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天才たちとお嬢様  作者: 釧路太郎
集団暴行事件編

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元魔王の感謝

 誰よりも早く登校している飛鳥君が来ていないのは珍しいなと思っていたのだが、始業のベルが鳴っても相内先生がやってこないというのは何かあったのだろうと思わずにはいられなかった。時間が経つにつれてだんだんと教室内のざわめきも大きくなっていたのだが、職員室に相内先生を呼びに行こうと提案するものは誰もいなかった。

 本当にこのまま黙って待っていていいのかと思い始めていたころ、ゆっくりと教室の扉が開いて相内先生が入ってきた。相内先生と一緒に入ってきた白髪でサングラスをかけた生徒を見て先ほど以上に教室内がざわついてしまったのだが、相内先生がもっていたファイルを教卓に叩きつけるように置くと、その音に驚いた生徒達は皆一瞬で静まり返った。僕もその音に驚いて固まっていたのだが、隣を見ると綾乃はいつものようにニコニコとほほ笑んでいたのだ。

「みんながそんなにざわざわしてたら丸山君が皆に言いたいことを言えないでしょ。ほら、丸山君も遠慮してないで言いたいことを言っちゃいなさい」

 相内先生のすぐ隣にいた白髪でサングラスをかけた生徒は飛鳥君だったのだ。言われてみると飛鳥君だとわかるのだが、その髪の色とサングラスのインパクトは大きくて飛鳥君だとは一目見ても気付かなかったのだ。

 他のみんなも飛鳥君だったとは気付いていなかったようで、ざわつきは一向に収まる気配はなかったのだ。それでも、飛鳥君が相内先生の横に立って深く頭を下げて礼をすると教室内は一瞬で静まり返った。

「みんなのお陰で吾輩の家に起こっていた問題は解決しました。みんなにはいくらお礼を言っても言い足りないとは思うけど、本当にありがとうな」

 頭をあげた飛鳥君の顔はとても嬉しそうな笑顔で、飛鳥君はこんな風に笑うんだという事を俺は初めて知った。すぐに笑顔は消えて真面目な顔になったのだが、普段とは違うその表情も俺は初めて見るのであった。

「みんな色々助けてくれてありがとう。特に神谷にはいくら感謝しても足りないな。お前のお陰で吾輩の家は助かったといっても過言ではない。どうしようもないと思っていた時に聞いた報せは本当なのかと疑ってしまったのだが、どうやら嘘じゃないと気付いた時には妹たちと一緒に踊ってしまったくらい嬉しかったよ。それに、他のみんなも吾輩たちの事を心配してくれてありがとう。正樹は野菜が嫌いだって言うのに最後まで手伝ってくれていたし、沙緒莉も将浩も毎回手伝ってくれてありがとうな。他のみんなも吾輩の事を気にかけてくれて嬉しかったよ。正直に言って、吾輩はこのクラスに馴染めていないと思っていたのでみんなが心配してくれたというのは意外だった。相内先生に近い将来学校を辞めるかもしれないと随分前に相談したこともあったのだが、クラスのみんながきっと吾輩の力になってくれると言ってくれたのだ。その言葉を聞いた時はこの先生は何を適当なことを言っているのだろうと思ったりもしたのだが、今はその先生の言葉がどういう意図を持っていった事なのか理解出来ている。これからも別の意味で皆に迷惑をかけることがあるかもしれないが、その時はまた力になってくれると嬉しいぞ。だが、皆に良くしてもらってるばかりでは魔王としての名も廃るというもので、皆が何か困ったことがあれば吾輩を頼ってほしい。どんなことでも吾輩が出来ることなら進んで手を貸すぞ。吾輩は大金を動かすことは出来ないが、前世の時に得た知識と経験が皆の役に立つこともあろう。何も困ったことが無いというのであればそれに越したことは無いのだが、その場合は吾輩が前世の力を取り戻して世界を支配した際に国の一つでもプレゼントしようと思う。最後にもう一度言わせてくれ。皆、吾輩を助けてくれて本当にありがとう。この恩は決して忘れはしないぞ」

 ハッキリ言ってしまえば俺や正樹君や沙緒莉さんがやったことなんて大したことではない。雑草を抜いたりモノを移動させただけで誰でも出来るような事しかしてないのだ。俺たち三人以外にも何人かは手伝っていたりもしたのだけれど、俺が手伝いに行った時は正樹君と沙緒莉さんは必ずいたのだ。みさきさんや陽香さんと真弓さんは何度か姿を見た事はあったけれど、いつの間にか帰っていたこともあったりして最初から最後までいたことは無かったと思う。それでも、手伝いにくるという気持ちがあるのが素晴らしいと思えた。

