第十一章 偽りの夜明け
山田健太が新晨テクノロジーのオフィスの入り口に再び姿を現したとき、会社全体が沸き立った。
「健太さん!」
「おかえりなさい!」
「よかった!とうとう帰ってきたんですね!」
社員たちは自発的に集まり、その顔には心からの喜びと安堵が満ち溢れていた。高橋、未来からコアモジュールの引き継ぎを指名された若手エンジニアは、感激のあまり目頭を赤くし、山田の肩を力強く叩いたが、しばらく言葉が出なかった。
山田健太は少しやつれているように見えたが、元気そうだった。彼は同僚たちの熱意に一つ一つ応え、穏やかな笑みを浮かべていたが、その瞳の奥には言葉にできない疲労と困惑が隠されていた。彼はこの突然の歓迎の光景に少し戸惑っていた。
昨日、まるで骨に付いた疽のように彼の家族に付きまとっていた「慈善財団」が突然姿を消した。彼らはすべての理不尽な要求を撤回しただけでなく、丁重に謝罪に訪れ、彼の父親の将来十年間のすべての医療費を支払うのに十分な「見舞金」を置いていった。相手はただ一言だけ残した。「我々は、偉大な技術専門家が家族に対して持つ責任を邪魔するつもりはありません。」
この劇的な変化に、彼と彼の家族は驚愕した。もちろん彼は、その背後に単純ではない何かがあることを知っていた。彼はすぐに桜井未来のことを思い出した。彼女が去り際に見せた、異常なほど平静でありながら、この上なく固い決意を秘めた眼差しを。
「待ってて。」
その二文字は、まるで烙印のように彼の心に刻み込まれた。彼女が何かをしたことは分かっていたが、想像もつかなかった。一体どのような天をも動かす手段を使って、あの底知れない背景を持つ「ビジョン・キャピタル」をわずか三日間でこれほど徹底的に譲歩させることができたのか。
彼の視線は人混みを抜け、最終的にオフィスの端に立ち、静かにその一部始終を見ていた桜井未来に注がれた。
彼女は相変わらずその洗練されたビジネススーツを着て、顔にはかすかな微笑みを浮かべ、その瞳は水のように静かだった。しかし山田健太の目には、今の彼女は三日前とは全く違って見えた。彼女の姿はまるで見えない、冷たいオーラに包まれているようだった。それは、本当に残酷な闘争を経験した後にしか生まれない、鋭さと疎外感だった。彼女は確かにそこに立っているのに、まるで遥か彼方にいるように感じられた。
桜井未来も彼を見て、彼に軽く頷き、自分のオフィスに来るように合図した。
オフィスのドアが閉まり、外の祝賀の喧騒が遮断されると、山田健太はついに我慢できずに口を開いた。声は少し掠れていた。「未来さん……君がやったのか、そうだろう?」
「ええ。」桜井未来は否定しなかった。彼女は彼に熱いお茶を淹れて手渡した。「問題は解決しました。お父さんの件は、もう何も面倒なことはありません。」
「どうやって?」山田健太は問い詰めた。彼は彼女の目を見つめ、答えを見つけようとした。「黒田重信のような男が、簡単に妥協するはずがない。君は……どんな代償を払ったんだ?」
彼が最も心配していたのは、彼女が自分のために、黒田重信に何か屈辱的な取引をしたのではないかということだった。例えば、会社の支配権を渡すとか、あるいは……彼女自身を。
桜井未来はティーカップを持ち上げた。指先に温かさが伝わってきたが、彼女の心は氷のように冷たかった。どう答えればいいのか?黒田家を破滅させるに足る裏情報を使い、まるでヤクザのように、あの財界の大物に露骨な脅迫と恐喝を行ったとでも言うのか?勝利のためなら手段を選ばない、自分でも見知らぬ女になってしまったとでも言うのか?
