昇進~裏では死刑~
さて、ディープブルーとしてのお仕事も終わったわけで適当な場所で時間を潰すかと秋葉原に足を延ばして……そして帰宅してから問題が発覚した。
「静香! ブルーに昇進なんてすごいじゃない! アカデミア発足以来最短記録って聞いたわよ!」
「すごいもんだ、さすが俺の娘。母さん、今日はご馳走だ! 寿司でもステーキでもなんでもいいぞ!」
「回らないお寿司の予約ならばっちりよ!」
「流石だ母さん! だが今月の生活費は大丈夫か?」
「今回の一件で静香が特待生になったんだもん、全然余裕よ! 特待生奨学金って全額学校側が負担してくれて、一定以上の成果を出せば返済いらずだから!」
「なるほど、だったら英気を養ってもらわないとな!」
あの糞鏡割るわ。
「ちょっと準備してきていい? ネクタイ変えて、ついでに髪型も直したいから」
「そうね、まだ時間あるから部屋でゆっくり休んでて。流石に上のクラスの上級生を10人抜きは大変だったでしょ。時間になったら起こしてあげるから」
母さんのテンションが前世でも見たことないレベルで天元突破している。
やっぱりあの糞鏡のカード燃やすか?
「判決、破壊」
「待ってくださいマスター! 俺はいつものマスターと変わらない行動してただけです! そしたら上級生だ上のクラスだ、雑魚は引っ込んでろと言われて喧嘩を買っただけです!」
……あぁ、そういえばアカデミアのカーストってクラス別にあって、下のクラスは最底辺扱いだっけ。
それこそ野良犬レベルの扱い。
なお他校生に対しては外面だけはいいから本当に糞。
「で?」
「最初はブルーとイエローの2人組だったんすよ……それでイエローぶちのめしたらブルーが出てきて、かたき討ちと言わんばかりに挑んできたブルーを全員なぎ倒して、出てきた上級生のトップも返り討ちにして……気が付いたら昇進してました」
そんな事を私がすると思うのか、するかもしれない、するだろう……だが自重はしたはずだ!
少なくとも上級生出てきた段階で私は勝負を降りたと思う。
そこで突っ走ったのはこいつの意思だ!
そういう事にしておこう。
「やりすぎ。上級生のトップって誰よ」
「えーと……宮内とかいうやつです。もう一人トップって言われてたのは出てこなかったですけど」
あぁ、パーフェクトさんは出てこなかったのか。
それだけは救いだ。
作中でMrパーフェクトと言われた人物がいる。
あらゆるデッキを使いこなし、その上で専用デッキならランクが数段階上がる化物だ。
主人公が作中一回も勝てていない相手といえばどれだけ強いかはわかるはず。
世界を救うレベルの奴が一回も勝てていないのだ。
その、宮内とかいうやつは知らん。
多分パーフェクトさんとは別の学年でトップを張ってたんだろう。
アカデミア全体で見ればパーフェクトさんが最強だからな。
「それで、弁明の続きを」
「えと……普通に雑魚だったんで勝ちまして、実技担当教師と校長と学年主任が見てたみたいで……あ、途中からっすけど」
「どうだか」
少なくともアカデミアのバトルフィールドにはバトルの勝敗を記録するシステムと紐づいている。
私達の持っているディスクは私物だが、そのIDやシリアルナンバーは唯一だからな。
その気になれば誰がどこでバトルしたかバレる仕組みになっているが、今回私のディスクはこの鏡に渡していた。
ディープブルーとして使用したのは精霊の力を借りたID記録が残らない物だから、前作ライバルとかそういう人達に呼び出される心配はない。
というかディスクも今はカードになっているからその気になればいつでも出せるんだけど、見たことないバージョンやアニメで敵が使っていた特別な仕様の物もあるみたいで少し怖い。
うっかり使ったら敵認定されかねないからなあ……。
「それで、どのクラスになったの?」
「ブルーっす。実力は折り紙付きで文句なし、まぐれでもないとプレイングから理解してもらえたみたいで……」
「糞が……本当に叩き割るか、カード焼き捨てるかしてやろうかしら……」
「勘弁してください……俺もここまでやるつもりはなかったんすよ……やって心へし折るまでって……」
「奥ヶ崎君とかに手を出してないでしょうね」
「彼なら今日は休んでましたよ。そういや龍馬も休んでたな……」
「あの二人が休み……? ということは……あぁ、あのイベントか」
アニメであったイベントだ。
大した内容じゃないが、奥ヶ崎君が休学する原因になる。
いわゆる決闘イベントというやつで、ライバルと一時的にけりをつけるというものだ。
そのために学校を休む、実はこれ決闘休暇という制度で社会的に許されている……なんでだよ。
いや、一部企業ではそういう動きはあるよ?
