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第55話 パワー

 部屋の前に着くと、俺は再度インターホンを押した。


 ガチャッ


 扉が開くとそこに立っていたのはこれまた煌びやかな長い髪を携えた女性だった。


「ありがとうございます!

 

 ちょうど今お母様がお買い物に出てるの!


 だから上がって上がって!」


 すごい勢いでそう言うと俺を引っ張っりながら部屋の中に入った。




「煌内さん、これプリント。


 じゃあ僕はこれで」


 ただでさえエレベーターに時間を食われた自覚があった俺は部屋を後にしようとした。


「ああ待って!


 あっ、私のこと、ラプンツェルって呼んで!


 なんて久しぶりなの、お友達がお部屋に訪れるなんて!


 もうっ、私ったら最高の気分!

 

 学校では今どんなことをやっているの?


 体育は?


 私、体を動かすの大好きなの!


 そうだわ、もしよかったら一緒に卓球でもどう?


 ちょうどラケットのお手入れをしていたところなの!」




 ラプンツェルさんの勢いに圧倒されていると、いつのまにかラケットを握らされていた。


「卓球なんてやったことないからできないよ」


「そうなのね!


 なんでも初めてのことってわくわくするわよね〜!


 ああ羨ましいわ、私も記憶を消してもう一度初めての卓球をしてみたいくらい!」


 そう言うと、ラプンツェルさんは俺に向かってボールを打ってきた。


 カコン


「上手じゃない!


 あなたなかなか筋があるんじゃない?


 あっ、あなたお名前なんていうの?」


「大上です」


「も〜。


 それはさっき聞いたわ!


 下のお名前よ!」


 なかなかこのテンションには慣れない。


「陸人、です」


「それじゃあ陸人くん、よろしくねー!」


 またラプンツェルさんがボールを打ってきた。




 どのくらい経っただろうか。


 ラプンツェルのマシンガントークに乗せられて速くなったラリーに必死で付いていきながら勝手に打ち解けた気になった俺は、気になっていたことを質問した。


「ラプンツェルってさ、なんで学校来てないの?


 親が厳しいって聞いたけど」


 ラプンツェルの手が止まった。


 カコン


 ボールが落ちた。


「私、ほら、運動以外何にもできないからお母様が外の世界は危ないって。


 それにお母様が帰ってきた時に私がいないと困るじゃない?」


「困るって?」


「エレベーター、待ったでしょう?」


 エレベーターとラプンツェルが家にいなければいけないこと、何が関係あるんだ?


「私のこの髪の毛を使ってお母様を引き上げて差し上げてるの」


 びっくりした、と同時に腑にも落ちてしまった。


 ラプンツェルのこのパワーは、お母さんを持ち上げ続けて磨き上げられたものなのか。


「でも勉強とか、しなきゃだろ?」


 ラプンツェルはタブレットを取り出してきてこう言う。


「今はもう、リモート授業が普及してるでしょう?


 それに私、学校へ行って授業を受けたとしても勉強できないもの」


「ラプンツェル〜!」


「いけない、お母様が帰ってきたわ!


 悪いけど陸人くん、お母様にバレないうちに帰ってもらえる?


 ごめんね!」


 さっきまでとは打って変わって小さな声で俺に謝る。


「お母様!


 今髪下ろすわね〜!」


 ラプンツェルのお母さんが帰ってくる前に早く帰ろう。


 俺はそそくさと靴を履いて部屋を出た。

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