彼女にはできなかった。
この暗い代償は、彼女一人で背負うしかない。
「彼が断れない『説客』を見つけたの。私たちと敵対するコストが、彼が得られる利益よりもはるかに高いことを理解させた。」桜井未来は、曖昧で、かつ「知恵」に満ちているように聞こえる言い方を選んだ。「ビジネスの本質は利益交換。私は彼にもっと割のいい計算をさせただけ。あなたが心配するような代償はないわ。」
山田健太は明らかにその説明に完全には納得できなかったが、桜井未来の有無を言わせぬ眼差しを見て、これ以上聞いても本当の答えは得られないと悟った。彼の心に無力感がこみ上げてきた。過去の無数の日々、彼らは肩を並べて戦い、何でも話し合える戦友だった。彼は技術の世界で彼女のために突撃する騎士だった。しかし今、彼は見えない壁によって隔てられているように感じた。彼女は彼の見えない戦争に行き、一人で見えない傷を負って帰ってきたのだ。
「ありがとう、未来さん。」長い沈黙の後、彼はただその三文字しか言えなかった。この感謝の言葉には、あまりにも多くの複雑な感情が含まれていた。感謝、敬意、そして彼女の重荷を分かち合えないことへの罪悪感。
「私たちはパートナーでしょう?」桜井未来は微笑んだが、その笑顔は目には届いていなかった。「戻ってきたからには、『アテナの槍』をしっかり完成させましょう。ブロードコムの事業統合こそが、今年の最大の挑戦よ。」
彼女は素早く話題を仕事に戻した。その電光石火の態度は、まるで前の出来事が何もなかったかのようだった。
山田健太は頷き、心の中の疑念を抑え、最も慣れ親しんだ技術の世界に再び集中した。これはおそらく、彼らの間で達成された新しい暗黙の了解だった。ある種の事柄は、問う必要も、言う必要もない。
しかし、彼らは二人とも知っていた。何かが、永遠に変わってしまったことを。
続く数週間、新晨テクノロジーはかつてないほどの高効率で動き出した。山田健太の復帰は、技術チーム全体の士気を頂点にまで高めた。彼が去ったことで停滞していた「アテナの槍」プロジェクトは、彼と未来の共同主導のもと、驚異的なスピードで進められた。未来はトップレベルのアーキテクチャと戦略の策定を担当し、時代を超越した視野でシステムに最も正確な進化の方向性を示した。一方、山田はこれらの「天啓」のような構想を、一行一行の堅牢でエレガントなコードに変換する役割を担った。
二人の連携は依然として完璧で、以前よりもさらに効率が高まった。しかし仕事以外では、彼らの間の交流は少なくなった。山田はもう以前のように、深夜の残業の後に彼女を居酒屋に誘い、ビールを飲みながら技術の未来について熱く語り合うことはなくなった。そして未来もまた、常にすべての人と一定の距離を保とうとしているようだった。
彼女はより純粋な「社長」のようになった。冷静で、決断力があり、常に最も正しい決定を下すことができるが、同時に精密な機器のようで、人間味に欠けていた。
彼女自身だけが知っていた。彼女は恐れていたのだ。人と近づきすぎることを恐れ、他人の目に映る純粋で、善良で、信頼に値する「桜井未来」を見ることを恐れていた。なぜなら、自分はもはやその人間ではないと感じていたからだ。
あの日の黒田会所での対峙は、まるで精神的な豪雨のように、彼女の魂の中から「普通の人」に属する最後の弱さと純真さを洗い流してしまった。彼女は自分が黒田重信のようになれること、甚至、彼よりも冷酷で、無情になれることを証明した。この認識は、彼女に安心感をもたらすと同時に、巨大な自己嫌悪をもたらした。
彼女は頻繁に眠れなくなり、夢の中では前世で自殺したときの冷たい海水と、驚き、怒りから恐怖へと変わる黒田重信の顔が交互に現れた。彼女は生きる権利を勝ち取ったが、心から安らかに生きる資格を失ったかのようだった。
彼女は何かをする必要があった。
彼女は「創造」を通じて、その「破壊」がもたらす空虚感に対抗する必要があった。
一つの考えが、彼女の頭の中で長い間渦巻いており、今、この上なく明確になった。
「深空」システムはサイバー空間の情報セキュリティ問題を解決したが、人類は結局のところ物理世界に生きている。AIの究極の形態は、決して仮想空間のバイトストリームだけではなく、現実世界で感知可能な実体を持つことにある。
ロボット、自動運転、スマート義肢……これこそがAIの次のブルーオーシャンだ。
彼女は山田健太をオフィスに呼び、ホワイトボードに三つの文字を書いた。「プロメテウス」。
「これが次のプロジェクトのコードネームよ。」未来の瞳に再び光が灯った。それは、未来を構想するときにしか現れない、灼熱の光だった。「『深空』システムを頭脳として、私たちは強人工知能と物理世界のインタラクション領域に足を踏み入れる。第一歩として、スマート義肢から始めたい。」
彼女はニュースページを呼び出した。そこには「神崎隼人」という名の天才ロボット工学者が報じられていた。神崎はかつて早稲田大学のロボット研究のスターであり、卒業後はすべての大企業からの誘いを断り、自身で小さなスタジオを設立し、触覚フィードバックを持つ神経接続義肢の開発に専念していた。彼の技術理念は非常に先進的だったが、あまりにも金がかかり、なかなか商業化できなかったため、スタジオは破産の危機に瀕していた。
