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アンチノイズ ―それでも音は僕らをつなぐ―  作者: 夢見る冒険者


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第14話 交友関係の広がり

体育の授業もあるのだ、そこで自然に会話が生まれて、交流が広がってそのうち友人もできる。そんな都合の言い妄想を信じている時期もありました。


俺はふっと空を見つめながらそんな事を考える。視線を教室に戻すけれど、以前として俺に話しかけてくれる人なんていない。現在も引き続き、男性の友人はゼロのままだった。


小さくため息をつきながら、俺は隣の律花に視線を向ける。


「どうして、俺に友達ができないのかな?」

「さぁ? あなたのコミュニケーション能力に欠陥があるんじゃない?」


間髪入れずに返ってきた言葉に、思わず肩を落とし、引きつったような笑みを浮かべることしかできない。


「あの~……辛辣すぎやしませんかね、律花さん」

「そうかな? 適切な分析だと思うよ、湊」


どこまでも淡々とした口調だった。それに乾いた笑みを浮かべることしかできない。三年間も学校に通っていない弊害が出たか……なんて思っていると、不意に、後ろから声がかかる。


「それは少し違うかなっ」


顔を上げて振り向くと、一人の男子と目が合った。


(確か、名前は……)


「えっと、佐野君だっけ?」

「おお~、覚えててくれたんだ。そうそう、佐野 渉。さのっちでも、さのでも、わたるでも好きに呼んでよ」


やけにテンションが高いな、なんて思いつつも嫌な感じはしない。その人懐っこい笑みののおかげだろう、不思議と親近感が湧いてくる。


茶色の髪に、柔らかい雰囲気。いかにも"人たらし"という言葉が似合うタイプだと感じる。そんな彼に既に気を許し始めている自分がいる。


「ならっ、渉って呼ばせてもらうよ。それで、違うっていうのは?」


俺が問い返すと、渉は一瞬だけ目を丸くしてそれから苦笑するように、隣の律花へ視線を向けた。


「う~ん。そうだね、僕が会話に入るとさ、柊さん、黙るでしょ?」

「……」


彼の言葉通り、渉が会話に加わった瞬間律花は口を噤む。まるで関係ないというように、イヤホンをして音楽を聴き始める。……マジか、こいつ。と思わずにはいられない。それに渉は「ほらね」といって苦笑する。


「という感じで。普段、あんまり誰とも話さない彼女が、こうやって誰かと話してるのが珍しいからこそ、二人の会話に入りずらいって感じかな。……結構人気あるんだよ、彼女」


なるほど、と一瞬納得しかけて——別のことに驚く。


「……えっ、律花って人気あるの!?」


確かに容姿が優れているのは認める。でも、それ以上に、結構強い物言いで引かれるような気がするんだけど……。俺は少し引き気味に彼を見つめ、出来るだけ友好的な笑みを浮かべながら伝える。


「この学校って、Mが多いんだな……」


俺がわずかに距離を取ると、渉は一瞬きょとんとしたあと、慌てたように手を振った。


「違うよっ!! 彼女のルックスがいいから、それで気になってる人が多いって話で……! それに、僕にはちゃんと可愛い彼女が――」

「へぇ~、そうなんだ」


俺の興味なさげな反応に彼は苦笑いを浮かべる。


「……全然、興味なさそうだよね」

「いやいや、そんなことないよ。律花なんて目じゃないほど可愛い彼女がいるって話を聞いて、普通に興味わいた」

「……えっと、そこまでは言ってないよ」


そんなふうに二人で軽口を交わしていると、隣からギラッとした律花の視線を向けられる。その視線に気圧されたように渉がたじろいだ。……うん。分かるよ、俺も怖いって思ってしまうもん。マジで、ちびりそう。


その視線から逃れるように俺は話題を変える。


「俺が友人ができない理由が分かった。じゃあ渉、友達になってよ」

「急だね、キミも」


肩をすくめながら、反応は悪くない。このまま押せば何とかなるだろう。そう思いもう一歩踏み出す。


「え~、こうして話しかけてくれたのも一つの縁でしょ。ほらRAINの交換」

「はいはい。わかったよ」


渉はスマホを取り出し、RAINを起動する。どこか呆れたような口調なのに、その動きに迷いはなかった。


「オレにだったら、彼女のノロケ話いくらでもしていいぜ。ま、そういうの良く分からないんだけどね」

「へぇ~、じゃあ、胸焼けするくらいはなそうかな」

「うんうん。安心して話すがよい。吹聴するような友人もいないから、安心しろ」

「友人居ないくだりは誇らなくていいんじゃないか、たった今一人できたんだし」


その言葉に俺は目を丸くした。彼は既に俺を友人認定してくれているらしい。それが嬉しくて思わずテンションが上がる。


「たしかにそうだな。いえーい」

「はいはい。いえーい」


軽く打ち合わせた手のひらが、ぱしん、と乾いた音を立てた。たったそれだけのことなのに、どこかくすぐったくも、嬉しくて、思わず頬がゆるむ。


ようやく友人と呼べる人を作ることができた。これは幸先がいいような気がする。なんて浮かれていたのだが。渉が去った直後、ふと、律花の視線を感じた。


「あんた、そんなキャラだったんだね」


どこか引いたような目でそう告げる彼女は、先程よりも僅かに距離を取っていた。いや、俺にどんなキャラを当てはめてたんだよ、と内心で突っ込みつつも、胸の奥に小さな不安が芽生える。


もしかして、今のやり取りで律花から距離を取られることもあるのだろうか。少しずつ会話も減って……なんて展開が、一瞬頭をよぎる。さすがに考えすぎだとは思うのに、授業中もふとした拍子に気になって、つい彼女の方を見てしまった。


だが、その不安はそれは杞憂だったらしい。なんだかんだで、そのまま昼食には付き合ってくれている。それくらいには気を許してくれているらしい。


少し騒がしくて、でも居心地のいい空気。その中に身を置きながら、順調な学園生活。その兆しを感じていた。


だからこそ、油断していたのかもしれない。まさか、このタイミングで声をかけられるなんて、思ってもいなかった。


「凜とm1naseだよね?」


不意に背後から、落ち着いた女性の声がかかる。やけに迷いのない、確信を含んだ声色に、思わず背筋が強張った。


律花も同じだったのか、ぱちりと目を瞬かせ、ゆっくりと後ろを振り返る。その動きにつられるように、俺も恐る恐る視線を向けた。


まさか、二人で抜け出した時の会話が、聞かれてたか?それとも、さっきの素で話している部分も多いから、気づかれたとか?


そんな考えが一瞬で頭を駆け巡る。


のあがいると見つめた先、そこにいたのは、青みがかった髪に、どこかあどけなさを残した整った顔立ちが特徴の少女。同じクラスの月城 瑠璃さんだった。


これまで関わったことのない彼女に、少し戸惑いながら、俺は凛に視線を送る。


––話を合わせてくれ。


そんな意図を込めた目配せに、彼女は小さく頷いた。それを確認してから、俺はゆっくりと口を開く。


「えっと……凜とm1naseって、誰のことかな。月城さん?」

「……? 凜とm1naseは作曲仲間。もしかして、私のこと分からない?」


こてん、と小さく首を傾げる。抑揚の少ない声。感情を一切面に出さない無表情。そんな表情をする少女を俺たちは、よーーく知っていた。


「……もしかして、ルナ?」

「そう」


あっさりと肯定され、思わず口元が引き攣る。……マジかよ。あまりの状況に乾いた笑みを浮かべながら、ふと視線を上げて考える。


神様、ちょっと悪戯心が過ぎませんかねと、そんなことを思った。


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