佐都子ちゃん奪還作戦5
今回はたくさん書きましたね
市役所を出て、柴田に先ほどのことを伝えようと思い柴田を探してみると柴田は道路を挟んで向かいの公園のベンチでまた何かを食べていた。
柴田「おぉ、遅かったな。何か中であったのか?‥‥例えば職員の誰かが話しかけてきたとか。」
さすが柴田である。こちらのことは丸分かりであった。
ここまでくると何故こいつがここまで知ってるのか聞きたくなるくらいである。
しかしここは俺の疑問よりも今言われた質問の回答をしよう。
俺「あぁ。お前の言ってる通り中で近藤さんと名乗る人に出会った。そして俺へのアドバイスとお前によろしくと伝えてくれと言われた。」
柴田は少し考え込んですぐに。
柴田「あぁ。近藤か。なるほど確かにあいつにとって市役所の職員とは‥‥。なんとも言えないな。適当であり、残酷でもある。
‥‥ブツブツ」
柴田は近藤さんのことを話したと思うと何故か昔の思いでに浸っている。
俺「お~い。帰ってこ~い。おーい」
俺がそう言うと柴田は此方に気づいたようだ。
柴田「あぁ、すまない。昔の感傷に浸っていた。それで、近藤はお前に何て言ったんだ?」
俺「俺が聞いたことは3つで疑わしきは黒だというのと時間を大切にしろってことだった。」
俺は細かいことは抜いて簡単に柴田に話した。
柴田「なるほど。確かにあいつが言いそうなことであり、俺達にとってとても大切なことだな。それでお前はそれを聞いてどう思ったんだ?」
俺「俺が思ったのは今疑わしい人は正人だなと思う。時間の方はまだ始めのほうだから分からないって感想だ。」
柴田「なるほど、じゃあ今は当初の目的通り正人の情報を手に正人を探そう。」
そう言うと柴田は右手に持っているクレープを少し食べた。
俺「なぁ‥‥ずっと思ってたんだが、それを何処で買ったんだ?」
柴田「ん?このクレープのことか?」
俺「あぁ、そうだ。そのお前が食いかけてるクレープだ。」
柴田「これはさっきそこのクレープ屋で買ったやつだ。そこのトラックで売ってる。移動型のクレープ屋だ。」
俺「ふ、ふーん。でもさ‥‥お前食べ過ぎじゃない?」
柴田「お前が遅いから暇な時間が出来るだろ?だからその間に何かしたくなるだろ?だから食べ物を食べるんだ。」
‥‥こいつの考えは良いも悪いもよく分からない
そう思う俺がいた。
そうやって二人でベンチで喋っていると女の子が市役所の方から此方にくるのが見えた。
その女の子は昨日(9回目の飯を食べる前)とは違う女の子だった。
昨日の女の子はロングヘアーで眼鏡をしていなかったが今来た女の子はショートヘアーで眼鏡をかけている子だった。
俺「おい、女の子が此方に来たぞ。またお前のクレープに釣られて欲しくなって来たんじゃないのか?」
柴田「そうかもしれないな。俺には営業の才能があるのかも知れない。今度露店のアルバイトでもしてみようか。」
などとくだらないことを話していた俺達であったが次の瞬間俺達は驚愕し、同時に焦った。
何故かというと先ほど話していた女の子が此方に向かって歩いて来た。
そこまでならまだ良い。しかしそこの道路には横断歩道はあるが信号は無いといった場所であった。
そこで、その子は多分クレープ屋に夢中で走ってきたのだろう。
しかし、横から車が来ていることに気づいていない状態であった。
俺と柴田そして回りにいる人達は皆眺めているしかなかった。
何故なら反応が遅かったからだ。
もう少し早く気づけばよかった。
女の子の安全を確認すれば良かった。
そんなことだけが頭の中でぐるぐる回り意識だけが動き、体は動かないといった状態だった。
