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天才たちとお嬢様  作者: 釧路太郎
集団暴行事件編

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神谷家の力 後編

 倒れている男たちの体が積まれている教室は明らかにこの世のモノとは思えないのだが、襲い掛かってくる男たちの勢いも完全に落ちていっていた。最初とは異なり完全に意気消沈しているのがわかるのだが、男たちの後ろで偉そうにしている天樹透は男達をどんどん送り込んでくるのだが、フランソワーズさんと劉鵬が明らかに人間ではない強さを発揮していて誰もまともに近づこうとはしていなかった。

 それを上手く利用してジェニファーさんとエイリアスさんが横から男たちを攻撃して昌晃君と愛華さんがとどめを刺す。そんな流れも出来つつあった。

 何人いたのかわからないが、最初に襲ってきた男はおそらく死んだふりでもしているのだろう。教室内に積まれている男たちと目が合っても彼らはそのままそっと目を閉じて死んだふりをしているのであった。

「いくつか気になることがあるんだけどさ、なんで授業が始まる時間になってるのにチャイムもならないし先生もやってこないんだろう」

「それはですね、今日の午後の授業は全て中止になったからです。今みたいに暴漢が大挙して校内に押し寄せているのに授業をするなんてありえないですよね。先生方にお願いして私達のクラス以外は全て帰宅していただいてるんですよ。ですから、誰に邪魔されることも無く思う存分暴れてもらって大丈夫なんです」

「それは分かったけどさ、あの刺青の人は仲間ってことで良いの?」

「ええ、彼は劉鵬と言いましてフランソワーズと同じ先生に格闘技を習っているんです。近い将来プロの格闘家になるために練習しているそうなのですが、この機会に実戦経験を積みたいという事で参加していただきました。将浩さんがあった劉輝とよく似てると思いますが、劉鵬は劉輝よりも強くて人間性も素晴らしい男性ですよ。私もお兄様も応援してるんです」

「それとなんだけど、昌晃君と愛華さんもあんなに強いのってどうしてなの?」

「さあ、それは私にもわからないです。ただ、お二人とも劉鵬とフランソワーズの動きをコピーしているように見えるんですよね。ただ、その理由は私も分からないです」


 六人にやられた男たちの中には意識を取り戻すものも増えてきたのだが、そう言った人達は天樹透に気付かれないようにそっとこの場を去っていった。

 中には天樹透に気付かれて呼び止められている者もいたのだが、そいつが天樹透の言葉を無視して逃げ出したことをきっかけに六人と対峙していた者達も一斉に逃げ出してしまった。そいつらに紛れて天樹透も逃げ出そうとしていたのだが、フランソワーズさんと劉鵬に掴まれて逃げ出すことが出来ずにいたのだ。可哀想だと思ってしまったが、彼のやったことを思えば当然なのだろう。

 二人に掴まれて逃げ出すことが出来ないとあきらめた天樹透は怯えた子供のような目をして誰とも視線を合わせないようにうつむいていた。

「今なら無かったことにしてやるから俺を開放しろ」

 こんな状況でも偉そうにしているのはさすがだと思ったのだが、そんな事を聞くものはこの場にはいなかった。

「良いのか。俺の親父は天樹グループの総帥で、俺の叔父は国会議員だぞ。兄は市議会議員で姉は新聞社で記者をやってるんだ。俺に何かあったらお前らの家族が酷い目に遭うんだぞ。それがわかってないって言うんだったらまだ許してやる。だから、俺を開放しろ」

「それがどうかしたって言うんですか。そういう風に脅迫すれば助かるって本気で思ってるんですか?」

「どういう意味だ。お前の親だってタダじゃすまないんだぞ。神谷家って言ったって天樹グループの力があれば怖くなんてないんだぞ」

「そうですね。神谷家の力と言ってもたかが知れていますよ。天下に轟く天樹グループに比べたらいくつかの法人を経営しているだけの存在かもしれませんね。ですが、私達とあなた間で起こった問題にあなたの家族が力を貸してくれるというのでしょうかね?」

「どういう意味だ。俺に力を貸さないわけがないだろ。俺は跡取り息子なんだぞ。兄貴たちとは違って愛人の子供じゃないんだ。俺が困っているのに父さんが手を貸してくれないわけがないんだ」

「それはどうでしょうかね。あなたは簡単に見捨てられちゃうかもしれないですよ。今まではあなたがやってきた事を上手く揉み消してきたのかもしれませんが、今回ばかりはそうもいきませんからね。ね、劉鵬」

