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愛娘と燐光花

「おかあさまみてみてー!」


 お腹も大きくなってきたので部屋でゆっくりと過ごしていた私とらそれに付き添う……というか寄り添っているロルフ様。

 リーゼロッテはコルネリウス様に魔術を教えて貰ってるので二人でゆっくりと過ごしていた、のですが……突然リーゼロッテが部屋に飛び込んできたのです。


 あまりに勢いよく開けすぎてびっくりしてしまって、ロルフ様が「あまり騒ぎすぎるのは良くないぞ」と窘めています。

 私に気遣ってくれたのでしょう。リーゼロッテもまたちょっと悄気た様子で「ごめんなさいおかあさま」と眉を下げてしまいました。


 大丈夫よ、と宥めて窺ってくるリーゼロッテに微笑みかけると、安堵したように緩む頬。

 お腹が大きくなってからはあまりリーゼロッテとも外で遊べてはいませんし、寂しかったのでしょう。勿論、家では一緒に居るのですけども。


「どうしたのリーゼロッテ」

「えっとね、コルおじさまにおしえてもらったの」

「魔術を?」

「まじゅつ、というかてじな!」

「……手品?」


 コルネリウス様は一体何を娘に教えているのでしょうか。遊びも大切ですので構いはしないのですが、何で手品……?

 首を傾げた私に、リーゼロッテは満面の笑みで握り拳を前につきだします。


 何か手の中に収めているのでしょう。

 一体何を持って……と首を捻った瞬間、ポンっと軽やかな音が響き渡ります。同時に、ほんのりと眩い光が放たれて、手を一瞬だけ覆い隠したのです。


 私もロルフ様も目を丸くして、リーゼロッテの手を見ると……そこには、黄金の光を纏った琥珀色の燐光花。

 ロルフ様が魔力を込めた燐光花に色は似ていますが、違うのは淡い光を放っている事。此処は私の燐光花と似ていますね。


 わあ、私達の血を色濃く継いでる……と喜べば良いのか、頭を抱えれば良いのか。

 いえ、嬉しいのですけど……その、ロルフ様の研究熱が。


「すごいでしょ、あのね、コルおじさまにはおかあさまとおとうさまのいいとこどりっていわれたの!」


 驚いて欲しくて目の前で見せたみたいですが、驚きにも程があります。

 この時点で燐光花を種から一瞬で咲かせられるくらいには魔力があるのです。その上、黄金に光る燐光花なんて……。人に見られては大事になりそうです。


「すごいなリーゼロッテは。どれ、よく見せてご覧」


 ロルフ様、若干興奮を隠せずにリーゼロッテの手からそっと燐光花を受けとります。

 それからまじまじと眺めて「私とエルの血が混ざった結果か……?」「もしかしたらリーゼロッテには特有の体質があるのかもしれない、大きくなったら調査検証をを」「流石私達の子」とかぼそぼそ呟いています。


 ……ロルフ様、ひとまずそれくらいにして下さいね、リーゼロッテが困ってますから。


「すごいわリーゼロッテ。良く出来たわね」

「えへへー、おかあさまがいつもお世話してるおはな、わたしもさかせてみたかったの」


 ほんとうはおかあさまみたいないろがよかったんだけどね、とちょっと残念そうなリーゼロッテは抱き締めて「でもすごいわ」と囁いてあげるとご満悦そう。

 まぁるくなったお腹を撫でて「このこもおどろいてくれるかな」と無邪気に微笑んでいます。


 ぽこ、とリーゼロッテが触れたのに合わせてお腹を蹴ったらしい、まだ見ぬ子供。リーゼロッテは「おへんじしてくれた!」と感動していたり。

 ロルフ様は、くっつく私達を幸せそうに見つめています。ちょっぴりそわそわしてますけど。

 ……あ、ロルフ様入りたいんですね、此処に。


 相変わらずですね、と微笑んでリーゼロッテに耳打ちすると、リーゼロッテの瞳が悪戯っぽく輝きます。

 それから、ロルフ様に勢いよく飛び付いて膝に乗ってしまいました。


「だいじょうぶだよ、おとうさまもすきだから。おかあさまばっかりくっつくけど、おとうさまもだいすき」

「リーゼロッテ……!」

「でもこのはなはおとうさまにはあげない」


 ひょい、とロルフ様の手から取って大切そうに抱えるリーゼロッテに地味なダメージを食らっているロルフ様。

 くすくす、と堪らず笑うと拗ねた顔をされるのです。そういうところは本当に可愛らしいですよね、ロルフ様は。


「じゃあ、そのお花はどうするの?」

「こうするの」


 ロルフ様のお膝からよたよたと降りて、また私の所に。それから、綺麗に咲いた燐光花をある程度の長さまで切って、そのまま私の髪に差すのです。

 ほんの小さなものとはいえ魔術を使って切った事に驚くべきか、この突然の行動に驚くべきか。


 目を丸くしてリーゼロッテを窺うと、リーゼロッテはにっこりと満面の笑み。


「おかあさまはおはながにあうから。あかるいいろがにあうの」

「そうだな、エルは花がよく似合う。可愛いぞ。妖精さんみたいだ」

「……も、もう……ロルフ様ってば」


 妖精というのは過剰な褒め方だと思うのですが、ロルフ様は本気で思ってそうなので拒めません。自分で言うのもお恥ずかしいのですが、ロルフ様は私にべた惚れですので……。

 もうそんな歳じゃないとは思うのですが、ロルフ様が満足そうなので何も言えません。


 恥ずかしさに熟れる頬を見て「照れなくても良いぞ」と実にご満悦そうな表情を浮かべるロルフ様に、私は小さく唸ってリーゼロッテを抱き締める事で耐えるのでした。

 活動報告で書影と店舗特典の情報を公開しました。良ければ覗いてやってください!

 因みに発売日は1/6なのですが、一部店舗では既に発売されてるらしいです、早い!

 見掛けた際には是非とも手にとって頂けたらな、と思います(*ÒㅅÓ*)


 あと発売記念で企画しようと思ったものの時間がないのでSSを幾つか当日にアップします。ネタがないけどきっとなんとかなるでしょう……。


 それでは『旦那様は魔術馬鹿』をこれからもよろしくおねがいします! 書籍版も是非……!

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