先輩との出会い
大学一年生の春、俺は変な人と出会った。その人はキャンパス内の生協の前にある芝生にいた。ただいるだけじゃない。うつ伏せで倒れているのだ。俺は今その人の後ろ姿――うつ伏せなのだから何処から見ても後ろ姿なのだけれど、正確に言うなら足側の方だ。を道を一つ挟んだベンチから眺めている。もうかれこれ三分間は動いていない。
そろそろ声をかけるか。ただ見る限りおそらく女の人だし、周りからなんか注目されてるしで声をかけずらい。
「すみません。大丈夫ですか?」
そう声をかけながら近づいた。
近づいてすぐに気づいた。その人はただ倒れているだけじゃない。手には小さいカメラのようなものを持っていて、そのレンズの先には鳥が一羽いた。しかし、その鳥は俺が近づいたのにビックリしたのか、飛びだってしまった。
「ああっ!」
その変人は鳥が飛んでいくのを見て、悲痛な叫びをあげた。
「ああぁ……」
そして立ててあった肘を地面から離して、ペタンとその場に突っ伏した。
「あの、すみません。写真撮ってるとは思わなくて」
「あんたは……?」
変人はうつ伏せのまま、俺の方を一瞥もせずにそう言ってくる。本当に変な人だ。早く離れよう。
「川内直人です。農学部の一年です」
「ふーん。学科は?」
「森林です」
「森林か……。なら山とかには詳しいのか?」
「いや、まだ一年ですし」
「まあ、いいか。せっかくだしついてこい」
「え?」
変人は突然俊敏な動きで身を翻して俺の前に立った。
その変人の身長は俺よりも頭一個分低く、しかも童顔で見ようと思えば高校に入りたての学生にも見える。シミ一つない肌に黒く長い、キレイな髪をしている。その言葉遣いとは裏腹にとてもキレイな可愛い人だ。
「ほら突っ立てないでついてこい、セン」
「セン?」
「川内なんだろ? 四文字は長い、だからセンだ」
そんな映画みたいな略し方あるか。別に贅沢な名じゃないだろ。
「それはいいとして、あと少しで授業なんですけど」
「ごちゃごちゃ言ってないでこい。先輩が良いこと教えてやる、授業は三回までは休める」
「それはそうですけど」
「なんだ知ってたのか。なら余計な時間を使わせるな。こい」
そう言って変人(先輩)は俺の横を通るが、その時にその体躯からは考えられないような力で俺の腕を引っ張った。引っ張られながら周りを見るが、みんな遠巻きに見ているだけでだれも助けてはくれなかった。
「というかあなた誰ですか? まだ名前も知らないんですけど」
「私か? 私は二年の岩合水樹だ。好きによべ」
「じゃあ岩先輩で」
なんか言われっぱなしは嫌で、意趣返しのつもりでそう言った。けれど先輩は足を止めたと思うと、俺の方を向き直り、
「なんだ? セン。お前いい根性してるじゃんか。気に入った。今日だけじゃない、これからも付き合え」
そう言ってさらに強い力で俺を引っ張っていった。明らかに俺は選択肢を間違えた。一体どこに連れていかれるんだ。




