育まれる幸せ
「あの、ロルフ様。幾らなんでも過保護すぎです」
私の懐妊が発覚してから一ヶ月。
何と言いますか、ロルフ様はとてもとても心配性で、その過保護さが遺憾なく発揮された結果、私はおうちを出る事が許されませんでした。
……まあ、許されなくても、あまり出るつもりはなかったのですが。まだ安定してなくて、食欲がなかったり戻したり、体調不良に見舞われていたので。
そんな訳でベッドで臥せりがちな私なのですが……体調が良い時にお庭をお散歩しようと思っても、ロルフ様に止められがちです。
燐光花の水やりもアマーリエ様に任せがちになっているのですよね。申し訳ない限りです。
「過保護という訳ではない。もし何かあった時を考えての行動だ」
「結果的に過保護ですからね」
「極論過保護であろうが良いのだ、エルに何かあっては堪らないからな」
安定期に入るまでは無理は絶対にさせない、と誓っているロルフ様。……アマーリエ様に色々と聞いてお勉強したらしく、体調を気遣ったり食べられそうな果物を持ってきたりと、とても親切というか、凄く注意してくれているのです。
お仕事も残業なしで即帰ってきて、直ぐに部屋まで戻って私の様子を第一に見に来るという徹底っぷり。溺愛されているのは自覚しているのですが、まさか此処までとは。
「そんなに心配しなくても、私は基本的に部屋に居ますから」
「そうか? しかし心配なものは心配だ。それは変わらないぞ?」
「そんなにですか?」
「私の最愛の妻と子に何かあっては大事だからな」
ベッドで半身を起こした私をそっと抱き締めて頬に口付けるロルフ様に、何ともいえない面映ゆさで胸が擽られるような感覚。
本当に、一年前では考えられない程に、ロルフ様は私の事を大切にしてくれて、愛してくれている。今から一年前だと、多分私とロルフ様が接するようになったくらいでしょうか。
あの頃のびくびくしていた自分に、今の姿を見せてあげたいくらいですよ。
ぽん、ぽん、と指の腹で撫でるように、軽くお腹を叩くロルフ様。愛おしげに、慈しむように、優しく触れるロルフ様は、満ち足りた表情そのもの。
私もまた、心の底から染み入るような充足感に溢れています。
こんなに、幸せでも良いのでしょうか。
「……幸せ者ですね、私」
「そうでなくては困るぞ? 私はお前を幸せにすると決めているのだ、
幸せであってくれるなら私も幸せだ」
「ふふ、じゃあロルフ様も幸せで良いと思うのです。私は誰よりも幸せですから」
幸せの基準なんて人それぞれですけど、それでも言えるのは、私はロルフ様と結ばれて今まで、幸せの最高値が常に更新される状態です。このままふわふわと飛んでいけるのではないかって、くらいに。
きっと、これからも幸せは続くのでしょう。
子供が生まれて、子供が育って、そして素敵な伴侶を見つけてくれて、孫が生まれて。歳と共に、幸せも重ねていくでしょう。
これからもずっと、幸せですよ。何となくですけど、確信しているのです。
「……」
「ロルフ様?」
「いや。非常に愛らしい事を言ってくれるな、と。しかし、今はエルの体が最優先だ、無体は出来まい」
すりすりとお腹を擦るロルフ様の瞳を覗いて、まあ何を考えたのかは分かったので恥ずかしくてそっぽ向きます。
……何だか今お腹に居るこの子が生まれて直ぐ妹弟が出来そうな気もしなくはないですが、それが愛されているという事は充分に分かっているので、拒みはしません。
「生まれてくるのは男女どちらだろうな」
「ロルフ様は女の子が良いのでしたっけ」
「正しくはどちらでも可愛がるが、エル似の子だとさぞ可愛いだろうな、と」
「ロルフ様似の子も素敵に決まってますよ」
「それもそうだ。私とエルの子なのだから、間違いはないな」
何だか気が早いロルフ様ではありますが、勿論、私もその言葉に異論はありません。だって、こんなにも愛されてお腹の中で生まれる時を待っているのですから、どんな子でも素敵ですし、可愛がりますよ。
まだ見ぬ子に思いを馳せる旦那様に、私もまた自分のお腹に意識を向けて、一撫で。
家族が増えるのは、素晴らしい事です。きっと、賑やかな家族になるのでしょう。……願わくば、皆が幸せで居られる家庭になりますように。




