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過労死社畜の異世界ホームセンター経営。女神に蹴り落とされた先で、ヤンデレ兎姫と落ちこぼれ竜人と最強のインフラ村を築き上げる  作者: 月神世一


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13/13

EP 13

熱膨張と物理的破壊。完璧な職場チームが導く逆転劇

 ギギギギギィィィィンッ……!!

 ポポロ村の広場の中央で、巨大な機械虫が不快な金属音を上げて身悶えしていた。

 超速乾性セメントと大量の水を混ぜ合わせた『即席の泥沼』は、化学反応による発熱を伴いながら、またたく間に石の拘束衣へと変化した。数トンもの自重を持つ古代兵器・死蟷螂機ネクロマンティスの六本の足は、完全にコンクリートの基礎に埋まり、身動き一つ取れなくなっていた。

「す、すげぇ……。あんなデカブツが、本当にただの泥と水で止まっちまった……!」

「これが、春太さんの……現代インフラの力……!」

 イグニスとキャルルが、呆然と固まるバケモノを見つめて息を呑む。

 だが、俺は店長用タブレットから目を離さず、冷徹に次の指示を飛ばした。

「見とれてる暇はないぞ。足が止まっただけで、あのクソデカい両腕のチェーンソー(鎌)はまだ生きてる。近づけばミンチにされるぞ」

 俺の言葉を裏付けるように、拘束されたネクロマンティスが激しく上半身を振り乱し、巨大な鎌をデタラメに振り回し始めた。

 ブォォォンッ!という風切り音と共に、周囲の空気が切り裂かれ、セメントの表面が削り取られていく。視界センサーが正常に機能している限り、迂闊に近づくことはできない。

「だが、どんな機械にも必ず『弱点』がある。排熱処理の甘い箇所か、外部センサーだ」

 俺は咥えタバコのまま、上空に待機している巨漢の竜人を見上げた。

「イグニス!」

「おうっ! 店長、指示をくれ!」

「お前のその『大火炎』、どれくらいの温度が出せる?」

「俺様の竜の息吹を舐めるなよ! 鉄だって一瞬でドロドロに溶かす、紅蓮の灼熱だぜ!」

「上等だ。……なら、あの鉄クズの『顔面カメラ』と『関節部』を狙って、お前の全力の炎を浴びせろ! 焼き尽くす必要はない、表面の温度を極限まで引き上げるだけでいい!」

「オウッ! 言葉の意味はよく分からねェが、こんがりバーベキューにしてやるぜ!」

 イグニスは大きく息を吸い込み、空中で胸を反らせた。

 彼の喉の奥で、膨大な魔力と闘気が凄まじい熱エネルギーへと変換されていくのが、地上にいる俺にまでビリビリと伝わってくる。

「喰らいやがれ不良品ッ!! 大火炎アルティメット・ブレスゥゥッ!!」

 ゴォォォォォォォォォォォォォッ!!!

 イグニスの口から放たれたのは、約1,500℃に達する圧倒的な指向性熱線だった。

 それは巨大な火柱となって、セメントに足を取られたネクロマンティスの上半身を完全に包み込んだ。

『――!? 外部温度、急上昇……危険域、突破――』

 ネクロマンティスが、悲鳴のような電子音を上げる。

 いくら古代の超硬度装甲とはいえ、表面温度が急激に上昇すれば、内部の精密機器は無事では済まない。

 パリンッ!と音を立てて、カメラの役割を果たしていた赤い複眼が熱で弾け飛んだ。さらには、関節部を潤滑していた黒いオイルが沸騰し、隙間からシューシューと黒煙を吹き出し始める。

「よし、センサーが焼けた! 奴は今、完全に『盲目』だ!」

 俺の読み通り、視覚を奪われたネクロマンティスは、パニックを起こしたように両腕の鎌を振り回している。完全にコントロールを失ったデタラメな動きだ。

「店長! こんがり焼き上がったぜ!」

「よくやった、イグニス! ……次はキャルル、お前の出番だ!」

 俺は、隣で息を潜めて待機していた月兎族の少女に視線を向けた。

「あのデカブツは今、超高温に熱せられて装甲が『熱膨張』を起こしている。……熱々に熱したガラスのコップを、急激に冷やしたり強い衝撃を与えたりするとどうなるか、分かるか?」

「……粉々に、砕け散ります!」

「その通りだ。あいつの分厚い装甲も、今なら物理的な衝撃で叩き割れる。……キャルル、一番分厚い胸部装甲の中心に、お前の最速の一撃を叩き込め!」

 俺の無茶なオーダーに対し、キャルルは一切の躊躇なく、とびきり嬉しそうな笑顔を向けた。

「はいっ! 春太さんのおホームを守るためなら、鉄の塊だろうと星だろうと、粉々に砕いてみせます!」

 キャルルが、クラウチングスタートの姿勢をとる。

 彼女の足元――タローマンのガテン系コーナーで特注した『安全靴』のつま先に、凄まじい密度の闘気が集中していくのが見えた。

 ドンッ!!

