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天才たちとお嬢様  作者: 釧路太郎
危険な兄と妹編

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59/68

お兄さんと俺とジェニファーさん

「神山君に答えてもらいたいのだが、俺の妹が君を刺したというのは本当なのかな?」

 車から最後に降りた俺に向かって藤次郎さんがいきなり話しかけてきたのだが、その口調とは裏腹に心の底から申し訳なさそうな表情であった。

「俺は美桜ちゃんに刺されてなんかいないですよ。どうしてそんな事を聞いてきたんですか?」

「俺も信じてはいないのだが、例の店で手に入れた刀の手入れをしながら美桜が君を刺したと嬉しそうに言っていたんだよ。俺はそんな冗談は面白くないと一喝したのだが、美桜は冗談ではないと言い、君を刺した後はとても心が落ち着いたと言っていたんだ。美桜は君をまた刺したいと言っているんだが、君は本当に美桜に刺されたというのか?」

「いや、刺されてないですよ。この前も他の人に聞かれたんですけど、俺は美桜ちゃんに刺されてないです。あの店も美桜ちゃんと一緒に行ってから行ってないですし、藤次郎さんはあの店に行ったりするんですか?」

「俺もあの店に入ってないんだ。大会が終わってから何度か行ってみようと思ったんだが、道があっているはずなのにたどり着くことが出来なかったんだ。美桜にい聞いてみたところ、あの店は客を選ぶから今の俺ではたどり着けないという事みたいだ。別に今すぐ何かが欲しいとかはないのだが、美桜が君を刺したと言っている理由が全く分からないので、あの店の主人に聞いてみようかと思うんだが、俺はあの店にたどり着くことが出来ないんだ。もしかしたら、神山君なら行けるのではないかと思うんだが、時間が合うのであれば今日の放課後とか付き合ってもらうことは出来ないだろうか」

「ごめんなさい。今日の放課後はちょっと約束があるので行けないです」

 今日の放課後は綾乃と伸一さんと璃々の四人で映画を見て三人が気に入ったシーンの絵を描くという約束をしているのだ。俺は比較的暇なのでいつでも空いているのだが、俺以外の三人は予定が埋まっていることも多くみんなが揃うのは今日を逃せばいつになるかわからないのだ。藤次郎さんに付き合ってあの店に行く時間はあるのかもしれないが、そうなるとみんなの分の絵を描くことが出来なくなってしまうかもしれない。

「そうか、急に無理を言ってすまなかったな。今度時間が空いている時があったら教えてくれ」

 藤次郎さんは両肩を落として落胆しているようなのだが、急に今日の放課後付き合えと言われても俺にも予定というものがあるのだ。こう言っては何だが、美桜ちゃんが俺を刺したというのは夢の中の話であって現実の話ではない。それは俺自身が一番よく理解しているし、この前ジェニファーさんにも確認してもらっているのだ。だから、美桜ちゃんが変な事を言っているというのは急を要するわけではないと思うのだ。

「いや、僕たちとの約束はまた今度の機会で良いと思うよ。将浩君が僕たちの約束を優先してくれようとしているのは嬉しいのだが、藤次郎君がこんなに心配してくれているんだからそちらを優先してくれても構わないと思うよ。な、綾乃も璃々さんもそれでいいよね?」

「そうですね。私も皆さんと一緒に映画を見たいとは思っていましたが、それは今日じゃなくても大丈夫ですからね。それに、私も将浩さんが刺されたという話の真相を知りたいって思いますから。藤次郎さんが仰っているそのお店というのが私にはわかりませんが、今日はそちらを優先なさってくれた構いませんよ」

「璃々もそっちの方がいいと思うな。お兄ちゃんに何かあったら璃々も困っちゃうしさ、何も無いという事を証明してくれるだけでも確かめる価値はあると思うよ」

「そう言うわけだ。将浩君が僕たちの事を優先してくれようとしているのは嬉しいんだが、君自身の不安が取り除けるのが一番だと思うよ。君は口にこそ出さないが、ここ数日の間にいろんな人から同じような事を聞かれて不安になっているんじゃないかな。その不安の種は早いうちに取り除いてしまうといいんじゃないかな」

