3.面談1日目
セバスが作った計画では、今日の予定は執事長、執事2名、徴税長、徴税官12名。
明日が馬丁兼庭師6名、料理長、料理人3名、メイド3名、従僕3名。
クビ9人、その家族16人出て行って、まだ残り20人ほど+子供がいるが、家族としてここにいるだけで、雇われている訳じゃない。面談結果によっては自動的に出ていくことになる人だから後回しとなっている。
徴税長、徴税官を明日に回して明日予定の人を今日に変更するようにして、リスケである。徴税担当は多かれ少なかれ私腹を肥やしているに違いないと慎二くんが考えたから明日にまとめた。税務署嫌いだもんね、慎二くん。
セバスにクビにした9人は何をしてたのかを尋ねると、8名は兵士、1名は庭師の長だった。兵士の仕事は門番と領地巡回だそうだから、今巡回中の4人以外の兵士の首を切ったことになる。タウンゼントに兵士は12人しかいなかったのか。少なすぎないか?それに庭師長がいないなら残った人から長を決めないとね。兵士のことは4人が帰って来てから考えるとして、面談を開始した。とは言っても私はここでも置物だ。
執事長から順に行う予定だったのだが、全員セグレイヴ家なのでまとめて面談である。
執事長はニコラス・セグレイヴ男爵、2人の執事は長男のジョンとスティーヴン。代々この屋敷の執事の家系だった。ニコラスとジョンは特に不満はなく、スティーヴンは危機感を持っていた。
ニコラスは家職を粛々と務めることで生きていたし、ジョンはいずれ男爵を継いで執事長になるのだから、それはそうだろう。今のジョンとスティーヴンの立ち位置は将来ジョンの子供のものだ。
スティーヴンには将来別の官吏になって貰う可能性を示唆し、最初の面談を終了した。
面談結果の内容を教えて貰い、疑問点を確認する。
「スティーヴンを別の官吏にって、何か宛はあるの?」
「ここには徴税官以外に文官がいない。町役場の機能がないから、いくらでもあるよ。多分執事が代行しているから、少しは回っているんだろうけど。
最終的にはスティーヴンをタウンゼント町長にしようと思っている。本当は男爵が良いのだけれど、執事長で満足しているから、町長は無理な気がしている。ブラントン伯爵が良い文官を派遣してくれるといいんだが。」
次は馬丁兼庭師。こちらも6人まとめて行うことにした。これは予定通りで、クビにした庭師長の替わりを選定する必要があるからね。
馬丁兼庭師6人がセバスに先導されてはいって来た。全員いきなり土下座する。
えっ、私威圧やってないよ。
『立ちなさい。それでは話ができない。』
慎二くんがそう言うと、全員恐る恐る立ち上がる。慎二くんはみんなを眺めて
『昨日、お前たちの長を排除した。不満があれば言うが良い。納得できれば戻してもいい。』
すると、ひとりの男が『恐れながら・・・』
『うむ、良い。話せ。』
『ジルが居なくなって仕事がやりやすくなります。戻さないで下さい。』
へー、あの人ジルって言うんだ。じゃなくって。
みんな軽く頷いている。全員一致ね。
なんでも、みんなの仕事にケチをつけるのがジルがやってきた仕事らしい。こうしろ、この方が良いってのがあればまだしも、ケチをつけるだけじゃただの嫌な奴だもんね。
『それでは新しい長を決めたい。お前たちの中で相応しい者はいるか。』
慎二くんが問い掛けると、全員が最初に発言した男を見た。
『皆がお前が良いと見ているようだな、名前はなんと言うのだ。』
『スティーブと申します。』
『よし、スティーブ。お前を馬丁庭師の長と認める。他の者も名乗れ。』
それぞれガードナー、バーン、カトール、ジブハード、カプールと名乗った。カトールとカプールは親子らしい。皆平民だ。あっ、だから土下座したのね。良かった、威圧が漏れたわけじゃなかった。
「怪しい人はいなかったの?」
「ああ、問題ない。心配なのは家族に変なのがいることだよ。後ろにいた人々はあの時間では見ていられなかったから、いるかも知れないね。もしいたら良しと判断した者も追い出さざるを得ないでしょ?」
次は料理人だ。ここからはひとりずつ面談をおこない、特に問題なく終わった。みんな平民だったけど、土下座はなかったな。ダイニングで食事中に、みんな壁際に並んでいたからなれていたのかも。
続いてタウンゼントのメイドたち。まずは一番年長のメイドが来た。
『今まで苦労であった。メイド職を免ずる。慰労金を渡すので下がれ。』
いきなり何を言うの慎二くん。セバスが何か言おうとしたが、手で制し、
『次の者を呼べ。』
と、有無を言わせない。
セバスは軽く一礼をして、連れ下がった。
「なにこれ。どういうことなの?」
「あれはニコラス・セグレイヴ、執事長の妻だ。何もしない給料泥棒だよ。昨日の追い出しのメンバーに入れていたらニコラスも追い出さなくてはいけなくなるから今日に持ち越したんだ。次も同じだよ。」
次に来たメイドも、さっきと同じことを言い、下がらせた。
最後の1人が来ると、
『お前の他のメイドは、今日を限りに職を免じた。タウンゼントに元からいるメイドはお前だけになった。連れてきたメイド長に従い、職を全うするように。
この屋敷固有のならわしもあるかとは思うが、そこはメイド長と調整せよ。』
この人はいいんだ。私は我慢できずにセバスに聞いた。
「メイドの3人・・・」じゃない『メイドの3人の名前を教えなさい。』
『スーザン、トリーとシャーロットでございます。』
『家名があるのではなくて?』
『…セグレイヴでございます。』
『あら、執事の家族なの?』
『スーザンは執事長の、トリーはジョン、シャーロットはスティーブンの妻でございます。』
『そう、ふたりにはご苦労様と伝えて下さい。』
私はシャーロットを見て微笑みかけ、
『あなたひとりにしてごめんなさいね、ジェーンと上手くやってくれるとうれしいわ。』
するとシャーロットは、
『ありがとうございます。誠心誠意お勤め致します。』
と言って涙ぐんだ。
そうよね、3人居たって2人はきっと機能していなかったのだろうから、ひとりの方がやりやすいよね、きっと。
最後は3人の従僕だ。まとめて来て貰っている。庭師たちの時と同じく土下座を立たせて面談を開始する。それぞれの名前を聞いて、家令、執事の命令に従い仕事をしていることを聞いた。
名前はチャーリー、マーク、エドワード。
エドワードはとても若く、子供の分類じゃないのかと思える。この子はセバス付きらしい。慎二くんはエドワードと一番多く話し、彼はとてもしっかりと答えていた。頭良さそうな子ね。
登場人物
ニコラス・セグレイヴ :執事長 男爵
スーザン・セグレイヴ :執事長の妻、元メイド
ジョン・セグレイヴ :執事 セグレイヴ長男
トリー・セグレイヴ :執事の妻、元メイド
スティーブン・セグレイヴ :執事 セグレイヴ次男
シャーロット・セグレイヴ :執事の妻、メイド
レイモンド :料理長
ジーク :料理人
トリュー :料理人
ジル :馬丁兼庭師長、クビ
スティーブ :馬丁兼庭師、長
ガードナー :馬丁兼庭師
バーン :馬丁兼庭師
カトール :馬丁兼庭師、カプールの親
ジブハード :馬丁兼庭師
カプール :馬丁兼庭師、カトールの子
チャーリー :従僕
マーク :従僕
エドワード :従僕




