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天才たちとお嬢様  作者: 釧路太郎
危険な兄と妹編

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ストーカーじゃなくて忍者です

 藤次郎さんの応援には行くことが出来なかった。全国大会が開催されていたのは月曜から金曜までの五日間であったし、全国大会と言っても藤次郎さんが所属している流派の大会であったのだ。全国各地から集まってきているので間違いではないのだが、その全国というのは日本に六地区で各地区にある道場の代表が選ばれて出場するという形だったのだ。それも名誉なことだとは思うのだが、俺達が授業をさぼってまで応援に行くべきなのかと言われるとそうではないようにも思えていた。ただ、二年生の多くの生徒は藤次郎さんの応援には行っていたのだ。その甲斐もあってなのか、藤次郎さんは参加者の中でただ一人全試合一本勝ちという快挙を成し遂げたそうなのだ。


 担任の相内先生に呼ばれて職員室に行ったのだが、その理由が来週の課外学習で行く予定の工場の資料のレイアウトをどうするかという相談だった。そんな事は先生方で勝手に決めておいて欲しいと思ったのだが、相内先生は俺が選んだほうではなく自分が選んだ資料が良いと言い出したのだ。俺が呼ばれた意味は何だったのだろうと思いながら職員室を出ると同時に美桜ちゃんに捕まってしまったのだ。 

「お兄さんって意外と薄情ですよね。練習には付き合ってくれていたのに、本番になると全く顔を出さないなんて非常識ですよ」

「そうは言ってもさ、さすがに学校のある平日に普通の高校生が授業をさぼって行くわけにもいかないでしょ」

「そういうのって屁理屈って言うんですよ。お兄さんがそんなんだから愛華先輩も応援に来てくれなかったんですよ。責任取ってくださいね」

「責任取れって言われてもさ、俺がそんな事言われる筋合いなくないか」

「まあ、そう言われたらこちらとしては反論できないんですけど、そんなんじゃなくて責任取ってください。昌晃先輩ももう私とデートしてくれなくなっちゃったし、その責任もお兄さんに責任取ってもらいますからね」

 昌晃君は今まで何度もデートだったら一緒に行かないと言っていたのだが、ここ数回は美桜ちゃんが帰り際にデートだったという事を強調しだしたそうだ。学校帰りに少し公園に寄ったり、ちょっとコンビニに行ってみる程度の事だったそうなのだが、その別れ際に何度もデートだと言われてしまって昌晃君はとうとう嫌気がさしてしまったとのことだ。

 昌晃君も美桜ちゃんもそんな事に拘らずに仲良くしておけばいいのにと思っていたのだけれど、二人の中で一緒にいることの意味が大きく異なっているという事は俺が思っているよりも重要なことになっているようだった。

「なんでそんなにデートって事にしたいの?」

「なんでって、私の方が愛華先輩より昌晃先輩に好かれているって証明したかっただけですよ。聞いた話によると、昌晃先輩って愛華先輩と遊びに行った事ないみたいなんですよ。学校で仲良く話すくらいでプライベートではほとんど関りが無いって言ってました。最初は嘘だろうなって思ってたんですけど、昌晃先輩の事を見張っていても本当に愛華先輩と一緒にいるところって見なかったんですよ」

「え、ちょっと待って。それって、ストーカーっぽくない?」

「そんなんじゃないですよ。私はストーカーみたいな犯罪者じゃないです。ただの忍者ですから隠れて観察するのだって普通なんですよ」

 ただの忍者だからって理由でストーキングしていい理由にはならないだろう。この事を昌晃君に伝えた方が良いのか悩んでいたが、後で美桜ちゃんにバレないようにそれとなく教えておこう。

「あ、昌晃先輩には言わないでくださいね。お兄さんはたぶんそんなこと言わないと思いますけど、一応お願いはしておきますね」

「うん、わかったよ」

 あまり嘘はつきたくないのだけれど、黙っているのは良くないよな。でも、言ったところで何かが変わるとは思えないんだよな。

「嘘ついても私にはわかりますからね。でも、お兄さんは嘘をつくような人じゃないって知ってますから、信じてますよ」

「ありがとう」

 なんで俺はお礼を言ったのかわからないが、とにかく別の話題にした方がいいような気がする。何か話題を逸らせるようなものが無いかと俺は辺りを見回していたのだが、学校内にそんなものがあるはずもなく俺は美桜ちゃんから忍者というものがいかに過酷なものなのか聞かされることになったのだ。