「彼は本物の天才よ。彼の技術は、少なくともこの時代を十年は先行している。」未来の声には賞賛が満ちていた。「彼のチームが欲しい。彼のすべての技術が欲しい。健太さん、彼の神経インターフェース技術と私たちの『深空』AIモデルを融合させる可能性を評価してほしい。」
山田健太は画面に映る神崎隼人の反骨精神あふれる顔を見て、未来の瞳に宿る疑う余地のない渇望を見て頷いた。「技術的には可能です。そして成功すれば、これは間違いなく革命的です。しかし、これは『アテナの槍』よりもさらに金がかかり、長いプロジェクトになるでしょう。」
「お金の問題は私が解決する。」未来はきっぱりと言った。
彼女がこの、心の中の陰鬱さを一時的に忘れさせてくれる新しいプロジェクトに全身全霊を傾けようとした矢先、あの幽霊のような暗号化された携帯電話が再び振動した。
依然として川端真音からだった。
「おめでとう、未来ちゃん。見事な勝利だ。」真音のテキストには、からかうような笑みが含まれていた。「深淵クラブへようこそ。気分はどう?運命の喉元を自らの手で締め上げる感覚は、コードを書くよりずっと刺激的だろう?」
桜井未来は嫌悪感を覚え、冷たく返信した。「そのことについてあなたと話したくありません。」
「そんなに邪険にしないでくれよ。」真音は彼女の冷淡さを全く意に介さないようだった。「ただ忠告に来ただけだ。黒田重信は潜んでいる猛獣であって、尻尾を巻いた犬じゃない。今回は彼に出血させたが、彼が死なない限り、必ず百倍の狂気で報復してくる。君が持っている『贈り物』は一時的に彼を威嚇できるが、威嚇力は時間と共に減少していくものだ。」
未来の心は沈んだ。これは確かに彼女がずっと心配していたことだった。
「『でない限り』……」真音の次のメッセージがゆっくりと送られてきた。「彼が反撃の機会を見つける前に、君が彼よりも強くなることだ。彼が君に手を出そうとするたびに、自分が粉々になるかもしれないとまず考えざるを得なくなるほどにね。」
「一体何が言いたいんですか?」
「助けてあげたいのさ。」真音の口調は、この上なく「誠実」に聞こえた。「君が最近、神崎隼人という小天才に注目していることを知っている。彼のスタジオは来週、銀行によって清算される。そして彼の最大の債権者は、偶然にも私の一人の『友人』だ。君が口を開けば、私はその『友人』にすべての債権を、神崎隼人のスタジオとすべての特許と共に、『パッケージ』にして、君が絶対に断れない価格で売ってあげられる。」
桜井未来は瞬時に理解した。これはまたしても取引だった。川端真音は抜け目のない悪魔のように、いつも彼女が最も必要とするときに現れ、美しく包装されたリンゴを差し出す。そしてそのリンゴの芯には、彼女には読めない契約が刻まれているのだ。
「なぜ?」未来は、ずっと彼女を悩ませてきたその問いを投げかけた。「なぜ何度も何度も私を助けるのですか?一体私から何を得たいのですか?」
画面の向こうは長い間沈黙していた。
未来がもう返信はないだろうと思うほど長く。
「なぜならね……」真音のテキストが再び現れたが、以前の軽薄さとは打って変わり、まるで太古の昔から続くような孤独と疲労を帯びていた。「私は君の中に、かつての自分の影を見ているからだ。運命に翻弄されることを良しとせず、自分の力で、この汚れた世界に、清らかな空を切り開こうとする、純真な馬鹿の影をね。」
「残念なことに、清らかな世界を創るためには、まず手が泥にまみれなければならない。私はただ見てみたいだけだ。君が……私とは違う道を歩むのか。それとも、最終的に私のような人間になるのかを。」
「神崎隼人の資料は、君のメールボックスに送っておいた。買うか買わないか、君自身で決めなさい。これは……先輩から後輩への、ささやかな投資だとでも思ってくれ。」
メッセージはそこで終わっていた。
桜井未来はメールボックスを開いた。そこには神崎隼人のスタジオに関する詳細な資料が、隠された技術資産や負債状況も含めて、鮮明に示されていた。川端真音の情報収集能力に、彼女は再び身の毛がよだつ思いがした。
彼女はコンピュータの画面に映る「プロメテウス計画」の構想図と、川端真音から送られてきたこの「贈り物」を見比べ、物思いに沈んだ。
この「贈り物」を受け入れることは、川端真音に再び恩義を感じ、あの底知れない女性とさらに深く結びつくことを意味する。しかし断れば、千載一遇の好機を逃し、他の虎視眈々と狙う資本に先を越されるかもしれない。
彼女は真音の言葉を思い出した。「清らかな世界を創るためには、まず手が泥にまみれなければならない。」
おそらく、復讐を決意し、前世の二の舞を演じないと決めたその瞬間から、もう引き返す道はなかったのだろう。
自己嫌悪に沈むよりも、前進し続ける創造の中で、救いを求める方がいい。
たとえ前途が依然として深淵であろうとも、彼女はその深淵の上に、自分自身のために、そして守りたい人々のために、夜明けへと続く橋を架けなければならない。
たとえその夜明けが、偽りのものであったとしても。
彼女は電話を取り、法務部にかけた。「準備してください、買収を行うかもしれません。ええ、ロボット工学のスタジオです。」
(第十一章 完)




