初等部編 イザベラside1
「ごめんね、アリア。あまりにも可愛いから笑っちゃったよ」
レオナルド様のアリアに対する甘い言葉に視線に胸が締め付けられる。
お城でのお茶会の日から分かっていた。私の想いがレオナルド様に届くことはないということは。
知っていたのに……目にするのは辛くて、それでも現実から目を背けてはいけないと二人を見ては後悔をして。私の気持ちをどうすれば良いのかも分からず、ただただ滲み出てくる黒い感情にひっぱられないようにすることが今までは精一杯で。
アリアとカトリーナと仲良くなってもアリアへの嫉妬は止まることなく膨らむばかりだった。表面には出さずに内側に黒くて淀んだ気持ちを抱えていくのが自分でも分かっていた。
私だったらレオナルド様にあんなに寂しそうな顔はさせないのに。迷わずに彼の手をとって自分も愛していると伝えるのに。私なら…………。
アリアになりたかった。アリアのようにレオナルド様から愛されたかった。何でアリアなのかしら。どうして私じゃいけないの。
そんな暗い想いばかりが積み重なっていく。
「こんなに可愛いアリアを見られたんだもん。得しちゃったな」
レオナルド様の言葉に、醜い心に支配されそうになる。そんな私をカトリーナとお兄様が心配そうに見ていたことにも気が付いてた。それでも大丈夫だと笑いかける余裕すら無い自分が情けなかった。
「アリア、あんまりよそ見しないで欲しいな。何を気にしているのかは知らないけど、たまにはちゃんと僕を見て」
その言葉にハッとした。
違うの。こんなつもりじゃなかったの。あぁ……私を見てそんなに辛そうにしないで。私はあなたになりたかったけど、あなたを傷つけたいわけじゃないわ。
羨ましくて嫉妬までしてしまったけれど、それでも優しくて純粋なアリアのことが大好きなのよ。
そんなぐるぐる回る私の思考を止めてくれたのはカトリーナだった。誰にもバレないようにそっと手を繋がれる。
暖かい彼女の手が触れている場所から徐々に体の力が抜けて、やっと息が吸えた気がした。その手が私に力をくれた。勇気をくれた。
大丈夫。私は誇り高いピスケス公爵家の娘よ。大切なお友達を悲しませたりしないわ。私ならできる。この醜い心に打ち勝ってみせるわ。
そこからは自然と言葉が口から紡がれた。自分でも驚くほど穏やかな気持ちで。
「私のことは気にしなくて良いのよ。私の想いとアリアの想いが例え同じ方かたへ向いてもそれは仕方がないことよ。とても魅力的な方ですもの。
私の方を向いて下さったら……と思うことは数え切れないほどあるけれど、それはあなたが気にすることではないわ。
アリア、きちんと自分の気持ちに向き合って考えなさい。私を理由に逃げるなんて許さなくてよ」
私の言葉に皆が驚いたようにこちらを見た。お兄様だけはこうなることが分かっていたかのように微笑んでいる。
「私は…………」
アリアの言葉に覚悟を決めるが返ってきたのは何とも彼女らしい答えで……。
これだからアリアと本当に仲良くしたいと思ったのよ。最初は社交が不慣れそうだから手助けするだけのつもりだったのに、今ではこんなにも大切な人になったんだもの。
けれど、アリアがまだ誰も選ばないのなら私も頑張ってみることにするわ。それが例え今後恋のライバルになる可能性があったとしても……。
「レオナルド様、私諦めませんわよ。アリア、私達はお友達だけれど正々堂々戦わせてもらうわ!覚悟なさい!!」
今まではただ羨んでいただけだったけれど、これからは私も素直に想いを伝えるわ。だから、二人とも覚悟を決めておいてちょうだいね。
次回よりアリアsideに戻ります。
やっと皆でごはん食べます。




