初等部編4
講堂に入れば、時間がまだ早い為か人もまばらだ。カトリーナの姿を探したがまだのようで……代わりにあまり関わりたくない人物と目があってしまった。
「あら、アリアさんじゃありませんの」
そう言いながら上から下までじろじろと視線を感じる。
品定めされるのって嫌なんだけどな。自分がかなり失礼なことをしてるって自覚はないんだろうけど。
「ごきげんよう、イザベラ様。
イザベラ様の制服はとっっってもゴージャスですわね。周りのものが皆霞んで見えますわ」
かなり改造された制服を目の前にして無理矢理笑顔で対応をする。
アマ・デトワール学園の制服は男子生徒はブレザーにネクタイで初等部は半ズボンにえんじのネクタイ、中等部と高等部は長ズボンで中等部がモスグリーン、高等部がネイビーのネクタイへと変わる。因みにブレザーはグレーとネイビー、ブラックの3色でズボンに至ってはブレザーと同じ3色に加えてチェック柄もある。
女子生徒の制服は夏はグレー、冬はネイビーのワンピース型でスカート丈が初等部は膝下、中等部がふくらはぎ、高等部はくるぶしまでの長さへと変わるのみだ。
男子の制服の方が種類があってお洒落だと思う人もいるだろうが、女子の制服がシンプルな形になったのかには理由がある。
元々女子の制服もバリエーション豊かだったのだが、このデザインは似合わないから嫌だの、あの色を増やせだのと令嬢達からの意見が殺到したらしい。
最初はその要望にも答えていたが、出来た制服を見て、こうじゃない、ああじゃないと更なる文句が出て事態は徐々に収集がつかなくなった。そこで、苦肉の策としてシンプルで清楚な制服を好きに改造して!!としたところ苦情がなくなったため、夏と冬の制服が一種類なのである。
イザベラもきっとはりきって自分好みの制服にカスタマイズさせた結果がこれなのだろう。
スカートはまるでプリンセスラインのドレスのように広がり、裾からはレースが見えている。腰には真っ赤なリボンがつけてあり、袖はやっぱりドレスのように大きく広がっていてフリルがついていて、襟には宝石がいくつも縫い付けられている。
はっきり言って悪趣味だし、動きにくそうだ。それに、いくら膝下のスカート丈でも隣に立ったら絶対にスカートに足が埋まるくらいかさ張っている。
イザベラの手にかかれば、清楚で上品な制服も、学校に何しに来てるんだろう……と思わせるデザインへ大変身!!
まだ到着した人は決して多くはないが、周囲の人は驚いた目でイザベラを見ている。中にはイザベラのように張り切り過ぎた令嬢が我に返り、自分の制服を作り直したいと親に言っている声まで聞こえる。
それでも現状には少しも気づいた様子はなく「皆が私に釘付けですわー。おーほほほほほほほ」と高笑いしているのだから、始末に負えない。
イザベラまだ続きます。