「なんでそんなに過酷なのに忍者になったの?」

 そんなに嫌ならやめてしまえばいいのにという気持ちで聞いてみたのだが、美桜ちゃんはこの人は何を言っているんだろうというような顔で俺の質問に軽く答えてきた。

「なんでって、忍者なら大抵のことは許されるじゃないですか。許されるって言うか気付かれてないから怒られないって事なんですけど、それって結構メリットデカくないですか。お兄さんが思ってる以上に忍者って出来ること多いんですよ。じゃあ、放課後にどんなこと出来るか軽く見せてあげますよ。今日は車で帰っちゃダメですからね。一応神谷さんには私から伝えておくんで、逃げないでくださいよ」

 何で高校の職員室の前に中学生の美桜ちゃんがいたのかは最後までわからなかったのだが、いつの間にか美桜ちゃんは俺の前から消えていたのだ。視線を外したほんの一瞬の間に美桜ちゃんが消えてしまったのだが、不自然に開けられた廊下の窓から見える中学校の校舎から俺を見ている女子生徒が何となく美桜ちゃんに見えたのは俺の気のせいかもしれない。


「山下さんから聞いたんですけど、今日は山下さんと一緒に帰るって本当ですか?」

「一緒に帰るというか、ちょっと見せたいものがあるって強引に約束させられたんだよね。たぶん二人で行っても大丈夫だと思うんだけど、綾乃も一緒に行く?」

「いいえ、私はまっすぐ家に帰ることにします。今日は璃々さんと一緒にアニメを見る約束をしてるんですよ。将浩さんの帰りが遅くならないようでしたら一緒に見ませんか?」

「ちなみに、どんなアニメなのかな?」

「璃々さんお勧めの学園モノって言ってましたよ。たぶん、将浩さんがあまり見ないタイプの作品だと思いますが」

「それだったら早く帰っても見ないかも。璃々の好きな学園モノって俺の好みじゃないから」

「好き嫌いは良くないと思いますけど、好みは押し付けるものじゃないですからね。夕食までには帰って来てくださいね」

 そこまで遅くなることは無いと思うのだけれど、いつの間に美桜ちゃんは綾乃にさっきの事を伝えたのだろう。綾乃の連絡先を知っているにしても行動が早すぎるような気がする。それに、何と言われたかわからないが、綾乃もやけに物分かりが良すぎるように思えるんだよな。

「ねえ、将浩君は僕の代わりに美桜ちゃんと一緒にいてくれてるんでしょ。そのまま将浩君が美桜ちゃんと付き合ったとしても僕はありだと思うからさ、上手くやってね」

「いや、そういうつもりはないよ。今も美桜ちゃんは昌晃君の事が好きみたいだからね」

 美桜ちゃんが昌晃君のストーキングをしているという事を伝えそうになったのだが、何も知らない昌晃君を怖がらせるような事はしない方がいいと思って黙っていた。美桜ちゃんと約束をしたという事もあるのだが、これからもストーキングが続くようだったら昌晃君に伝えることにしよう。

「困ったな。僕は美桜ちゃんの事はいい子だって思うけどさ、異性として好きになることは無いと思うんだよね。それは何度も言ってるんだけどさ、一向にわかってもらえないんだ。これからしばらく将浩君が美桜ちゃんと一緒にいること多くなると思うんだけど、僕の事は諦めるように説得してもらえないかな。説得は無理でも僕にはその気はないってのを伝えてもらえればいいからさ。僕が何度言っても聞き入れてくれないし、最近は外堀を埋めようとしているのか将浩君とか飛鳥君に近寄ったりしてるんだよな。でも、将浩君が美桜ちゃんの事を好きになってしまったらちゃんと告白してあげてね。たぶん、美桜ちゃんは将浩君の事も好きだと思うからさ」

「いや、俺もそのつもりはないって」

 美桜ちゃんは普通に可愛らしいし話していても楽しいと思える。ただ、それは友達とか後輩として見た場合の話であって、実際に付き合うことになったら面倒な感じになりそうな予感がしている。忍者の技能を駆使して俺の秘密を丸裸にしてしまいそうだし、藤次郎さんが絡んでくるのも割と面倒なことになりそうに思えるのだ。

 とにかく、今日の放課後に何をするのかわからないが、そういうところにも気を付けようとは思っていた。

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