嗚呼
制服のスカートが邪魔だ、なんて思いながら自転車に跨がり、漕ぎだす。明菜と合流し、学校へ向かう。
転校生が来る、というのは、やはり本当のことで、雨宮彰と言うらしい(雨宮のことに関しては外伝「五ヶ月の恋」に詳しく書いてある)。
このころ、親友三人に将来の夢を語った。お前がなれるか、なんて言われると思っていたのに、応援してくれて。嬉しかったのを覚えている。
そして、吹奏楽部にもトランペットパートとして同級生、大が入部した。上達が早く、一、二ヶ月すれば圭子をこせるのでは、と思うほど。というのも圭子はそれほど楽器が上手くなく(自分では上手いと思っている様子)、先生からも遠回しに下手、と言われているほどだ。音程がとれていない、音もう少し小さくして、と何回言われても直らない。もともと飲み込みが悪く、頭も良くないのでそれが祟ったのかもしれない。
自分はまぁまぁ楽しくやっていて、楽器の上手さもそれなりだと思う。サックスパートの尊敬している四人の先輩に囲まれ、練習の音を聴いているのが好きだった。
今年のコンクールでうちの学校は、地区大会を抜け、県大会に行くことができた。県大会ではその壁の高さを思い知らされた。銅賞。そんな気はしていたが、少し悔しいという思いがあった。両コンクールに諏訪部が来てくれていて、感謝しかない。野球応援に吹部で行ったときのお礼らしいが、嬉しいものだ。その頃から私は雨宮と付き合っていた。
そこから先輩が引退するまでの約二ヶ月はあっという間だった。学校祭と秋のコンサートでの演奏。SING SING SING という曲の演奏は、忘れられない思い出だ。先輩達が無理矢理作っていたソロ、カッコよくて、脳裏にこびりついている。
それから程なく、自分の楽器は変わった。サックスの中で低音パートのバリトンサックスだ。背が低い自分は吹くのに苦労した。ゼロからの出発に焦り、戸惑った。自傷が増えた。自分から雨宮を振って、また自傷が増えた。薬の大量服用も止められない。
自傷の傷をそれを見た人は心配してくれて、でも誰も本当の自分を知っていなくて、俺を好きになってくれる人なんていなくて。いや、でもそれは自分が本当の自分を出していないからで、でもそれは愛される為で...
嗚呼、自分は最初から独りだ。気付いてしまった。結局自分は愛されない。じくじくと痛み、赤くなっていく左腕。赤を吸い込むベッドを見て、自分は夢の世界に逃げ込んだ。
ふわふわ、空を飛ぶような感覚が自分を包んだ。そして、
「おはよう、もう朝だ。」誰かがそう言ったような気がした。
カーテンの隙間から漏れる日の光に目を眩ませ、それでも窓を開けガラスに映る私を見る。
「おはよう、私。」
もう、自分が愛されたいと願うことは、諦めた。