「そうですね。今までやってきた事の証拠も溜まってきた事だし、お前の叔父さんとお兄ちゃんがもみ消した事件の時効もまだ猶予があるしいったん起訴してもらうって手もあるかもしれませんな。例え不起訴になったとしても、たくさん証拠があるんですし、それを世間様に公開するって手も取れるんですよ。二人が政治家を辞めるだけで済めばいいんですけど、お前のお父さんも何らかの責任を取らされるかもしれないよね。お前が好き勝手やってきて泣いてる子のためにも、公表しちゃった方がいいような気もするんだけど、どうしようかな」

「お前は何を言ってるんだ。俺は何も知らん。何もしてない。証拠ってなんだ。俺は何も悪いことなんてしてないし揉み消してもらってもいない。何を言ってるのかさっぱりわからん」

「そうか。何もわからないのか。それじゃ、仕方ないな。これもきっと別人だと思うってことで良いよな」

 劉鵬は天樹透の座っている椅子の前に机を持ってくると、その上にタブレットパソコンを置いて動画を再生し始めた。


 画面に映しだされたのはこの前フランソワーズさんと一緒に行ったあの倉庫だった。画面に映っている二人の吐く息が若干白くなっているので半年以上前のモノだと思う。髪型が違うのでわからなかったのだが、声と場所から察するに天樹透と話しているのは劉輝だと思われる。

「お前は俺らにその辺を歩いている女を拉致しろって言うのか?」

「そうだよ。金ならちゃんと払うからよ。ただ、誰でもいいってわけじゃないからな。可愛い女にしろよ。俺は面食いだからブスには金を払わんぞ」

「その基準は何なんだよ。で、拉致してどうすんだよ。身代金でも要求するっていうのか?」

「お前はバカか。そんなもんに頼るほど俺は金に困ってねえよ。決まってるだろ、捕まえた女とやるんだよ。嫌がる女を無理やりやるのって最高だろ。俺がやった後はお前にも回してやるから安心しろ」

「ふざけんな。俺らはいくら金を積まれたってそんな事に手はかさねえよ。他を当たってくれ」

「そう言うなって、お前らは金に困ってるんだろ。つまらんプライドのために我慢しないで俺の言うことを聞いて女を攫って来いよ。そうすればしばらくは困らないくらいの金を払うからよ。な、悪い話じゃないだろ。金も貰えて女ともやれるんだぜ。な、自分に素直になれよ」

「無理だ。そういうのは本当に無理だ。レイプ目的で女を攫うなんて俺達には出来ない。諦めてくれ」

「そうか、そこまで言うなら仕方ない。よし、女を攫うのは諦めよう。ただ、俺はそれ以外にもムカつくやつが何人かいるんだ。俺の同級生で俺の事をバカにするやつが何人もいるんだ。そいつらをボコボコにしてくれ」

「そいつらって、どこのどいつだよ?」

「高校生だったら誰でもいいぜ。どうせ皆陰で俺の事を悪く言ってるんだ。目についたやつを片っ端からやってくれ。ただし、お前らが捕まらないように期間はこっちで決めさせてもらうぞ」

「わかった。それならいいだろ。何か飲み物でも持ってこよう。詳しい話はそれからでもいいだろう」

 飲み物を持ってくると言って劉輝が画面から消えると、ギリギリマイクで拾えるくらいの音量で天樹透は隣にいる男に話しかけていた。

「いいか、あいつが男をボコっている間にお前らで適当に女を攫って来いよ。少しくらいブスでもやれれば構わんからな。お前らも俺の後にやらせてやるからな。あいつも素直になって嫌がる女を犯せばいいのにな。あんなに興奮することなんてないのに、あいつはバカだな」

「でも、女が警察にチクったらどうするんですか?」

「そんなのは市議会議員をやってる兄貴や国会議員の叔父さんに頼めば何とかなるだろ。二人とも若い女が好きだからな、お前らがやった後だって絶対に言うなよ。二人ともキレたら面倒だからな」


「この映像って見覚えあるかな。たぶん、あなたの記憶にないものよね」

「何がしたいのかわからないが、こんな作り物を見せてどうするつもりなんだ?」

「別に意味なんて無いわよ。でも、あなたが映ってるみたいでしょ」

 俺は少し離れた後ろから見ていたのだが、どう見ても劉輝と天樹透にしか見えなかった。だが、綾乃はこの映像を偽物だと言っている。どう見ても天樹透と劉輝にしか見えないのだが、偽物の映像を見せてどうしたいというのだろうか。

