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第21話 非生産的で退廃的な真夏の日常

 冷房の効いた教室でアイスをかじり、蜃気楼の舞う窓外の校庭を眺める。

 凍える思いをしながら、真夏の醍醐味をだらだらと享受する。

 「クーラーの中でアイス食べるのは、一周回って季節感があるよね」

 「真夏に毎年繰り返しているからね」

 だらけた教室と直射日光に焼かれる校庭を交互に見やり、カップアイスを食む百合谷に同意する。

 なんとなく教室後方の窓際に立って、いつもの4人でアイスを食べる昼休み。惰性で続くいつもの毎日。

 売店で買ったアイスが溶けはじめる。校庭の砂ぼこりは熱風に巻き上げられ、コンクリートで固められた駐車場から蜃気楼が生まれる。寒いとさえ感じる8月の教室には、カーディガンやブランケットを羽織る生徒の姿がちらほら見える。

 「アイスって、食べてるだけで幸せな気分になるな」

 綾乃も嬉しそうに、コーヒー味のアイスを頬張る。

 「唯のお葬式には、ブラックモンブランを棺桶に敷き詰めて、火葬してほしいな。それくらい、本当に大好き」

 隣で唯が頷く。棒アイスのチョコレートクッキーのコーティングをぼろぼろ床にこぼす唯は、はしゃいで跳ねる。セーラー服のスカートから、真っ白の太ももがちらりと見える。

 「死体燃え残るんじゃね」綾乃が眉を顰めて、首を傾げる。

 「問題ないもん」

 「お前じゃなくて、遺族と業者が迷惑すんだよ」

 「その時は綾乃がどうにかして。唯の骨は未来の旦那さんが泣きながら拾って、唯の肉は綾乃がさっと拾ってどこかに隠して」

 「こえーよ」

 綾乃と唯がふざける様を見ながら、ブラックモンブランを食べ進める。

 棒アイスはいつだって、冷たい、固い、甘い、懐かしい、ちょっと寂しい。

 「もうさ、プロポーズもブラックモンブランでいいもん」

 唯が共感できない持論を続ける。模試の点数でもよかったのか、彼女は鼻歌を歌っている。唯の食べるブラックモンブランのチョコレートクッキーのコーティングが、ぼろぼろこぼれる。

 「どういうこと?」

 アイスを食べ終えた私は、ティッシュで口元を拭いながら尋ねる。

 磨き上げられたフローリングの床に、アイスの食べこぼしと長い髪の毛が落ちている。

 甘いクッキーはおいしいけれど、床に落ちたそれらをかき集めることも出来ず、哀憫とともにそれらを見つめる。長い人生で一体どれだけのクッキーを落として、体裁を気にして拾えずに後悔するのだろう。床に落ちた小石のようなチョコレートの粒の残骸を見て、そんなつまらないことを考える。

 「『唯ちゃん、好きです。結婚しましょう』って指輪の代わりにブラックモンブランを業務用の箱で渡されたら、そのまま役所に婚姻届貰いに行く」

 唯が笑顔で、きっぱりと断言する。

 「じゃあ、今からお前の彼氏に伝える」綾乃が真顔で、スマホを操作するふりをする。

 「やめてよー。航大のことだから、指輪が本当にブラックモンブランになっちゃう」

 「やっぱり嫌なんじゃん」

 顔をしかめる唯を見て、綾乃が手を叩いて笑う。唯の彼氏と面識は無いけれど、話を聞く限り、本当に実行しそうな真面目で現実に生きる男子という印象。私も百合谷も、つられて笑う。

生産的な活動には義務と責任が伴う。

非生産的が一番楽しい。

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