そして、そこで最後に取った俺の行動はあまりにも愚かなものだった。
それは目を閉じ、助かれと思ってただ祈るだけだった。
そこで俺の視界は暗くなる。
暗くなったが、次に目を開けた時に少女が倒れている光景しか浮かばなかった。
そして俺は意を決して目を開けるとそこには‥‥
少女を抱え込み道路に横になっている男性がいた。
一瞬、男性が轢かれたのかと思ったが周りの反応を見るとそうではなく、男性が少女をギリギリの所で助け出したらしい。
そして、車は少女のいた所を少し通り過ぎたあとすぐに止まり、車内から運転手が出てきた。
しかし、そんなことは露知らず周りの人々は少女を救った男性に向かって歩きだした。
周りの男性A 「おい、大丈夫か?」
周りの女性B 「大丈夫ですか?」
少女を救った男性「ぅ‥‥うん。」
男性は少し息をはくと起き上がりだした。
少女を救った男性「はい、大丈夫です。すみません皆さんに心配をかけてしまって。この少女も大丈夫みたいですし、皆無事です。」
そう男性が言うと抱え込まれていた少女は泣き出した。
少女「うぇぇん‥‥うっぅ‥‥ひっく‥‥ひっく。」
男性の言うとおり少女も無事のようである。
男性を見ると特に外傷は目で見た限りは無いようであった。
周りの人々「とりあえず外傷はなさそうだけど病院に行ったら?携帯もあるし、すぐに呼べるよ?」
男性「大丈夫です。怪我も少しかすっただけなんで。あと事が大きくなるとそこにいる泣きそうな運転手さんにも大きな影響があるので大丈夫です。ここでは誰も悪くないし、誰も怪我をしていないのでここでのことは皆さん内密にましょう。」
周りの人々「君がそう言うなら‥‥そうしよう。」
運転手「本当にありがとうございます。このご恩は絶対に忘れません。本当にありがとうございます。」
運転手は男性に向かって深くお辞儀をし、車に乗り込んでいった。
そこで一部始終を見ていた俺だったがふと横を見ると柴田はいなかった。
何処に行ったのかと思い見回して見ると男性の方に向かって行っていた。
柴田「大丈夫ですか?」
男性「えぇ、先ほど皆さんに言っていた通り僕は大丈夫です。」
男性は笑いながら答えた。
柴田「先ほどの少女は貴女の子供さんですか?」
柴田は何故かこの男性に強く語りかけていた。
男性「いぇ、娘はあそこにいますよ。」
そう言って指差した方を見ると昨日会った少女が木にもたれかかって此方を見ていた。
柴田「何度も何度も質問すいませんが、貴女の職業を教えて下さい。」
男性「え、えぇ良いですよ。私は小学校の先生をしています。」
何故、ここまで柴田がこの男性にしつこく質問している意味がこの時分からなかった。
柴田「では、最後の質問です。貴女の名前は何ですか?」
柴田は最後に今までで一番強い押しで聞いていた。
男性「私の名前は‥‥」
その時俺はなんて思っていただろう。きっとありふれた名前を言うのだろうと思っていただろう。
しかし、この男性は確かにありふれた名前であるが俺の予想していた名前と違う名前を言った。
男性「私の名前は竹内正人です。」
その時、俺は頭がガクッと揺らいで一瞬視界がぼやけた。
すると続け様に柴田が質問した。
柴田「娘さんのお名前は何ですか?」
嘘だろ?
まさか娘の名前も聞くのか?と思ったがすでに遅かった。
きっと俺の中では正人という男性は悪で子供を見捨てている奴だと思っていたからだ。
しかし、男性はそんなことはつゆ知らず答えた。
正人「娘ですか?娘は佐都子です。」
その一言で俺は頭が真っ白になった。
きっと何かの間違いだと思ったがそれを打ち消すように10回目の食事の鐘が鳴った。