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第9章血と契約
焚き火の灯りの中、セラは拾った羊皮紙を広げた。
そこには、十年前の日付と共に黒牙団の記録が残されていた。
――「作戦名《鎖牢》、対象:擬態型魔物《金眼の獣》。捕獲目的は不死性の解明および戦力化。」
報告は無残な筆致で途切れていた。最後の一文は血に染み、文字が滲んでいる。
――「全滅……隊長含む十三名死亡……あれは、人の皮を――」
カイは拳を握りしめた。
「つまり、あいつは昔からこの森にいて、黒牙団を殺してきた……」
セラは頷く。
「黒牙団は復讐と、力を奪うためにまた来たんだ。村を焼いたのも、”餌”をおびき寄せるため」
夜の闇の奥で、何かが木々を擦る音がした。
二人は同時に振り返る。
そこには、もう人の姿をしていない金色の瞳が、じっとこちらを見つめていた。