裏15話「全額私の貢ぎ(その1)」
「ごめんなさ〜い♡わたし達〜、《《お泊りデート中なので》》♡♡」
ビーチベッドに横になり、私の右腕にむにゅ〜っ♡とデカパイを押し付けながら甘ったるい声でナンパを断る白山くん。
私がサングラスを外し、思いっきり落ち込んでどこかへ消えていく彼らの背中を見送る隣で、彼女はふっかくてなっがい谷間の上に乗っけたトロピカルシェイクを啜りながら、満足そうにスマホを弄っていた。
「あ〜あ♡さいっこ♡ってか、黑谷ちゃん、あの人達結構イケメンじゃなかった?遊び慣れてる感じだったし♡」
「何、浮気?」
「あれ〜、嫉妬?違うって♡あの人達、女の子なんてすぐに引っ掛けられるのにさ?わざわざわたしに必死になって、その上あんながっかりした顔して♡よっぽど自信あったのかな?黑谷ちゃんに勝ってるところなんて何もないのにね♡」
夏と水着は人を狂わせるということはここの読者ならみんなFGOで履修済みだろうけど、もちろん白山くんも例外じゃない。
見ての通りパパ活女子かキャバ嬢かってくらい私に甘え倒し、べったりいちゃいちゃの、私にとっては最高に都合の良い白山くんモードに突入してしまっている。
というか夏抜きにしても、白山くん女の子の才能ありすぎだし、完全に性自認も女の子になっちゃってる。
爆乳とつよつよ顔面偏差値で男の子誘惑して、容赦なく断って、その反応を楽しんじゃってる、わる〜い女の子。
……いや、待てよ。
よく考えたら相手は私がいるのに白山くんをナンパしてるNTR趣味の極悪非道じゃん。
じゃあ別にいっか。
善行善行。
ということで私は白山くんと2人、ガーデンプールのプールサイドでぐーたら中。
時々泳いだり、プールサイドバーでスイーツ食べたり。
「そうそう沖縄旅行ってこんな感じだよね」という雰囲気を楽しんでいた。
ちなみに白山くんはどうにか頼み込んで着てもらった紐みたいなクロスホルダービキニで、私はいつもの白スク水。
胸囲の格差社会といった感じだ。
……うん、なになに……
「沖縄なのに海行かないのはちょっと……」?
「泳げよ」?
「海の荒波が白山くんのビキニを剥いでくれる」?
「デカパイ感謝」?
なるほどなるほど、それも確かに一理ある。
でも一個だけ言いたい。
私、泳げない。
どっかの回で言ったと思うけど、私は魔法抜きだと見た目通り、深窓の令嬢程度の身体能力しかない。
小6女子の中の下くらい。
そして白山くんも泳げない。
いや、泳げないは言い過ぎた。
白山くんは小中学生の並程度には泳げる。
……あ、「泳げた」が正しいかな。
今は泳ぐには邪魔過ぎるものぶら下げてるし。
ということで、私達が海に入ろうものならあっという間にエメラルドブルーにぷかぷか浮かぶ水死体の出来上がり。
海に入る前のバカな私と白山くんを助けるために何度でも、何度でも繰り返すことになってしまう。
なのでこうして大人しく、そろそろ日も暮れる海を眺めながらプールサイドでゴロゴロしているわけだ。
ちなみにマリンアクティビティも却下。
バリ酔うし、あと白山くんに合うサイズのライフジャケットないっていう未来予知が振ってきちゃったから仕方ない。
「ねえ、黑谷ちゃん。そろそろ晩ご飯の時間かな?」
「あ、そっか。じゃあ一旦部屋戻ろ。それとも、もう一つくらいスイーツ食べる?」
「ん〜、いいかな。デザートにとっとくよ」
「オッケー。じゃあ帰ろっk」
立ち上がろうとした瞬間、幸か不幸か、脚がもつれて私は派手に転びかける。
そのまま重力に従い、私の頭は白山くんの谷間へと、吸い込まれるように落下した。
「……あれ、甘えたくなっちゃった?可愛いね、黑谷ちゃん♡」
「いや、別に……想像のn倍くらい楽園……」
「任意の自然数?」
私は深く、深く息を吸って吐いてを繰り返した。
レストランの予約には、ちょっとだけ遅れた。