 俺はたぶん夢で刺されたという事は誰にも言っていないはずだ。それなのに、美桜ちゃんは俺を刺したと藤次郎さんに言っていた。その事を何も知らないはずの綾乃は俺が刺されたかもしれないと思ってジェニファーさんに俺の体を調べさせた。俺が見た夢を綾乃と美桜ちゃんも同時に見ていたという可能性もあるのだろうが、百歩譲ってあの店で短刀を受け取るところを見た俺と実際にあの短刀を受け取った美桜ちゃんが同じような夢を見るのは何となく理解出来るのだが、その事に全く関わっていない綾乃も同じような夢を見ているという事が腑に落ちないのだ。俺と美桜ちゃんがあの短刀に関わってしまって何らかの理由で同じ夢を見たとしても、それに綾乃が関わってくるという事は何かがおかしいと感じてしまうのだ。

「みんながそれでも良いって言うんだったら俺は藤次郎さんの頼みごとをきこうと思います。でも、俺もあの店に連れて行ってもらっただけなんで道とか覚えてないですよ。藤次郎さんもうろ覚えらしいし、美桜ちゃんに連れて行ってもらう事にしますか?」

「さすがにそれはやめておいた方がいいと思うよ。美桜はちょっと心がおかしくなっているのか君の事を刺したいと言ってきかないんだ。そんな美桜を外に出すわけにもいかず、うちの両親が付きっきりで押さえているような状態なんだ。なので、伸一さんや皆さんが俺に協力してくれて本当に助かっているよ。あの店に行ってすべてが解決するとは思えないのだが、何か解決の糸口は見つかるんじゃないかって思ってるんだよ。だから、申し訳ない気持ちはあるのだけれど、神山君には期待させてもらうよ」

「とりあえず、あの不気味で目立つ外観の古道具屋に行けるかわからないですけど、放課後に徹底的に探してみましょう。何となくどの辺にあるか目星はついていますし、何とかなりますよ」

「申し訳ないが俺にはさっぱりどこにあるのかわからないんだ。連れて行ってもらった時も美桜と一緒に行った時も何となく歩いていたらたどり着いたという認識しかなくて、役に立てなくて申し訳ない」

「あ、その不気味で目立つ外観の古道具屋でしたらわかりますよ。ちょっと前まで週一で通ってましたから。お嬢様が許してくださるのでしたら私がご案内いたしますが」

 全く気付かなかったのだが、俺達のすぐ後ろにジェニファーさん達三人がいたのだ。神谷家からこの学校まで車の通れない裏道を通れば時間の短縮にはなると思うのだが、俺達よりを見送った後に屋敷を出ていてこんなにすぐに着くはずがないのだ。いや、いつも俺達が学校に着く頃にはすでにメイドさんたち三人が教室にいるような気もしてきた。宇佐美さんが運転する車はいつも安全運転で少し遠回りをしているとはいえ、同じような距離を徒歩で追いつくなんて普通ではないと思う。

「ジェニファーが知っているならちょうどいいですね。将浩さんと藤次郎さんだけではたどり着けなさそうですし、道案内していただけるとありがたいですね。今日はジェニファーの仕事をフランソワーズかエイリアスに変わっていただく事にしましょうか」

「そう言うわけですので、今日の当番はどちらかにやっていただく事になりました。さ、放課後まで勉強頑張りましょうね」

 嬉しそうにしているジェニファーさんとは対照的にフランソワーズさんとエイリアスさんは浮かない表情をしていた。神谷家で行っている仕事がそんなに大変なのかと思っていたのだが、俺が知らないだけで何か重労働をしているのかもしれないな。どんな仕事があるのか聞いてみても答えては貰えなさそうなのだが、俺が力になれることがあれば協力してあげたいと思ってはいた。あまり変な仕事ではないと限定しての話ではあるが。

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