どっちが仕事を取るかとかそういうのをバトルで決めるっていうやつが。
あるいは糞上司相手にバトル挑んで要求飲ませるとか。
なお出世にも関わるようになっているので、地位のある人はバトルも強いので下から要求するというのは結構難しいのも事実。
そういう経緯もあって決闘休暇は認められているのだが、基本的に休み扱いで出勤通学して現地でバトルと言うのが基本なのだが、学生程度なら外でと言う事もできる。
流石に立ち会えないと思っていたからどうでもよくて言われるまで忘れてた。
「で、いきなりイエロー飛ばしてブルー……敵、いっぱいできたんじゃないかな」
「そっすね、特にブルー女子からはブーイングの嵐でした」
「殺すぞ」
「イエロー女子からも睨まれてましたし、レッド女子は舌打ちしてましたね」
「判決、死刑」
「ただ男子は結構注目してました! クラス問わずモテモテっすよ! ほら、ラブレター100通貰いました!」
「半分以上バトルの申し出じゃねえか! 判決! 拷問してから死刑!」
そもそも目立ちたくないんだっつーの……なんでお前そんなノリノリなんだよ。
私は平穏な生活を望んでるだけなのに……こっそりアニメのイベントを横から見ていたいだけなのに……。
ついでに昇進するならネクタイコンプリートしたかった……。
こんな飛び級みたいなことせずに、順繰りクラス上げて他の同級生に下から圧をかけていきたかっただけなんだ……。
「とりあえず今後用事ができるまでアリアの所で雑用な。それが拷問になるかわからんけど」
「……十分拷問っす」
なるほど、あの子の下で雑務っていうのは相当きついらしい。
パック開封とかは楽しいんだけど、その後のカードの扱いとかいろいろあるだろうからな。
あとこいつは便利に使えそうだからスパイ行為とかさせられそうだ。
私の姿使わないように伝えておこう。
「他には?」
「え?」
「他にやらかしたこと、その程度でイエローすっ飛ばしてブルーニ行けるわけないでしょ。しかも奨学金付きの特待生、返済義務なしとか余程の事でしょ」
「………………実務担当、ワンキルしました」
「地獄に落ちろ」
できるよ、そりゃあのデッキでもそのくらいできるよ!
だけど加減ってものがあるでしょ!
実務担当はすごく重要な立場の人だからね!
それこそアカデミアの中で五指に入る強さだから!
ついでにアニメでも重要なポジションだから!
それをワンキルって……受験の形式すら見直されるレベルでしょう……。
……待った、ちゃんとあのデッキ使ったんだよね。
「デッキは渡したの使ってた?」
「そりゃまあ、精霊の力で常に欲しいカード引いてましたけど」
「そこになおれ、まず私がボコボコにする」
「ちょちょちょ、待ってください! レッド入学はなんかの間違いだったって事で最初からブルーにいたって事になってます! 就職とかで有利になりますよ!」
「最悪だ! 下から這い上がる方が就職に有利なんだぞ!」
「それは知ってますけど経緯はちゃんと残す事になってますから大丈夫です! 実質入学直後にこうなったってところまでデータとして残ってます! そこは確約させました!」
「……まぁ、それは正当な自己弁護になっているけど、罪が重すぎて誤差」
「あ、あとなんかカードを守ってほしいとか言われて他の面々と一緒に呼び出されたんすけど、それは断っておきました。代わりに奥ヶ崎と龍馬を推薦しておきました」
「それに関してはよくやった」
いやマジで、アニメのイベントで世界が滅ぶ系のど真ん中じゃねえか。
しかも主人公覚醒前に挑むイベントの一つだ。
この調子なら決闘休暇明けにでも龍馬が推薦されるだろう。
「というわけで、なにとぞ恩赦を……」
「あーもしもしアリア。あの鏡引き取って。余計なことしたから一番下の扱いで雑務やらせて」
「……あ、死んだわ俺」
まだ使い道があるとはいえ死刑囚の仲間入りだよ、やったね機械仕掛けの神鏡!
楽に死ねると思うなよ……。
腱鞘炎になったので週間にさせてください。




