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風花  作者: 草薙 承
~涼~
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15/20

~涼~ 彼女の隠したモノ

新学期が始まった。

まだまだ茹だる様な残暑が続いている。

これで本当に来月には衣替えできるのだろうか?

俺はうんざりしながら立ち昇る陽炎に、この夏を思い返していた。


蓬さんと出かけて、告って、藍田先輩に打ちのめされて……妙子さんと付き合う事になった。

付き合ってからは何度かデートをした。

見せ付けるように風花で待ち合わせをし、動物園や映画へ行った。

もちろん割り勘。


こういうのはなんて言うのだろう。

偽装結婚……じゃないから、偽装恋愛?


なんだかんだで、妙子さんと出かけるのは楽しい。

時折、想像もつかない事をやってくれる。

何もない所で転んでそこにあったモニュメントを壊すとか、

全然知らない人を俺だと思って付いて行って1時間経過とか。

怖いようで楽しい。

俺ってマゾっ気でもあったんだろうか……。


完全安牌だからなんだろう、妙子さんも素で楽しんでくれてると思う。

風花でも違和感がなくなり、前と変わらずな雰囲気になった。

登校日の帰りに皆で飯食いに寄ったり、真幌先輩にレモネードを盗まれたりと色々あったのも楽しかった。

その時の事を思い出していたら笑っていたらしく、高石にスケベと突っ込まれて焦った。

べ、別にやましいところなんてないんだからなっ!


しかし、いつまでこんな関係が続くのだろうか?

妙子さん達の卒業か、それとも……?

終わりも先も見えない関係に不安が募る。

この楽しい時間が終わるタイミングは妙子さんが握っている。

少なくとも俺は、この関係が終わってしまうのは寂しいらしい。

不毛だ。とは解ってはいるのだが……。




*




そんな事を思うようになってから数週間が経った。

最近、妙子さんの様子がおかしい。

キョロキョロと挙動不審に歩いていたり、明らかに居留守している感じで携帯にもでなかったりしている。

一番おかしいのは笑顔。

ひまわりの様に”にぱっ”と笑うのが特徴だった妙子さんが最近は無理に笑ってる感じがする。


心、ここに有らず。


気になって妙子さんに聞いてみても、「大丈夫、何でもないよ」の一点張り。

一体、どうしたと言うんだろう。

いくら考えても答えは出ず、恐らく同じ様に気づいているであろう蓬さんに聞いてみるかと風花に足を向けた。

今日は妙子さんは委員会で遅い、タイミング的にはバッチリだ。




カラン

もう躊躇する事もない、店の扉を開けた。

中にはお客さんが2人。

どちらも見た事のある常連さんだ。

下手に神崎の生徒がいなくて良かったと軽く安堵する。


「ども」

「いらっしゃい。珍しいね、一人だなんて」

「今日は妙子さん委員会ですから」


そろそろ定位置になりつつある、右から3つ目のスツールへと座る。

お冷を受け取りながら、先日飲み損ねた(盗まれた)レモネードを頼んだ。

蓬さんが冷蔵庫からレモンを出したタイミングで、前置きもなく本題を切り出した。


「最近、妙子さん……変ですよね?」


ざくっと真っ二つになったレモン。

少し驚いたのだろうか、作業する手が止まった。


「涼も気づいてたんだ」

「そりゃ、まぁ……」


いつものペースに戻りレモンが絞られていく。

俯いた顔が少し寂しそうに見え、言葉に詰まる。


「言わないんだよね、妙子」

「蓬さんにもですか」

「ん」


妙子さんの異変にはやはり気がついていた。

そりゃそうか、年中一緒にいるのだから。

下手すれば俺より一緒にいる時間長いかも。


しかしこれで当てがはずれた。

蓬さんが知らないのなら、他に知ってる人はいないだろう。

これはかなり手強い。

妙子さんが話したがらないのは知られたくないからなのは解る。


でも、それがあの笑顔を曇らせるモノなら、俺は取り除きたいと思っている。

それは蓬さんも同じだろう。


「これは、ちょっと口割ってもらうしかない……かな」


自分に言い聞かせるように呟き、今日は絶対にはぐらかされないぞと気合を入れる。

店の時計を見れば、16:45。

委員会はとっくに終わってる時間。

いつもならもう風花(ここ)に着いていてもおかしくはない。

気になったら居ても立ってもいられなくなり、スツールから飛びだすように離れた。


「俺、妙子さん迎えに行ってきます。お金は後でっ」

「了解。よろしく」


勢い良く扉を開けると、ガラカランと妙子さんの鳴らすカウベルに似た音がした。

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