20話・危機一髪
「おーい、そっちはどうだ?」
「こっちは終わったぞ」
「見つかったのか?」
遠くから恐らく仲間の石工だろう。がやがやと声がしてきた。数十名の男たちが向かってきているようだ。
「何てことだ。仲間が他にもいたのか」
カルロッタが参ったなと呟くと、ノームに手首を掴まれた。
「お二人とも早く、こちらに」
ノームが促した場所には穴が開いていた。躊躇うと突然「失礼します」と、声がしたと思ったら背中を蹴られていた。あっという間に穴の中に落ちていた。
「うわあ──っ。ナニコレ──!」
中は異様だった。明るく白い空間が細く長く続いているようだ。見かけはそんなに大きな穴に思えなかったのに、穴の中はトンネルのようになっていた。中は滑り台のようになっていて、体が滑って下へ下へと落ちていく。ようやくこの先に終わりが見えてきたと思ったら、穴から飛び出していた。
抜け出た先はリビングのようだった。天井や、床、壁がきらきらと光を放っていて綺麗だった。テーブルや椅子も材質は白木の木材のように感じられるけど、それよりもしっかりとした質感が感じられ、見た目よりも硬質な気がする。
恐らくここはノームの住まいなのだろう。ノームは鉱石の中に住まいを作ると言っていたから、ここはその中に違いなかった。足元には若草色したふかふかの絨毯が敷かれていた。そのおかげで落下時の衝撃は抑えらえた。
穴から飛び出した私達を出迎えたのは、優しそうな風貌をしたノームのお婆さんだった。
「お帰り。ウェデル。あれまあ。カルロッタさま?」
「チムか? 久しぶりだなぁ」
「婆ちゃん。知り合い?」
「こちらは坊ちゃんの護衛を務めていらっしゃる、アコダさまの奥さまよ」
「この子はチムの孫だったのか」
意外にも助けたノームの祖母チムと、カルロッタは知り合いらしい。チムは私に目を止めた。
「こちらのお嬢さんは?」
「夫の姪だよ。ジグルドの娘だ」
「まあ、そうでしたか。私はこの子、ウェデルの祖母のチムです。あのジグルドさまに、このような大きなお嬢さんがいるとは思いもしませんでしたわ」
優しそうな風貌をした老婦人は、にこにこと笑いかけてきた。チムは私の父のことも知っているようだ。
「でも、どうしてお二方がウェデルと一緒に?」
「それはこの方たちが助けてくれて……」
ウェデルが私達に会った時の話を聞いたチムは、深々と頭を下げてきた。
「孫のウェデルを助けて頂きありがとうございました。大したおもてなしは出来ませんが、食事を一緒に如何でしょうか?」
「良いのかい?」
「勿論です。もうそろそろ、うちの主人もお客さまを連れて帰るでしょうから。主人は張り切って先ほど、出かけて行ったんですの。坊ちゃんとそのお連れさまを、我が家へご招待したいから、ご馳走を用意しておいてくれと言って」
坊ちゃんという言葉が出て来て、もしかしてチムの旦那さまとは──と、思っていたら、「うわああああっ」と、言う聞きなれた大声と共に、私達が先ほど出て来た穴からロ-ジイと、人が飛び出してきた。アコダとノアールだ。大声を上げていたのはアコダのようで、ノアールは澄ましていた。
「チム。今、帰った」
「お帰りなさい。旦那さま」
「いま、坊ちゃんのところに顔を出したら、二人がまだ帰って来ていないと言われてのう。そのお二人じゃが……おんや? どうしてここにカルロッタさまとサーラさまが? 今、お誘いに上がったところですじゃ」
チムに出迎えられたロージイは、まだ客人が揃っていないと言いたかったのだろう。ところが先にカルロッタと私がいたので驚いたようだ。




