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始まりはいつも急展開(前編) (千世の場合)

今回は少しグロテスク・暴力的な表現が含まれます

 暗木千世です……私の自宅は、お墓参り以外、滅多に人が来ない、長い石階段を登った山中の荒れ寺『中二寺』に、住職であるお爺さん、暗木現世との二人……穏やかな日々を過ごしています。


 そして夕日が沈み、空には星が見え始める頃。

夕食を作りお終えた私は、本堂で読経するお爺さんに声をかけ……使いふるされ薄暗くなった蛍光灯がぶら下がる和室で、丸いちゃぶ台を挟むように向かい合い……


「「いただきます」」

と今日も、別段話すことが無い食卓は、無言……時折、箸先が食器を叩く音がする。

そんな時間が流れます。


 ちなみに今日の夕食は。焼きザケと、味噌汁におひたし、それと白ご飯……と純和風です。


……無言……しばらく沈黙の後。


 不意に、茶碗と箸を置いたお爺さんが、何か決心をしたように、ため息をつくと私の顔を見て……ゆっくりと話し始めた。


「千世……中学生になったお前になら……伝えたい事がある……皿を洗ったら土蔵の前に来なさい……ご馳走さま……先に行って待っておる」


「はい、すぐに……ご馳走さま」

 部屋を出るお爺さんの背を見ながら……私は、その言葉と表情が気になり、のどがとおらず……食事もほどほどに、立ち上がると、おかずが残っている皿を盆に乗せ台所へ……。


 数分後……。

『開かずの間』と言うのでしょうか。

 お爺さんが勝手に『嘆きの間』と命名したその中を知らない私は、水を一杯。

呼吸を整え……本堂の裏に在る土蔵へと向かいました。


 その扉の前。ランタンを手にし待っているお爺さんに頭を下げる。

「お待たせしました」

とお爺さんも頷き返す。


「うむ……ここに入る前に一つ、約束してほしい……中で何を見ようと、何を聞こうと……一切驚かず、現実を受け入れろ……中学生になったんだから出来るな」


(食卓でも『中学生』ということを強調してる……それに『事実を受け入れろ』なんて)


 なにかしら恐怖を含んだ祖父の言葉に、私は息を飲み声が出ない。

「………」


「出来るな!」

受け入れるほかないまでの強い言葉に、私は目をつぶり息を整え

「はい!」

と、質問と同様の強い言葉ではっきりと答えた。


「良い返事だ……では」


 と……私が産まれてから今まで入ることを許されなかった、土蔵の錠前が外され……分厚く重い扉が音を立てて開く……。


……換気用の穴からの光以外何も見えない、暗い土蔵の中から……湿った風と共に押し寄せるなんとも言えぬ強烈な悪臭に、私は思わず袖で鼻と口を覆うと同時に心の中で

(夕食残して正解だった)と呟いた。


 すぐ冷静になった私は、分析を始める……この臭い、風通りの悪い空間独特のカビの……違う、これと似たのを台所で嗅いだ事が……ゴミ、何か腐って……野菜?……違う……肉だ……そう、腐った肉の臭い!


 確かにこのお寺は、身寄りのない人や、動物の亡骸を引き取っている……けど、ちゃんと供養しすぐ火葬してる……だからこんな所に肉の臭いなんておかしい!


 困惑している私の後ろで、お爺さんがランタンを天井から垂れるフックに取りつけ、土蔵の中全体を照らし出す。


 明るくなった事に(とかった)と安心したのも一瞬!

私は目の前の光景に、思考停止し言葉を失った。


 壁や、床一面に無数の血痕……それに目の前、片手を手錠でつながれ壁にもたれている『アレ』は人間の!


 あまりの異常な光景に(私の家の敷地にこんな……嘘、うそ)と否定しようとしても頭が心が付いて行かず……私は、頭を抱え後ずさり……。


 と、何かがかかとに当たり転がる音に、硬直し……怖いと分かっていても、無意識に視線がゆっくりと足元に……。


「!!」

 そこに有った『モノ』それは赤黒い人間の頭蓋骨だった! 

その存在はずのない目と目があった瞬間……恐怖が精神の許容範囲を越えたのか、脳がブレーカーの如く意識を切り、私はその場に倒れた。


……それからどれだけ時間が流れたのか…………


 布団の中で意識を取り戻した私は、上体を起こし周囲を見渡すと……どうやら自室のベッド。


『土蔵に倒れ、汚れた服のままではいけない』とお爺さんが、着かえさせてくれたのだろう、私の服装が、普段着から白い浴衣に替わっていた。


「ここは私の部屋……」

「やっと目覚めたか」

 つぶやく私の側で座っていた、おじいさんが安堵し胸をなでおろす。


 その反面……私は、さっき見た土蔵の光景を思い出し、焦る口調で質問を投げかける。

「おじいさん……あの! あの土蔵は?」

「千世、なにを取り乱しているんだ?」


「だって辺り一面に血の跡が、それにあれは人間の頭蓋骨……そこはまるで!」

「『殺人現場のようだ』とでも言いたいのだろ? しかし、お前にとってあの土蔵は、むしろ懐かしくも落ち着ける空間のはずだ」

「何を言って?」


 ごく自然な口調で答えるお爺さん……言葉が理解できず、眉をひそめ困惑する私の目を見ながら、お爺さんは言葉を続ける。


「千世……なにせお前は、あの土蔵で産まれたのだからな」

「えっ?」


 その強烈な一言に、理解の限界を越えた私は、ハトが豆鉄砲をくらったように、目を丸く見開いて硬直したまま、お爺さんを見る。

(あんな地獄みたいな所で……私が)


「驚いたか? しかし事実だ……驚きついでにもう一つ教えよう……お前を産むのと入れ替わるように母親が死んで、そのショックと生まれたてのお前への怒りにさくらんして自殺した、わしの息子でもあるお前の父親……両親の事だが、あれは嘘だ……すまない……そして、父親はまだ生きている」


「え。お父さんが生きてる……どこに居るんですか?」

 あんな土蔵忘れたいと、助け船にすがろうとする私に、お爺さんは冗談を返す。


「ここにいる……なにを隠そう、このわしこそがお前の父親だ」


「おじいさん?」



『急に何を言い出す?』『もう訳が分からない』そう困惑と驚きが混ざり合った表情をし無言、じっとお爺さんを見て固まっている。


「驚きで声も出ないか……無理も無い、よかろう今まで隠してきた、お前の出生の秘密を教えよう……その後、二つ目の本題にはいるとしよう」



 私が落ち着きを取り戻したのを確認して、お爺さんは再び口を開き

時は過去へと舞い戻る…………。

本日も読んでいただき、感謝する。

『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』

第五部『始まりはいつも急展開 (千世の場合)』

どうだった? 気に入っていたたけたなら是非

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非常にうれしく、日々の鍛錬における励みとなるゆえ。

よろしくお願いします。


by.暗木現世(千世の家族)

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