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裏17話「私の名は」

 前略。


 目が覚めたら白山くんになってた。



「いや何やったの黑谷ちゃん!!!???」


「新鮮なボイスだね」


「うわわたしやっぱ良い声……ってそんなのどうでもよくて!!なんでわたしが黑谷ちゃんになってて、黑谷ちゃんがわたしになってるの!!!???」


「ふふっ、知らない」


「いや知らないじゃなくてさ!?意味分かんないじゃんこんなの!!」


「TSだって意味分かんないでしょ」


「それはそうなんだけどね」


「というか、色々言いたいの私の方なんだけど」


「というと?」


「だって急にこんな重りぶら下げられたら誰でも文句の一つや二つ言いたくなるでしょ?何キロあるのさ、これ」


「……自業自得じゃない?育てたの誰だと思ってるのさ」



 それもそうか。


 なら仕方ない。



「あと揉みながら話すのやめない?流石に黑谷ちゃんが過ぎるよ」


「もしかして私、今変な活用された?」


「……てか、女の子の身体ってこんな軽いんだ……」


「ああ支障が出てた」



 いや、問題はそこじゃない。


 私達は今、近所のかなりデカ目のスーパー銭湯の仮眠スペースでお泊りし、ちょうど目を覚ましたところ。


 土日前だからまだ良いものの、これから帰宅し、いつ戻るかも分からないまま日常生活を送らないといけないのだ。



「黑谷ちゃんの魔法でぱ〜っと戻せたりしない?わたしが目の前にいるの、すっごい変な感じなんだけど」


「もちろんもどせ……モドセマセン」


「急に棒読みになった」



 そして白山くんin黑谷アメはため息を吐くと、フィギュアでも眺めるかのように私in白山セイを見回してから小さく頷いた。



「ほんと可愛い、わたし。なにこれ、可愛すぎる。万年に一度の可愛さ。世界一大美少女。身体もトレンド感溢れてる」


「pixivの?」


「pixivの」


「……取り敢えず、家帰る?今日、私の家誰もいないし」


「そうだね。今日は部活も休もっか。……それと、治す気になったら教えて」


「モドセマセン」


「はいはい。……あんま、やりすぎないでね」



◇◇◇



 ということで愛しい我が家にただいま。


 いつものように服を脱ぎ捨て下着だけになると、少しの動きだけでぶるんぶるんのばるんばるんのどったぷん。


 こんなえっちな身体で元男とかホントに何らかの法犯してるよね。


 まあ私は白山くんを



「黑谷ちゃん。わたしの身体で変なこと考えてない?」


「考えてます」


「正直が過ぎる……それと、先輩達に今日は体調不良で休むって伝えておいたから。おうちデートだね、ちょうど雨だし」



 そしてベッドに座り、「おーいで」と膝を叩く白山くん。


 私は私のもののはずの太ももに頭を埋めた。


 あー、柔らか。



「自分で良いんだ、黑谷ちゃん……」


「私面食いだから……私白山くんの次くらいに可愛いし……」


「……あれ、黑谷ちゃん、眠い?」


「落ち着く……」


「幼女?」



 おかしい。


 私の身体のはずなのに、中身が違うだけでこんなに甘えたくなるのだろうか。


 そんなことを思いつつ、再び眠りにつこうとしたその時。


 ピーンポーン、とインターホンが鳴り響いた。


 何さ、せっかく良いところだったのに。



「誰だろ、こんな時間に」


「宅配便とかじゃない?」



 そんなことを話しつつ、私達は玄関の方へ向かう。


 白山くんin黑谷アメがドアを開けると、そこには駕籠野先輩と氷室先輩が立っていた。



「あ、良かった。元気そうっすね、黑谷さん。白山さんも、看病お疲れっす」


「……はぁ、あんた達ったら……」



 相変わらずのフラットな調子で「んじゃこれ、ゼリーとか色々買ってきたんで」とそこそこ大きなレジ袋を渡してくる氷室先輩と、私と白山くんの顔を見比べてから、「用も済んだしさっさと帰るわよ」と彼の手を引いて去っていく駕籠野先輩。


 何か悪い予感がしてから数分後、一通のメッセージが届いた。



『あんた達、もしかして入れ替わってた?』


『あ、そういうドッキリです』



 速攻で治した。


 やっぱ芸能人怖い。

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