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第14話 マルティナと屍竜使い4

「な……! 馬鹿な、まだ動きおるじゃと……!?」


 信じられない。完全に一度は死んだはず――

 この異様な目の輝きと、身を覆う禍々しいオーラのようなものは何だろう。


「陛下! 危険です下がって下さい!」


 宮廷魔術師のエリカが、エルフィン陛下を急いで下がらせる。

 周囲の騎士達も、起き上がったバーヴェルと、ワシとを取り囲んでくる。


「貴様! 魔物を使って陛下を害するつもりか!」

「子供だと油断させる狙いか!?」

「……!」


 この状況でバーヴェルが暴れ出せば、疑いを向けられても仕方は無い。


「いや、そんなつもりはありませんじゃ! その証拠にワシがこ奴を止めましょう! 皆下がってくだされい!」


 ワシは動き出したバーヴェルの前に進み出る。


「ウオォォォォォォォォッ!」


 バーヴェルは腰の剣を抜き、ワシを威嚇するように身構える。


「さあ、かかってくるがええ。今度こそ眠らせてやるからのう」


 ワシも身構え、戦闘姿勢。


「ガアアァァァァァッ!」


 バーヴェルは大きく剣を振り上げ――


 ザシュッ!


 それを自分の大きな足に突き立てた!


「!? お、おい何をしとるんじゃあっ!?」

「はぁ……はぁ――! ふぅ……死力を尽くせしこの戦士の身、あのような者の自由にさせてなるものか……! 騒がせて済まぬな、我は正気を取り戻した――」


 バーヴェルは荒い息をつきながら、そう言った。

 どうやら異様な目の輝きは収まっているようだ。


「バーヴェル……!? お、おぬし生きておったのか!?」

「いいや死んでいた。つい先程までな……」

「何じゃと? ではなぜ急に生き返ったんじゃ?」

「屍竜使いドルミナ……我をこのように操れるのは、ヤツをおいて他におらぬ……!」

「屍竜使い?」

「そなたら人間にも、死霊使いがおろう? ヤツはその竜版だと考えればよい。死せし竜を、己の僕として操るのだ。我と同じく、八魔将の一員よ」

「……! では、王都の異変はその者のせいか……!」


 聞いていたエルフィン陛下が唸る。


「陛下。八魔将ドルミナと言えば、もう何十年も前の魔軍との戦いで、敵の総大将だった魔物です。マルティナ様が討ち取られたはずですが――」

「ああ、そのはずだ。だがそんな姿は見当たらなかったぞ……? あれはどう見ても、マルティナ様から大量の竜が現れたようにしか――」

「……! ちょ、ちょっと待って下され! ティナの……いやマルティナ様の身に何かが起こったのですかの!?」

「あ、ああ……近頃マルティナ様の体調が優れなかった事は知っているだろう? 原因が不明でな。それゆえ私に王位を譲られ、療養をされていたのだが――ある日突然、周囲の人間に早く逃げるように言い出されてな……その直後だ。その身が禍々しいオーラに包まれ、どんどん竜が呼び出されて――我々は避難で手一杯で、結局王都を乗っ取られてしまった。今は何とか敵が外に出てこぬよう、結界を張る事しか出来ていない状態だ」

「そんな。では王都のあの異変は、ティナが……!?」

「ドルミナが乗っ取っているのだな。元々ヤツは、己の肉体を持たぬ思念だけの存在。討ち取ったと言うが、それは憑代を破壊しただけに過ぎず、ヤツ自体は殺せん。多少傷つきはするかもしれぬがな。以前倒したと思った時からずっと、ダメージを癒しつつ、乗っ取る機会を窺われていたのではないか?」