 昌晃君と愛華さんは丸山農場で姿を見かけることは無かったが、学校にいる時は今まで以上に飛鳥君と一緒にいる姿を目撃していた。席も今まで少し離れて座っていたのだが、気付いた時には飛鳥君を挟むような形に席をとっていたし、お昼のお弁当を食べる時もメインのおかずを二人が飛鳥君にあげていたりもしたようだ。俺達のように普段から関わりのなかった人が出来ることと昌晃君や愛華さんのように普段から飛鳥君と関りがあった人では出来ることも違うのだと実感させられる出来事であった。

 フランソワーズさんとジェニファーさんとエイリアスさんは執事の宇佐美さんと一緒に色々な情報を調べていたようなのだが、彼女たちがいなければ綾乃だって淳二さんを動かすことが出来なかったと思う。神谷家の力の大きさに隠れがちではあるが、彼女たちがいなければ丸山農場は何の抵抗も出来ずに廃業の時を迎えていたのかもしれない。

 綾乃は今回の件で一番の功労者で間違いないだろう。俺も淳二さんに力を貸してもらえればと思っていたがそんな事は恐れ多いと思ってしまい、せめて知恵だけでも貸してもらおうと思っていたのだが、綾乃は俺とは違って自分の父親にちゃんと頼っていたのだ。それはお嬢様特有のワガママみたいなものではなく、今の時点で丸山家を助けることによって最終的に神谷家が投資以上の利益を得るという事を見込んだ提案をしていたのである。たぶん、綾乃だけの考えではなく伸一さんや他のみんなも協力してのことだとは思うのだが、多くの事を調べて神谷家の利益になるとの答えを導き出せたのは綾乃だからこそだと思う。

「そうだ、吾輩のこと出来になっていると思うのでこの場を借りて皆に報告させていただくが、今朝起きたところ吾輩の頭髪はなぜか色が抜けて白くなっていたのだ。皆も知っての通り吾輩は黒い髪を一度も染めたことが無いし、吾輩が寝ている間に誰かがいたずらをしたという事でもない。恐怖体験をした者は一晩のうちに頭髪が白くなるという話も聞いた事はあるのだが、吾輩に限ってはそんな恐怖体験とかはしてないのだが。いや、吾輩の家が無くなるかもしれないという話を聞いた時は若干恐怖を覚えたがな。だが、解決してから紙が白くなるというのも変な話であろう。調べてもらってないので原因は不明だが、髪を染めるのは校則で禁止されていることからもしばらくはこのままでいこうかと思う。その事について先生方に相談していたのだが、白髪染めは大丈夫という先生と白髪染めでも染めるのはどうかと渋る先生もいたのでこの頭のままでいることになるな。それと、このサングラスに関してなのだが、なぜか吾輩は今朝から異常に陽の光を眩しく感じるようになってしまったのだ。今までも太陽が眩しいと思ったことはあったのだが、今は太陽を直接見ていないのに太陽を直接見てしまった時のように眩しく感じてしまうのだ。授業どころか日常生活にも支障をきたすレベルで眩しさに耐えているので、原因がはっきりとわかるまではこのサングラスをかけているという事を理解して欲しい。それと、相内先生からも言われると思うのだが、この辺りで暴行事件が発生しているそうなので気を付けて欲しい。何か起こる前であれば吾輩も助けることが出来ると思うが、事件に巻き込まれないように気を抜かず危ない場所には近付かないでいて欲しい。吾輩にも出来ることと出来ないことがあると学んだし、このクラスで皆に心配をしてもらうような生徒は吾輩だけで終わらせてほしいと願っているぞ」

 相内先生からこの近辺で女子生徒を狙った暴行事件が発生しているという話を聞かされた。警察でもパトロールの回数を増やしていたり、怪しい人がいれば積極的に声掛けをおこなっているそうなのだが、犯人の特定には至っていないそうだ。

 俺達のクラスでこの事が話題にならなかったのは他のクラスと交流がほとんどなかったのでそんな噂話すら聞く機会が無かったという事もあるのだが、女子生徒は車で登下校しているという事もあったのかもしれない。そう考えると、乗っている車が襲われでもしない限り問題はなさそうなのだが、油断をせずに警戒を怠らないに越したことは無い。もしも、綾乃が襲われでもしたら俺はその事を悔やんで立ち直れなくなってしまうだろう。

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