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第2部:第18話:黒と金の連動、そして仕掛けられた裏の網

ファンナステッド王国の最深部、厳重な結界が幾重にも張り巡らされた、冷たい石造りの結界が張られた作戦会議室。


いつもならファンナステッド王国の『影』たちだけが集まるこの秘密の部屋に、この日は、隣国スペーシング王国から極秘裏に派遣された精鋭の『影』たちも一堂に会していた。


目的はただ一つ――あの絶対の透過魔法陣によって魔力を封じられ、辺境へと逃げ延びた黒魔女レッド・ビアンカを、今度こそ完全に包囲して叩き潰すための、二国合同の防衛作戦会議である。


卓上には両国の最新の諜報報告書が山積みにされ、張り詰めた沈黙が部屋を支配する中、実戦部隊のトップである『金(ブラウン家次期ボス・オールゴルト)』は、金の髪を微かに揺らしながら、まずは隣国にいる最愛の妹シーリンの近況を静かに報告し始めた。


「――ここ数週間、スペーシング王国の王宮周辺では、黒魔女レッド・ビアンカの気配は完全に途絶えている。我がブラウン家の諜報部とスペーシングの影たちがどれだけ目を光らせても、魔術の残滓すら一切感知できない状況だ。……おそらく、あの夜にリンに術式を上書き解除され、魂を削って逃げ延びたダメージを癒やすため、奴は自らの拠点へ戻っているのだろう。……だが、あまりにも静かすぎて不気味だ。あの執念深い魔女が、プライドを粉々にされた屈辱をそのまま大人しく呑み下すとは到底思えない。裏で、何か別の悍ましい企みを練り直している予感がしてならないんだ」


金がプロの『影のボス』としての鋭い直感を口にすると、会議室の正面、スパイ活動の最高責任者としてデスクに両手をついていた『黒(ファンナステッド第二王子・ブラックスタード殿下)』が、不敵にニヤリと黒一色の瞳を怪しく光らせた。


「ああ。金、お前のその予感は、100%当たっているよ」


「……何が分かったのですか、黒?」


金の瞳が、一瞬にして冷徹な影の光へと引き締まる。黒は漆黒の髪をかき上げ、手元の最高機密の暗号報告書を男たちの前に提示した。


「我が国家隠密組織の網が、本日、ファンナステッドの王宮の周辺をうろつく不自然なカラスの群れを捉えた。普通の鳥ではない、魔女の魔力が通った使い魔だ。それと同時に、裏社会の闇ルートから極秘の情報を得た。……レッド・ビアンカは拠点に戻り次第、正面から魔術で挑んでもシーリンには勝てないと悟り、彼女の『最大の弱点』を執念で調べ上げたようだ」


「シーリンの、弱点……?」


金を名乗るお兄様が、怪訝そうに眉をひそめる。黒は冷酷な、ダクワールを叩き潰した時と同じ凄まじい切れ者の笑みをその端正な唇に浮かべた。


「ああ。あの魔女は、シーリンが自分の命よりもデールのことを大切に想っているという事実に辿り着いた。……つまり奴は、ファンナステッド王国でデールの『誘拐』を企んでいるようだ。デールを人質に取って奴の隠れ家に監禁し、それを餌にして、シーリンが自らデールという名の餌に釣られてやってくるのを待つ……。それが、魔女が新たに練り上げた、シーリンを確実に抹殺するための悪魔の計画だ」


「――ッ、なんだと……っ!?」


その言葉を聞いた瞬間、会議室にいた両国の影たちに凄まじい衝撃の戦慄が走った。

金もガタッと拳を握りしめ、その美しい顔を一瞬にしてどす黒い怒りの覇気で染め上げた。


「あの小汚い魔女め、正面からシーリンに勝てないからと、今度はシーリンが世界で一番大切にしているデール妃殿下を人質にする計画を立てたというのか……っ! どこまで姑息な真似を……っ!」


「落ち着け、金。魔女がその手口を選んだということは、すなわち、奴がそれほどまでにシーリンの規格外の魔術に恐怖しているという動かぬ証拠だ。そして……奴が動きを見せた今こそ、こちらにとってはすべての逃げ道を塞いで捕える、最大のチャンスでもある」


黒は冷徹にそう言い放つと、立体地図の上に新たな二国合同の迎撃陣形を展開させた。


「魔女の作戦は、デールが王宮の外へと出かけるお忍びの予定をカラスたちに探らせ、恐らく、一瞬の隙を突いて『催眠魔法』か何かを掛けて誘拐することだ。……ならば、そのデールの行動予定の偽情報をこちらから流し、魔女をこちらの指定したポイントへと誘導して捕える。デールに擬態させた我が国の特級の影をおとりとして配置し、魔女が催眠魔法を仕掛けようと近づいてきたその瞬間、ファンナステッドとスペーシングの両国の影、そして君たちブラウン家の諜報部ですべての退路を完全封鎖する。おい……ブルーコーラルへの連絡は?」


「問題ありません。スペーシング王国の影の代表からも、すでにブルーコーラル陛下への緊急暗号回線が通っています。……陛下は『私のシーリンを泣かせようとする奴は、塵一つ残さず抹殺する』と、凄まじい殺意を燃やしてあちら側の影をこちらへ貸し出してくれていますからね」


黒の部下からの報告を聞いた金は、冷酷なボスの笑みを深くして頷いた。


魔女ビアンカが、計画がバレていることなどつゆ知らず、シーリンを殺すための「完璧な誘拐計画」を立ててほくそ笑んでいた、まさにその裏側。


ファンナステッドとスペーシング、二つの大国の闇の最高権力者たち(ブラックスタード×オールゴルト×ブルーコーラル)は、その魔女の悪魔の計画すらも最初からすべて手のひらの上で完璧に見透かし、魔女をこの世から永遠に消滅させるための、さらに恐ろしい『国家規模の罠』を冷酷に、完璧に包囲し終えていたのだった――

次からは第3部になります。

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