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Episode:27 変状

王都アリアテリアを出て、ノクアテルリアに向かう少し前。




アルゴジアは誰かに倒されたが、その者は名乗り出なかったので、アルゴジアから得られる資金は、全て王都の復興のために使われることとなった。


アルゴジア討伐の依頼の報酬を受け取ったのは、依頼の少し前の集まりに参加した冒険者全てであった。そして、アルゴジアの襲来が予定より早かった。そのことをいいことに、討伐自体には参加せずに受け取ったものもいたのだ。もちろん、参加しようとして参加できなかったものもいたが、それは少数派だ。なぜなら、冒険者は命優先であるから危険な戦闘は避けたいのだ。

なお、逃げた冒険者に報酬を払うことを避けるため、討伐参加者リストはもちろんあるが、それはアルゴジアの攻撃により紛失した。


王都の冒険者ギルドに元からいる冒険者つまりは生き残りを名乗る者たちは、彼らの虚栄心のためにアルゴジアを討伐したのは自分で王都復興のために死体はくれてやったなどと豪語していた。


そんな力があれば、ロユブス山脈周辺の未開地を踏破すればすぐに英雄にでもなれるだろう。また、くれてやれる金があるのなら冒険者なんてやっていないだろう。


そんなことは豪語している冒険者は別として、聞いている冒険者にはわかっていた。だから、それらの話は作り話として、酒の肴になっていた。


**


ハガネは冒険者ギルドがそんな喧騒にあることが、好きではない。


メリアが突然ハガネに質問をしてきた。

「……どうして、ハガネさんはアルゴジア討伐の功績を受け取らなかったのですか?」

冒険者になってからの時間が、ハガネより長いメリアの感覚では、ハガネが功績を得ようとしないのは、理解に苦しむことだった。


「…英雄として、活動するのには様々なしがらみがついて回るからだ。それに金は十分にある。」

名声を手に入れても何の旨味もない、ハガネにとって名声とは、知名度に近い。

知名度が高ければ、その分他国とくに敵国に渡る時に身元がばれてしまうリスクが高まる。

【詐術】でゴリ押せばいけるだろうが、ハガネは縛り云々の前になるべくチートは控えることにしていた。


メリアにはまだ、チートのことを言っていない。だから、メリアにとってハガネは強い人間でしかない。

ゆえに、ハガネがどうして功績も貰わずに達観視できるのか、わからないのだ。


「金は十分にあるって、なんで冒険者やってるんですか……。」

「冒険者登録はフェイクに過ぎない。ある程度素性が曖昧でも納得されるからな。その点、冒険者は都合がいい。それに、冒険者ギルドが多くの国に跨る団体ということもある、敵国に渡ることだって上手くやれば出来る。」

「…なんで、他の国に行こうとするんですか?」


長命である多くのエルフは定住を望む。

メリアは止まった時の中で生きたくはないが、安心できる場所を求める気持ちは大きい。不安定な生活は望まないものだ。


「………わからないな。安心できる生活を望んでいるのに。たぶん、知りたいから。かな?」

メリアはその答えに少しだけ驚いていた。

「…ハガネさんにもよくわからないことがあるんですね。」


エルフであることを隠し続けなければならないメリアは、この街をいつか出て行かなくてはならない。寿命が違うから、ずっと同じ姿の存在は不審に思われてしまうからだ。

旅人になるということはエルフの考えから遠く離れたものだが、旅人であり続けることは一種の停滞を得ることができる。


ふと、そんなことがメリアの頭の中を過った。


「……そういえば、王都から出ると言っていましたよね?私も…その、ついて行っていいのですか?」


「いいだろう。」


無表情のハガネが、少し微笑んだようにメリアには感じた。



*****



王都には王宮がある。

正確には王宮があるから王都なのだ。


王宮というからには王族が住んでいる。


第一王女、リリーシェル・リィ・アリアータは馬車で王都に急いでいた。


教国での恒例の"帝国との交渉をやめよ"という要請をやんわりと流し、教会の建設や募金の一部の譲渡、交易の活性化などの話し合いをした、その帰り。伝達の馬車に王国への危険度Aのモンスターの侵入を聞き、馬車を飛ばして王都まで戻ってきた。


王族用の馬車だけあり、使われているラードは優秀なもので、アルゴジアの王都襲来時には、王都に着く予定だった。

結局、アルゴジアが予定より早く来たため害魔災(モンスターによる災害をこういう。)の後になってしまったが。


**


戦闘にこそ遅れたものの、リリーシェル王女の乗った馬車は王都についた。

リリーシェル王女は、関係の難しい教国との交渉を任されるほどに優秀である。だから、王女は他の堕落した王族や貴族たちが非難される中、圧倒的な人気を誇っている。


「え!?あの馬車って!?」

「まさか、リリーシェル様!?」

「「「リリーシェル王女様ー!!」」」



ハガネはそれを冷ややかな目で見る。

「ふーん、あの王女人気あったんだ。」

『肯定、文武ともに優秀で政治(にんきとり)も上手いようです。また、あの時は教国との交渉に向かっていたのではないかと。』

「…優秀な近衛兵が配備されるはずだ。」


リリーシェル王女がいるだけで、王国への国民の指示が集められるのならば、守らない手はないだろう。



ちなみに、その時メリアはお世話になった人たちに挨拶に行っていた。



**


リリーシェル王女は復興の指揮に立候補し、現在、現場で指揮をとっている。


壁の再築は最優先だ、大工や土魔法使いをそちらに回すなど、復興の効率化をはかった。


その分王都内部の復興は遅れる。しかし、破壊された家に住んでいる人々は安全も強く求めるので、壁を直す(安全の)ためと言えば納得してくれるだろう。



***



ハガネたちの乗った馬車がノクアテルリアに向かって進む。王都の門をくぐり、外に出ると遠方には既にノクアテルリアの街が見えた。ノクアテルリアの特徴と言っていい、大きな教会の塔が立っているのも見える。それだけ、ノクアテルリアは王都の近くにあるのだ。


大型のダンジョンは地下にあるので当然見えないが、それで有名だ。


大迷宮の街。

それがノクアテルリアの異名である。

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