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ラドヴィクス皇国物語2
さて、
ここは エストーリア宮殿の 貴賓室である。
ラドヴィクス皇国からの賓客が 滞在しているのだが、
部屋の主は もう3日も 眠り続けたまま 目覚めない。
その枕元で 彼女をじっと見守り続けるのは 紅色の髪をもつ美丈夫。
ずっと腕を組んだまま 額には 深い皺が刻まれ、いつもの ひょうひょうとした
雰囲気など 微塵も 感じない。
ーあまり 根をつめるな、フィラリエラ。
自分の娘の力を 信じてないのかい?
寝台から少し離れた壁に寄りかかっていた若者が 見かねて声を かける。
ーなんで 黙ってた?
そちらを振り向くこともなく、声だけで 相手を 問い詰める。
ー心外だね、そんなこと 今さら。
うすうす 感じていたんだろう?
だから、
はざまの森まで出かけて 確かめてきたんじゃないのかい?
彼の本当の正体を。
ふうっと、大きなため息をつき 組んだ手をはずして 寝ている娘の頬に そっとそえて つぶやいた。
ーエルシードが ドリィの息子とはな・・・。
おまけに こいつと 血の繋がりが あるなんて お前の陰謀か、くそ王よ。