 音置き去りにするような踏み込み。

 月兎族の圧倒的な脚力が地面を抉り、キャルルの小さな身体が弾丸のように宙を舞った。

 周囲の瓦礫や、壁面を三角跳びの要領で蹴り渡り、盲目となって鎌を振り回すネクロマンティスの死角――上空20メートルの位置へと到達する。

「ポポロ村の村長を……なめるなァッ!!」

 上空で身体を空中で一回転させ、落下速度と体重、そして闘気による極限の加速を右足に集中させる。

 それは、約33,750ジュールという、小型車が時速80kmで衝突するのと同じ破壊力を持つ、月兎族の必殺の飛び蹴り。

流星脚メテオ・ストライクッ!!!」

 ズバァァァァァァァァァンッ!!!!!

 キャルルの安全靴が、赤熱したネクロマンティスの胸部装甲に直撃した。

 熱膨張で限界まで脆くなっていた古代の超硬度装甲に、凄まじい運動エネルギーが叩き込まれる。

 物理法則は、異世界の古代兵器に対しても絶対だった。

 ピキ……ピキピキピキッ!

 という亀裂音が響いたかと思うと。

 ガシャァァァァァァァァンッ!!!

 絶対に破れないと思われていた灰色の装甲が、まるで薄いガラスのように粉々に砕け散ったのだ。

 砕け散った装甲の奥から、脈打つようなグロテスクな機械の配線と、不気味に青白く発光する『動力コア』が剥き出しになる。

「やった……! 春太さん、装甲を破りました!」

 反動で空中に弾き飛ばされたキャルルを、上空のイグニスがしっかりと受け止める。

「上出来だ、二人とも。完璧なオペレーションだったぞ」

 俺はバインダーを小脇に抱え、ゆっくりと、装甲を砕かれて機能不全に陥っているネクロマンティスに向かって歩き出した。

『エラー……装甲破損……動力炉、露出……生命体ターゲットノ、排除ヲ、最優先――』

 装甲を失い、泥沼に足を取られた状態でも、殺人機械はまだ生きていた。

 剥き出しになった青白いコアが、異常な光を放ち始める。周囲の魔力を強制的に吸い上げ、最後の自爆攻撃、あるいは起死回生の極太レーザーでも放つ気なのだろう。

「て、店長! 危ねェ! 奴の心臓が爆発する気だ!」

「春太さんッ、下がって!!」

 空中の二人が悲痛な叫びを上げるが、俺の歩みは止まらない。

 恐怖はない。

 優秀な部下たちが、命を懸けて敵の『心臓マザーボード』を剥き出しにしてくれたのだ。

 ここで逃げるような奴は、上に立つ資格などない。

「……随分と物騒な不良品エラーを抱え込んじまったな」

 俺はタバコを地面に吐き捨て、タローマンの資材置き場からズルズルと引きずってきた『それ』を手に取った。

 太さ5センチはあろうかという、工業用の極太の電力ケーブル。

 その先端には、銅線が剥き出しにされたプラグ。

 そしてケーブルの反対側は――俺の店のバックヤードで、ゴォォォォン!とけたたましい重低音を響かせて稼働している、超大型の『業務用ディーゼル発電機』へと接続されている。

「クレーム対応の基本は、相手の理屈システムを完全にシャットアウトすることだ。……お前みたいなポンコツ機械には、これが一番効くだろ?」

 俺の目は、すでに完全にハイライトを失った『鬼店長』のそれだった。

 ネクロマンティスのコアが臨界点に達し、全てを消し飛ばす光を放とうとした、まさにその瞬間。

 俺は、剥き出しになったコアの配線の束に向かって、極太の電力ケーブルを直接突き刺した。

「――強制シャットダウンだ。二度と再起動(出勤)するな」

 俺は、手元の発電機の出力レバーを『最大(MAX)』へと一気に引き上げた。

 次話、過労死店長の容赦なき大容量ボルトが、古代兵器の電子頭脳を完全に焼き切る。

読んでいただきありがとうございます。

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