「重要なのはこの映像じゃないのよ。これはただのきっかけにしか過ぎないの。映像の中で話している国会議員の叔父さんと市議会議員の兄貴ってのが重要なのよ。この映像を見た人の大半はこの男が何か悪いことをやって政治家に揉み消してもらったんだって思うじゃない、そうなると、普通の人はその政治家が誰なのか気になるし、何を揉み消したのか気になると思うのよ。私達は何もしなくても世間の人が勝手に調べてくれると思うのよ。それでね、そのタイミングで被害者の女の子たちに声をあげてもらうの。あなた達は女の子たちと示談を交わしたと思うけど、女の子の中にはまだ成人していない子がたくさんいるんだし、そんな子を相手に無理やりなんて事が世間に知れたらどうなるんだろうね。あなたのお父さんはこの件に関わっていないと思うけど、二人の息子と弟が関わってるのを知ったらどうなるんだろうね。私もお父様も最悪な事態は避けてもらいたいって願っているのよ。だから、あなたがこうして私達のクラスにやってきて酷いことをしても見逃してあげているのよね。私もお父様もあなた達には健康で長生きしてもらいたいと願っているのよ。でも、私達以外の世間の人はどう思うんだろうね。あなたのお父様は関係無いとは思うんだけど、世間の人達も関係ないんだって思うのかしらね。綺麗に揉み消すことが出来ればいいんだけど、揉み消したところでさっきみたいな映像は簡単に作れちゃうと思うんだよね。でも安心してね、あなただってわからないように映像も音声も加工しておくから。劉輝にはもう少し協力してもらう事になると思うけどね。そうそう、あなたと劉輝が直接会ってる時の写真は加工せずにそのままの状態で保存してあるからね」

 天樹透は綾乃と目を合わすことが出来ず、そのままスマホを取り出してどこかへ連絡をしていた。

 連絡が終わってスマホをしまっている天樹透と肩を組んだ劉鵬は慰めるように優しく話しかけていた。

「あんまり悪いことばっかりしてるとロクな目に遭わないよ。これからは心を入れ替えて真面目に生きていこうな。でも、心を入れ替えたところで被害者が救われるわけではないという事を忘れないようにな」


 後日、夕食時に天樹透と見慣れない男性がいることを不思議に思っていると、妹の璃々が興奮気味に俺に話しかけてきた。

「ねえ、あそこにいるのって天樹グループの総帥の天樹壮一だよ。最近見た雑誌に載ってたもん。なんでここに居るんだろうね?」

「さあ、なんでだろうね」

 心なしか天樹透も天樹壮一も落ち着きがない様子なのだが、その二人に淳二さんは優しく話しかけていた。初めのうちこそ緊張していた二人ではあったが、父さんの作った料理を食べ進めていくうちに緊張も解けてきたようで、デザートを食べる段階では完全にリラックスをしているように見えた。

「さあ、みんなに嬉しい知らせがあるんだ。みんなもご存じだとは思うが、こちらにいらっしゃるのはあの天樹グループの総帥である天樹壮一さんだ。私達は来年度から色々な業種で提携することになったのだが、それは伸一と綾乃、それと将浩君が天樹透君と仲良くなってくれたからなのだ。同じ学校で学ぶもの同士いい関係を気付いてくれて私はとても嬉しく思っているよ」

 俺は全く寝耳に水の状況であったが、綾乃も伸一さんもこの事は知っていたようだ。俺と同じく璃々も知らなかったようなのだが、なぜか俺の事を自慢げに見ていたのだ。

「将浩君には内緒にしてたんだが、驚いたかな?」

「はい、凄く驚きました。でも、どうして急にそんな話になったんですか?」

「どうしてって言われてもね。綾乃から全部聞いているからとしか答えようがないな。フランソワーズも宇佐美も言ってたけど、君が人知れず頑張っていた結果だね。つまり、そういう事だよ」

 淳二さんはいつにも増して上機嫌なようで、俺の背中を二回ポンポンと叩くと嬉しそうに戻っていった。

「お兄ちゃんって凄いね。淳二さんがお兄ちゃんの事を褒めてるんだもん。私の自慢のお兄ちゃんだね。そうだ、後で淳二さんと天樹壮一さんの似顔絵を描いてよ。その絵を二人にプレゼントしようよ。きっと二人とも喜んでくれるよ」


 あの時描いた似顔絵が何の役に立ったのだろうと思って聞いてみると、あの倉庫にいた人物の中で天樹透に一番に似ている人物を探すことに使ったとのことだ。あの場にいた時にはそこまで似ているとは思えなかったのだが、角度とメイクによってあそこまで似せることも出来るのだという事が恐ろしくもあり感心させられる出来事であった。

 あの映像が世に出回ることは無いと思う。だが、世の中に出回ることが無くても大きな影響を及ぼすことがあるという事を知ったし、無意識とはいえソレに深く関わってしまう事もあるんだという事が学べたのであった。

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