34話 エルフの寿命
「エルフ、エルフなぁ」
エッダは困ったように首をかしげた。
「エルフってそもそも死ぬのかね?」
人間の一人がこういった。
「さすがに死なねぇってことはないだろ」
「そりゃそうだけどさ、寿命つうのがあるのかって話よ。老衰でくたばったエルフの葬式なんか聞いたことなくないか」
「確かに聞くのは怪我とか病気だな。前死んだから葬式に、って話だったのは肺の病気だっけか?」
他の面々もあれこれ意見をだす。
「先の長は、あれなんで死んだんだっけか?」
ドワーフの一人がこう誰かに聞き
「あれは年明けの料理をのどに詰まらせたんじゃなかったかしら」
ドワーフの嫁さんがそう答える。
そんな中一人の年寄りのドワーフがこんな話をした。
「俺がまだこんなちっさい餓鬼の頃、エルフ領のエルフのおねぇちゃんに片思いしてな。恋文を書いたんだよ」
「それでどうなったんですか?」
「子供の出来心、ってことで当時の大人の間では笑い話になっただけで終わったらしいんだが、そのおねぇちゃんはいまでもおねぇちゃんのままで歳をとらねぇんだよ。この間エルフ領に買い物に行きたいって嫁さんが行って、一緒にでかけたときに見かけたんだ。そしたら俺がおねぇちゃんと言ってた頃のまんまさ。俺と並ぶと俺の娘みたいな見た目なんだぜ。そりゃ背丈と種族で違うってわかるんだが、言いたいことはわかるよな?見た目があのときのままなんだ」
「それ他人の空じゃないか」
「いやいや「あら久しぶりね。あの時のラブレターはまだ大事にしまってあるわ」なんて言われてさ。一緒にいた嫁さんは俺が不倫したんじゃないかって勘違いして怒り出してよ。事情を話したら嫁さんもびっくりってもんさ」
笑い話か怪談という感じの話。これが酒場の話なら担ぐ為のデッチ上げと思って聞くだろう。
しかし周りの面々は真面目に聞いてる。
「エルフってほんと年齢不詳だもんな」
「今の族長、10年だか前に合同で漁に出たときについてきたのを見たことあるけど、あんときゃ小さなお嬢ちゃんだった。俺等の餓鬼と同じように成長はするはずなんだ」
「不思議な種族だからなぁ。不老不死だって言われても驚かねぇや。まぁ、どうしても気になるなら本人達に聞いてくれや。で俺も気になるから、教えてくれ」
エッダは私に対してそう言った。
他の面々も同意してる。これはつまり「異世界人だから多少の無礼は許されるだろ?」って圧力と捉えるべきだろう。
やだなぁ