プロローグ
――崩壊した街の中で少女は仰向けに倒れていた。
痛む全身に苦しみながら、声にならない声で泣く。
……助けて。痛い。パパ。ママ。
返事は無かった。代わりに、少女は気づかされた。
自分を庇うようにして地面に倒れる、ふたつの黒い影の跡。
きっとそれが両親なのだろう。返事が無いのも当然だった。
……心が冷たくなっていく。
失われた温もり。穏やかな笑顔。共に過ごした時間に楽しかった日々。
もう戻らない大好きな二人。その声も、姿も、二度と感じることは叶わない。
……死にたい。
生きているのが苦しくて、両親を失ったことが悲しくて、それならすぐにでも死んだほうがきっと楽になれるはず。
この世界にたったひとり、喜びも悲しみも自分だけ。
誰とも分かち合えないそんな未来、きっと耐えられないと思うから。
そうして、呼吸を止めた。
最期に、ゆっくりと目を閉じて。
自分も世界から消えようとして。
願った――はずだった。
まぶた越しに透ける、まぶしい光。
目を開けるとそこにいた、白いお姫さま。
その輝きを、美しさを――今でも覚えている。
『良かった……ありがとう……本当に良かった……』
頬に涙を伝わせ、少女を見つけることができたと、心の底から喜んでいる彼女の顔。
まるで救われたのは少女でなく、自分の方だと感謝しているかのような安堵の言葉。
その姿があまりにも幸せそうだったから。あまりにも嬉しそうだったから。
自分もそうなりたいと思うまでに、願いは、言葉となった。
「――魔法、少女……」




