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天才たちとお嬢様  作者: 釧路太郎
危険な兄と妹編

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全国大会出場

「兄貴が剣道で全国大会に出場することになったんです。しかも、全国大会の会場って隣町なんですよ。自転車でも行ける距離だし、みんなで応援に行きましょうよ」

 お昼休みにやってきた美桜ちゃんは誰よりも嬉しそうな顔をしたままクラス全員に聞こえるような大きな声でそう話しかけてきた。藤次郎さんが全国大会に出場するというのは嬉しいことではある。しかも、出場する大会が高校生の大会ではなく高校生以上が参加することが出来る大会なのだ。高校生が出るには敷居が高いようにも思えるのだが、藤次郎さんはこの高校の剣道部だけではなく藤次郎さんの親戚がやっている剣道道場にも所属しているという事なのだ。

「あれ、皆さんあまり驚かないんですね。やっぱり剣道って地味だって事なんですかね」

「地味とかじゃなくてさ、みんなもう藤次郎さんが全国大会に出るってのは知ってるんだよ。それも、高校生の大会じゃなくて大人が出てる大会に参加するんでしょ。それって凄いよね」

「何だ、皆さん知ってたんですね。もっとびっくりすると思ったのにな」

「最初に聞いた時はビックリしたけどさ、授業が終わって休み時間になるたびにいろんな人からその話を聞いてたからね。二年生の人達が誇らしそうに自慢してるのを見せられているからさ、あまり驚きも無くなってきてるんだよ。ほら、今だって誰かが廊下で藤次郎さんの事を大きな声で言ってるからね」

 天樹透の一件以来この高校の中で二年生は腫れ物扱いされることが多くなっていた。部外者を連れ込んで俺達のクラスに乗り込んできただけでも大問題なのだが、十倍以上の人数を動員しても何も出来なかったという事が一部の生徒の間で今も話題になっていたりするのだ。

 そんな中で藤次郎さんが剣道の全国大会に出るという事は二年生連中にとって久々の明るい話題なので声を大にせずにはいられないのであろう。まるで嫌な事をかき消すように藤次郎さんの快挙を喧伝しているのだ。

「まあいいです。兄貴が全国大会に出るのは事実ですからね。それも、補欠とかじゃなくてちゃんとしたメンバーに選ばれてますから。みんな年上だけど兄貴の方が強いって私は思ってるんですよ。もしかしたら、兄貴は一度も負けないまま大会を終えるかもしれないですよ」

「凄いね。それじゃ、優勝しちゃうって事か」

「そうじゃないんですよ。兄貴一人が強くても勝てないんですよ。団体戦は勝ち抜きじゃないんで兄貴の他に二勝してもらわないとダメなんですよね。もう一人強い人がいるみたいなんですけど、その他の三人で一生出来るかどうかが鍵なんですよね。今から昌晃さんが兄貴のチームに入れてもらって登録するってどうですか?」

「いや、無理でしょ。僕は剣道やった事ないし」

 僕の隣でお弁当を食べていた昌晃君は美桜ちゃんの問い掛けに素直に答えていた。話しかけられればちゃんと返している昌晃君ではあるが、昌晃君自信は相変わらず自分から美桜ちゃんに話しかけるつもりは無いようだ。

「でも、昌晃さんくらいの運動神経ならちょっと練習すれば凄く強くなると思うんですけどね。あの時ここに来てた刺青の人くらい体格が良くて運動神経が良ければベストなんですけど、さすがにあんな刺青が入っている人はお兄ちゃんのところに入ることが出来ないと思うんですよね。昌晃さんがダメだったら、お兄さんが入るってのはどうですか?」

「俺の方が無理だと思うけど。別に体が強いわけでも喧嘩が強いって事でもないからね。俺みたいな素人じゃなくてちゃんとした人がいるんじゃないの?」

「いるにはいるんですけど、私が見ても強いって思えないんですよね。そんなんじゃ兄貴も練習に身が入らないんじゃないかなって思うんですけど、練習だけでも付き合ってもらったりできないですか?」

「練習くらいだったらいいけど、俺は素人だから役に立てないと思うよ。昌晃君はどうする?」

「そうだな。僕も役に立てるとは思えないけど、出来ることがあるなら協力するよ」

「じゃあ、お兄さんは次の日曜に道場に来てください。昌晃さんは私と一緒に動物園に行きましょう」

 道場の場所がどこにあるのかは後で聞くとして、なんで昌晃君は道場ではなくて美桜ちゃんと動物園に行くことになってるんだろう。それだとただのデートになってしまうのではないだろうか。

「いや、藤次郎さんの練習と動物園って何の関係も無いじゃない。僕も道場に行くよ」

「別に道場でもいいんですけど、それだとあんまりデートっぽくないですよね。私は昌晃さんと一緒に過ごせるならそれでいいんですけど、昌晃さんが道場に行っても出来ることなんて何も無いんじゃないですかね」

 俺よりも運動が得意な昌晃君が何もやることが無いと言われているのだが、そうなると俺は何のために行くのだろうという疑問がわいてくる。藤次郎さんの役に立てるのならいいのだけれど、俺が行くことを藤次郎さんが望んでいるのかどうか疑問であったりもする。

「兄貴に聞いてみたんですけど、昌晃さんは来なくても大丈夫だそうです。将浩さんはお願いしますとのことでした。昌晃さんは私とデートしましょうよ」

「デートなんてしないよ。来なくていいって言われるならいかないけどさ、応援はしてるって伝えてね」

「ええ、デートしましょうよ。家の近くを一緒に歩くだけでもいいですから。それが嫌だったわ私の部屋でもいいですよ。ね、いいですよね?」

「そういうのは良いから。普通にしてたら遊んであげるからさ、デートか言われたら身構えてしまうよ」

「じゃあ、デートじゃなくて普通に動物園に行きましょうよ。久しぶりにレッサーパンダを見たいんです」

「デートじゃないならいいよ。あんまり遅い時間までは無理だけどね」

 俺は昌晃君の価値基準がよくわからなくなってしまったが、二人で動物園に行くのがデートじゃないんだとしたら何がデートなんだろうと思ってしまった。

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