第13話 マルティナと屍竜使い3
馬車の旅を終えて辿り着いた王都は、ワシの想像していた賑やかな都会とは程遠かった。
アンギャア――アンギャア――!
上空を飛竜がバサバサと飛び交っており――
キシャアアアァァ! グルルルルルゥゥ……!
街中を陸上型の竜が闊歩し、ドシンドシンと地響きが伝わって来る。
そんな大量発生したドラゴンを外に出さないようにか、王都全体を巨大なドーム状の結界が包み込んでいた。
何万、何十万もの人間が住むであろう王都全体を覆ってしまう程の大規模結界――その光景は圧巻の一言である。
そして結界の外側には、王国の騎士団であろう軍勢が布陣している。
その陣の更に外側には、王都から追い出されたであろう市民達が集まり、難民キャンプのようになっていた。
「な、なんじゃあこりゃあ――!」
明らかなる異常事態である。
「俺は何度も王都には来てるが、こんなのは初めてだぞ……! こ、この世の終わりか……!?」
「止まれ、止まれーっ!」
周囲を警戒していた王国の兵士達が、こちらを見つけて声をかけて来た。
「見ての通り、今王都には入れん! 済まんが迂回をして、別の街に行ってくれ!」
「……どうする? 別の街まで乗って行くかい?」
と、御者の男はワシに尋ねる。
「ここまでで結構ですじゃ。世話になりましたのう。ワシは用があるので、ここで降りさせて頂きます」
「あ、ああ分かった。君なら平気だと思うが、気をつけなよ」
その場で運賃の精算を済ませ、ワシは馬車を降りる。
そして、先程の兵士達に申し出る。
「済みませんが、国王陛下か先代女王陛下にお取次ぎ願えませんかのう。キリヤの街の冒険者ギルドから、至急の報告でして。これを――」
冒険者ギルドからの手紙も預かっている。
ワシがギルドから正式に依頼を受けた使者であることを示すものだ。
「うん……? 確かに冒険者ギルドの正式な文書だな。だが、何故君のような子供が?」
「ほっほほ。色々ありましてのう――」
「?」
ワシの発言内容と言うよりも、口調に首を傾げられたかも知れない。
しかし、ワシは元々立派なジジイ。話し方を直せと言われても直らないのである。
「ま、まあいい。だが見ての通りの状況だから、一応取り次ぐが、今は面会は出来んかもしれんぞ」
「はい。それで結構ですじゃ」
「では、ついて来なさい」
というわけでワシは騎士団の陣内に通して貰い――
「おい良かったな! 国王陛下がお目通り下さるそうだぞ!」
「それはどうもですじゃ。ところで、先代女王陛下もご一緒ですかのう?」
「いや……マルティナ様はおられないぞ」
「ほえ? このような緊急時に、一体何処に?」
「それは……すまんが、私の口から言っていいような話でもない」
――何かあるのだろうか?
それも雰囲気を察する限り、悪い何かが。
「それは済みませんでしたのう」
「いや――では行くぞ」
と、その兵士はワシを一番大きな野営用のテントに連れて行ってくれた。
「申し上げます! キリヤの街の冒険者ギルドからの使者を連れて参りました!」
「ああ構わん、入ってくれ」
「失礼いたします!」
深々とお辞儀をする兵士に続いて、ワシもテントの中に足を踏み入れる。
そこには、30代中ごろあたりの、精悍な顔つきをした男がいた。
王国の紋章が入った白い鎧とマントが良く似合い、凛々しさと気品のようなものを漂わせている。
――現ラーシア国王の、エルフィン陛下。ティナの養子となった後継ぎである。
ティナが後継ぎに選んだ人物ならば、きっと見所のある人物なのだろう。
そして彼の側に控えるのは、魔術師のローブ姿の美人だ。
年齢は20代の後半あたりだろうか?
「うん……? まだ子供ではないか? 伝説の八魔将を仕留めた冒険者を寄越すと聞いていたが……?」
国王陛下はワシを見て首を捻る。
「それがワシの事ですじゃ。ワケあってこの姿ですが、スキルはちゃあんと身についております」
「そ、そうなのか……?」
怪訝そうな顔がさらに怪訝そうになる。
やはり見た目10歳に見合わぬ話し方が、混乱を呼ぶ様子だ。
「何であれば、ステータスなど鑑定して頂ければ分かりましょう?」
「……そうだな、そうさせてもらおう。エリカ、頼む」
と、ローブ姿の女性の方に声をかける。
「宮廷魔術師のエリカです、よろしく。では、じっとしていて下さいね?」
と柔らかい笑みを浮かべ、ワシに向かって手をかざす。
基本的にギルドでステータスを鑑定して貰う時と同じだ。
情報がフッと窓のように、ステータスが記載されて浮かび上がる。
「……わ! す、凄いステータスボーナス……! えぇぇぇぇぇっ!? でもスキルは【収納】と【天才】しかないのに!? え!? スキルの熟練度が9999で追加効果!? み、見た事ないですこんなの……! 熟練度9999なんてデタラメです!」
ワシのステータスを見た彼女は、驚きの声を上げていた。
「おお……! 確かにこれは素晴らしいぞ――! こんな子供がいるとは……!」
「へ、陛下。お、恐らくこの子の言っている事は、間違いでは無いと思います……!」
「ああ、そうだな……!」
エルフィン陛下は大きく頷く。
「疑って済まなかったな。ええと、君の名は――?」
「アッシュ。アッシュ・アルバルトですじゃ」
「み、妙な話し方をする子だな……まあいいが。アッシュくん。八魔将を仕留めたとあれば、それは我が国にとって願ってもないこと――遺体を運んで来てくれるそうだが、見せてくれるか?」
「承知しました。ちょっと場所を取りますぞい」
ワシはテントの中央に、バーヴェルの遺体を取り出した。
「おお……っ! これは書物で見た通り、まさしく八魔将バーヴェル……!」
「凄い迫力の魔物ですね……! もう死んでいるのに、力をビンビンに感じます!」
「ああ、こんなものが街中に出れば、キリヤの街は壊滅していたかも知れん……! アッシュ君には、国からも十分な褒美を取らせねばならんだろう。何か望みは――?」
褒美が貰えるならば、ワシの願いは一つ。
ティナに会わせて貰いたい。それだけだ。
ワシはそれを申し出ようとするが――
「ウウゥゥ……! ウオォォォォォォォォーーーーッ!」
横たわっていたバーヴェルの遺体が、凶暴な叫び声を上げながら、立ち上がった!
その目は見た事の無い、禍々しい真っ赤な光を放っていた。
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