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初等部編31


 翌朝、私達はどんよりとした気持ちで身支度をする。

 楽しみなお米と恐怖のカトリーナのお母さん。今日は濃い一日になりそうだ。


 皆で朝食をとりに食堂へと向かうととても美味しそうな匂いがする。

「とっても良い匂いね。さっきまで食欲なんて少しもわかなかったのになんだかお腹が空いてきちゃったわ」

 イザベラがお腹を押さえながら笑う。


 席に座れば何故かまたもやジンスがやって来た。

「帰らなかったの!?」

 私の言葉にジンスは困ったように眉を寄せた。

「帰してもらえなかったんだよ……」

 目の下にうっすらと隈ができ遠い目をしている。


 一体お父様と何があったんだろう。あっちに座ってるお父様は上機嫌だし……。


「ジンス、私の隣へ来なさい。昨日の話の続きをしよう」

 お父様に呼ばれジンスは「畏まりました、デニス様」と返事をして足早に向かっていった。


 私達が首を傾げていればお母様が

「あの人ったらすっかりジンス君のことを気に入っちゃってね。商品のことだけじゃなくてジンス君のことまで色々聞き始めてしまって……。

 気が付けば深夜だったから泊まってもらったのよ」

と教えてくれた。


 初等部に入ったばかりの子供相手に何してるんだか。

 ジンスには悪いけど夢中になったお父様は誰にも止められない。頑張れジンス。多分そのうち飽きると思うから……。

 心の中でジンスに合掌をする。御愁傷様……。



 私達の前に朝食が運ばれてきた。プレーンのパンケーキにスクランブルエッグ、サラダ、スープ、一口サイズの果実まである。いつものことながらお洒落な朝食だが、今日はパンケーキがついている。昨日のものとは違い薄いものではあるが、バターが上で溶け始めていてとても美味しそうだ。


「「「いただきます」」」

 口にパンケーキを入れると思わず笑顔になった。それは私だけではないようでカトリーナとイザベラも同じ表情をしている。


「こんなに美味しいものを作り出すなんて才能よね。国の重鎮であるスコルピウス公爵に短期間であんなに気に入られるのも頷けるわ。

 あぁいう人を()()()天才って言うんでしょうね」


 カトリーナの言葉に私とイザベラは顔を見合わせる。


「カトリーナ、あなただって天才じゃない。何を言ってるの?」

 イザベラの言葉にカトリーナは首を振る。


「私はただ人よりも少し勉強ができるだけよ。そこから何かを生み出す想像力が私にはないもの」


 想像力とは言ってもジンスは前世にあったものを作っているのだ。彼が考えたものではない。それに中身は大人なのだ。いくらカトリーナが天才だからって小学生が大人に勝つなんて難しいことの方が多い。


 何と言ったら良いのだろう……。

 かける言葉に迷っていれば、イザベラが先に口を開いた。


「アリアさんのお父様、お話し中に申し訳ありません。私、ジンスさんに聞きたいことがございますの。聞いても宜しいでしょうか?」


 お父様が不思議そうにしながらも了承をするとお礼を言ってからジンスへと質問を投げ掛けている。


「ジンスさんはご自身で料理をなさるのかしら?パンケーキもアイスクリームもフルーツティーも全て初めてたべるものだったけれど、とても素晴らしいものだったわ。

 どのようにして考えついたのか是非教えてくださらない?」


 その問いに少し悩んだ後、ジンスはゆっくりと話し出す。


「私の生まれたフォックス家は貴族とはいえ貧しかったので、食事は母が作っておりました。その手伝いとして包丁に触る機会も多かったので料理は簡単なものであれば自分で作れます。

 どのように考えついたのかは企業秘密ですので、申し訳ありませんがお答えできません」


 ここは学園ではないので流石のジンスもクラスメイトと云えど人前では爵位の高い人には敬語を使っている。

 皆はそれを当たり前のように受け止めているからやっぱり貴族として当然のことなのだろう。


「聞きました?カトリーナ。ジンスさんは料理をなさるのですって。

 あなたは料理をしたことがないのでしょう?それなのにジンスさんと張り合おうなんて可笑しな話ね。確かに彼も天才でしょうけれど、どんな天才だって経験のないことから発想するのは無理だと思うわ。だから、料理に関してはジンスさんの方ができて当たり前でしてよ!!」



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