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初等部編40


 リカルド様はノアに笑われて拗ねてしまった。何故かそんなリカルド様の頭をジンスが撫でている。

 いやいやいや。ジンスさん、相手は子どもと言えど王族だからね。リカルド様だって子ども扱いされたら嫌が……らないのね。何だか嬉しそうなんだけど。

 ジンスの妹ポジションは私なのに……。

 変な対抗心を心の中で燃やしてしまう。


 ジンスはリカルド様に

「さっきパンケーキ食べたけど、まだ甘いもの食えるか?」

と優しく話しかけ、リカルド様はハニカミながら頷いている。

 うぅ……。何さ、イチャイチャしちゃって。ジンスったら、誰にでも優しくしちゃうんだもんなー。


 何となくジェラシーを感じているとジンスがこっちを見て私たちもまだ食べられるか確認をしてきた。

 すると、イザベラが一番嬉しそうにしている。

「勿論ですわ!次はどのような甘味なのかしら。うふふ……楽しみ」

 その一言にバッと音がつきそうなくらい一斉に皆がイザベラを見た。例外として普段のイザベラをよく知らない年下組は不思議そうに、兄のプリオスは平然としているが。

 だが、誰一人として言葉を発してはいない。


「なんですの。皆さん揃って。私が何かしまして?」

 イザベラに至っては少し怯えてしまっている。


「いやー……、その……なんというか…………」

 珍しくレオが言い淀み、気まずそうにしている。何とかしてくれ!と言わんばかりにプリオスに視線を投げ掛けるもプリオスはその視線に気が付かないふりをしている。


 うぅ……、仕方がない。ここは私が貧乏くじを引くか。泣く泣く理由を言おうとした時、レオは諦めたように白状をした。


「いつもみたいな笑い方じゃなくて、何というか……柔らかな笑い方だったから驚いて思わず見てしまったんだ。不躾に見て申し訳なかった」

「いえ。あの、私っていつもそんなにきつい笑い方をしていますか?」

 恐る恐る聞くイザベラにレオは今度こそ言葉を無くしてしまった。「いやー」だの「そのー」だの否定できずにいることでイザベラの言葉を肯定してしまっている。


「困らせてしまい、申し訳ありません」

 一生懸命言葉を探しているレオに対して、イザベラは本当に申し訳なさそうに眉を下げて謝った。


「いや、謝らないで欲しい。いつもはどこか近付きにくい雰囲気なのに急に可愛らしかったから、その…………ごめん。何て言ったら良いのかわからないや」

 レオの言葉は途中からイザベラの耳には届いていないようだった。「可愛らしい」という言葉にイザベラは頬を染め、うっとりとしている。当のレオは何故イザベラがうっとりしているのか全く理解できていないようで不思議そうに首をかしげている。普段、息をするかのように甘い言葉をいえるレオにとって「可愛らしい」という言葉一つでこんなにも喜ばれるなんて思いもしないのだ。



「ほら、これでも食べて落ち着け」

 ジンスはイザベラの前に一番にデザートを置いた。きれいな緑色をしたロールケーキである。これはもしかして……と期待した表情で見れば、ゆっくりと首を振られた。

「さっき飲んだ緑茶を粉末にして混ぜた緑茶ケーキ。普段のロールケーキよりも甘さが控えめになっているから、フランも食べやすいんじゃないかな」

 抹茶じゃないんだ……。皆が繁々と緑茶のロールケーキを眺めているなか、私はこっそり落ち込んだ。


「紅茶と緑茶は作り方が違うだけで同じ樹からできてるんだ。紅茶クッキーとかケーキがあるだろ。だから、それと同じ感じで作った。味はいけると思うけど、見た目は緑色だし受け入れられるかどうか」

「色も綺麗だし、大丈夫だと思うわよ」

 デザートが来たことですっかりもとの調子を取り戻したイザベラは答えながらも緑茶の作り方をジンスに聞いている。しかし、「企業秘密」の一点張りで教えてもらえず残念そうにしていた。


「「「「「ごちそうさまでした」」」」」

 パンケーキにご飯、サーモンの塩焼き、緑茶ケーキを美味しく食べてすっかり満足した私達は皆笑顔で食事を終えた。

 まぁ、お米が受け入れられて、他の商品も販売へと向けて動き出すことになったジンスが一番ご機嫌なんだけどね。


 ジンスはまだまだお父様とパトリシア様と詰める話があるからと二人の元へと戻っていった。そこに新しく、レオ、ピスケス兄妹、フランチェスコも加わって話を煮詰めている。

 カトリーナは行かなくて良いのか聞けば、パトリシア様がいるから大丈夫だそうだ。私としては皆が行ってしまうと寂しいので嬉しい限りだ。きっとカトリーナのことだから、私が寂しがらないように一緒にいてくれたのかもしれない。流石、心の友よ。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 積める話がある ⇒詰める話がある
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