表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/135

初等部編36


 皆の前にほかほかのご飯が並べられた。その他にごま塩、サーモンの塩焼きもある。飲み物は緑茶だ。そして、フランチェスコの前には当然のようにステーキが置いてあった。


 私は知らなかったのだが、鮭とサーモンは実は違う魚らしい。何でもサーモンはニジマス等と同じ淡水魚なんだって。

 これって常識なのかな?それともジンスの前世の知識がすごいのか……。うーん。わからん!


 炊きたてのご飯のにおいにさっきまでパンケーキを食べていたはずなのに『くぅ』と小さくお腹がなった。慌てて回りを見回したが誰も気づいていないようでホッと………………。


「ふふっ。ごめんね、アリア。あまりにも可愛いから笑っちゃったよ」


 顔にじわじわと熱が集まっていくのを感じる。


「……きっ……こえた?」

 聞こえてませんように、聞こえてませんように、聞こえてませんように!!

 心の中で何度も祈るが、あぁ無情かな……バッチリ聞こえていたらしく「ごめんね」と笑顔で返された。


「レオ、いつからそこにいたのよ」

 恨みがましく軽く睨めば、優しい目で私を見詰めながら微笑まれる。その姿は先程までとは違い私の知っているレオだ。


「シュタインボックス領について聞きたいことがあったんだけど、大人達は談笑してるからカトリーナ嬢に聞こうかと思って。そうしたらこんなに可愛いアリアを見られたんだもん。得しちゃったな」


 それ質問の答えになってないから!私はいつからいたのか聞いたんだけど!!と内心突っ込みながらも、レオの声がイザベラに聞こえていないか心配になる。そんな私の考えなんかお見通しのようで……

「アリア、あんまりよそ見しないで欲しいな。何を気にしているのかは知らないけど、たまにはちゃんと僕を見て。初めて会ったお茶会の時みたいに」

と切な気に言わせてしまった。


 あぁ、レオと向き合おうって決めたのにまたやってしまった。軽い自己嫌悪とイザベラへの後ろめたさ。皆よりも大人なはずなのに私は誰よりも臆病だ。分かってる、分かってはいる。いつまでもこのままじゃいけないことくらい。でも…………。


「私のことは気にしなくて良いのよ。私の想いとアリアの想いが例え同じ(かた)へ向いてもそれは仕方がないことよ。とても魅力的な方ですもの。

 私の方を向いて下さったら……と思うことは数え切れないほどあるけれど、それはあなたが気にすることではないわ。

 アリア、きちんと自分の気持ちに向き合って考えなさい。私を理由に逃げるなんて許さなくてよ」

 私の目を真っ直ぐと見詰めながらイザベラは微笑む。その目に嘘はない。気高くて、なんて美しいんだろう。


「私は…………」

 どうしたいのだろう。誰が好きなのかな。レオ?ジンス?それとも……。


「私が好きなのは…………カトリーナとイザベラだわ。レオのことも好きだけれど、カトリーナとイザベラが好きなの。

 正直、恋愛って分からないのよ。好いて貰えばもちろん嬉しい。仲良くしたいとも思うわ。でも、でも…………」

 何て言えば伝わるのだろう。傷付けてしまっているかもしれない。こんな答えじゃ納得してもらえないかもしれない。逃げているだけかもしれない。

 それでも、これが今出せる私の精一杯……。


「ごめん、急かしすぎたみたいだね」

「そうですわね、アリアはまだまだ子供ですものね」

 レオとイザベラは顔を見合わせて困ったように笑い合う。そして、イザベラは花が咲くかのように可憐に笑みを深めた。


「レオナルド様、私諦めませんわよ。アリア、私達はお友達だけれど正々堂々戦わせてもらうわ!覚悟なさい!!」

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