夫婦揃って甘えん坊
ロルフ様って、結ばれてからより一層甘えん坊になったんですよね。
「エル、あまり髪を弄っても楽しくないと思うが」
日頃は仕事の関係であまり触れ合う時間が取れないロルフ様。休みの日はここぞとばかりに甘えてくるというか、くっついてくるのです。
因みに今日はロルフ様はソファに座った私の太腿に頭を乗せる形でソファに横になっています。まあつまるところ膝枕をご堪能中ですね。
手持ち無沙汰な私はロルフ様の繊細な髪に指を通していたのですが、ロルフ様はちょっぴり擽ったかったみたいです。
それでも触り心地は良いので、止めないですけど。だってロルフ様太腿ぷにぷにしてくるんですもん。
「私は楽しいですよ。ロルフ様こそ太腿触るのはお止めください」
「ちゃんと服の上からだぞ」
「服の中に手を突っ込んだ時点で私勢いよく立ち上がりますからね」
「……善処する」
膝丈のワンピースなので、捲ろうと思えば捲れます。捲った瞬間立ち上がりますけど。オイタは良くないです。
ロルフ様を甘やかしすぎると後で私が大変な事になると、ここ数ヵ月で学んだのです。ベッドに連れていかれるとか、真っ昼間から御免ですから。
ちょっぴり厳しめの対応を取ると、ロルフ様はしゅーんと眉を下げて普通に私の手を握ってきます。……注意しなかったらべたべたしてきましたね、この調子だと。
全くもう、とため息をつきつつ、またさらりと髪を梳くと、ロルフ様はじぃっと私を見上げて来ます。
「……私よりエルの髪を弄った方が楽しそうではあるが」
「そうですか? 私、そんな髪とか綺麗ではないのですけど」
「そうか? 艶やかで、さらさらしていてとても触り心地が良いぞ。綺麗だ」
前に流した髪をひょいっと手にとってしげしげと見つめるロルフ様に、なんというか面映ゆさを感じてふふっと笑ってしまいます。
あんまり綺麗とは言われた事がないので、ロルフ様の贔屓目だとは思うのですけど、褒められた事は素直に嬉しいです。ロルフ様の為に外見に気を遣ってる甲斐があったというか。
ロルフ様に可愛いとか綺麗と思っていただけたら、それだけで幸せですから。
先端をいじいじと指先で弄んでいたロルフ様、離したかと思ったらそっと手を伸ばして頬に触れてきます。
「エルは相変わらず、自分に自信がないな。髪も綺麗だし、可愛いというのに」
「ロルフ様にとってそうであれば、私はそれだけで充分ですよ」
「む。まあ、お前の可愛さは私だけ知れば良いのかもしれない。昨夜なんて、」
「ロルフ様、それ以上言ったら落としますよ」
「すみません」
何を言おうとしてるんですか、と私もロルフ様の頬をぺちぺち叩くと、ロルフ様はそれはそれは楽しそうに笑うのです。反省してませんね。
全くもう、と唇を尖らせるものの、頬の火照りは到底誤魔化せそうにありません。……ロルフ様の馬鹿。ロルフ様が全部悪いんですから。
思い出したら恥ずかしいので首を振って頭から追い出しつつ、何だか随分と積極的になってしまったロルフ様を視線で咎めるのですが、やっぱりロルフ様は楽しそうに笑うだけ。
視線は、愛しそうで。……愛されてるのは、とても、とても実感しているというか身を以て理解しているのですけども。
「エルは照れ屋さんだな」
「ロルフ様は明け透けで困りますっ、恥ずかしい!」
「妻を可愛がるのは夫の役目だと思っていたのだが……違うのか?」
「~~っ」
至極当然のように宣うから、私は唸って、脚は動かせないので暫く両手をパタパタさせて。羞恥に悶えては涙目でじっとロルフ様を見下ろすと、不思議そうに首を傾げられました。
そこはわざとじゃないんですね、もうっ!
可愛いやつめ、と小さく呟いたロルフ様にそっぽを向くと、苦笑したような呼吸音。ちらりと見下ろせば、すりすりと太腿に頬を寄せて、機嫌良さそうにしているロルフ様。
「……ロルフ様のばか。甘えん坊っ」
「夜はお前が甘えてくるから、昼は私が甘える番という事で。舌足らずに呼んでくるのはお前だろう?」
「あううっ! もうだめ、ロルフ様のばか! 今日はアマーリエ様とか一緒に寝ます!」
「何故だ!?」
この調子だとロルフ様が暴走するのが目に見えてるので、今日はアマーリエ様と一緒に仲良く語らったりロルフ様の愚痴を言ってやると決めました。
ロルフ様が手加減してくれないとかロルフ様は意地悪だとか一杯言ってやるんですから。自分にもダメージ来ますけど良いもん。
ロルフ様が情けない声で「エル……」と言ってきますが、知らないですもん。今日は一人で寂しく寝れば良いのです。ロルフ様のばか。
そういえば昨日なろうで活動始めて二周年でした、皆様いつも応援ありがとうございます。これからも宜しくお願い致します。
 




