爆したのか姿形はもうみえなかった。
「敵三番艦、第四十四駆逐隊の砲撃により爆沈!」
その報告が、巨大双眼鏡に張り付く見張り員から届いた。
「全艦よくやった!しかし、本番はここからだ!全艦砲雷撃戦用意!目標敵戦艦!」
この時、戦艦との距離は5000メートルを切っていた。
「敵戦艦主砲並びに副砲発砲!」
見張り員から報告が入る。
「進路そのまま!直撃に備えよ!」
南山少将がそう言うのと同時に、艦が至近弾の衝撃により激しく揺さぶられる。
今回は、命中弾はなかったようだ。また、後続にも被害はなかった。
そしてその直後「砲雷撃戦用意よし」の報告がきた。
「うむ!全艦、砲雷撃戦開始。打ち方始め!」
南山少将の号令と共に「九竜」並びに駆逐隊が砲撃を開始。
同時に魚雷も次々と発射され、敵戦艦に向かっていった。