「なるほどのう……お主の言う通りかもしれんのう」


 この情報は貴重だった。バーヴェルには感謝をせねばならないだろう。


「いや、よく教えてくれた。お主が生き返ってくれて助かったぞい」

「フ……礼には及ばん。我を倒したそなたに敬意を表したまでの事。ではな」

「おいどこへ行くんじゃ!?」

「知れた事。我を無理やり生き返らせ使役しようなど、我慢ならん。我等誇り高き竜の眷属にとって、屍竜使いなどいてはならぬ存在よ。己の意思を取り戻せたのならば、ブチ殺してくれるわ……!」

「殴り込む気か!?」

「その通りだ。止めるというならば、相手になろう。それも一興だ」


 と、バーヴェルはワシを見る。ワシの出方を窺っているのだ。


「……奇遇じゃのう。行き先が同じようじゃぞ」

「ほう……!? そなたも行くのか?」

「じゃが、憑代となったティナは助け出す。それは絶対じゃ」

「訳あり――か?」

「ああそうじゃ。エルフィン陛下、ワシとこやつが結界の中に入る事を許可して下され。必ずティナを……いや、マルティナ様を助けて、この異変を止めて見せましょうぞ」

「……いずれ中に突入部隊を送る事は必須だった。八魔将を仕留める程の君には、是非協力を求めたいと思っていた――が少し待ってくれないか? 今突入部隊の人員を集めている所だから、集合を待って……」

「いや、こやつが一緒では他のメンバーは気になりましょう。それにこやつに待つ気など無さそうですぞ? ワシも同じです。じっとしてはおれませぬ……!」

「そうだ。邪魔する者は叩き潰して行くのみ……! 意見が合うではないか」

「いやいやいや、ワシはそこまでするとは言っとらん! 一緒にするでない!」


 そんなワシとバーヴェルの様子を見て、エルフィン陛下はため息を吐く。


「仕方がない――その魔物は君の言う事しか聞きそうにないからな。では頼む、くれぐれも気を付けてな」


 という事で、エルフィン陛下の許可を得たワシとバーヴェルは、結界を一部解除して入り口を作ってもらい、そこから中に足を踏み入れた。


 王都の入り口の門をくぐると、街中にドラゴンがうようよ徘徊しているのが目に入る。


「こりゃあ凄まじい数じゃなあ」

「元々は全て死せる竜だ。屍竜使いドルミナが、それだけの我が同胞の命を弄んだという事に他ならん」

「なるほどのう――」

「ところでアッシュよ。そんななまくら剣では竜は切れんぞ」

「うん? 確かにおぬしに攻撃したら折れおったの、これは」


 今ワシの手持ちの剣は、再び買った鋼鉄の剣だった。


「……これを使え。我が剣と同じ業物だぞ」


 と、懐から短剣を取り出してワシに寄越す。

 バーヴェルにとっては短剣だが、10歳の子供の体のワシには、身の丈程もある両手剣のサイズである。

 真っ黒い刀身は、よく見れば表面に無数の鱗模様が浮き上がっている。

 そして、剣のあちこちに金色の装飾が施され、見た目にも鮮やかだ。


【黒竜鱗の大剣】


 収納時のステータスボーナス:

 腕力+150(上限値:950)

 体力+150(上限値:950)


 収納時、特技『竜破撃』を使用可能。


「おおこれは……! すまんのう、ありがたく使わせてもらうぞい……!」


 強い……! ワシの持つアイテムと一線を画している。

 ボーナスもさることながら、上限値が凄まじい。


 早速、アイテムボックスに【収納】をする。


「おい! 使えと言っただろう!」


 怒られた。

 ワシにとっては、その方が有効な使い方なのだが――?

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【ノベルピア様にて新作連載中!】
異世界鉄姫団 ~最強ロボオタJK達の異世界エンジョイ無双~

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◆◆ハイスペックでロボットオタクの女の子達が、ロボのある異世界に召喚されて楽しそうに暴れる話です! よかったら見に行ってみて下さい!◆◆
― 新着の感想 ―
[一言] 早く次が見たいですじゃー!
[一言] バーヴェル「おこだよプンプン!!」
[良い点] まさかのバーヴェルさんとの共闘? 熱い展開になってきました!
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