3-⑲ 勝ち組ども爆発しろ!
「負けちまったけどやるじゃないか、副生徒会長さんも。キバをあそこまで追い詰めるとはな」
戦闘の一部始終を見届けてバースは、拍手を交えて評した。その顔は満足そうに笑顔が張り付いていた。
「勝ちを遮二無二取りにいこうとする気合い、俺は好きだね。最初の時点で実力さが分かっていたのに、それを何とか埋めようとする。いい根性だ」
「グレイは弱者だ。それも自覚している、な。それ故弱者なりの足掻きを見せ戦う。その姿は勝利であれ、敗北であれ、一定の美しさを持つ」
「それにキバが反応しない筈はない、か……全てはあんたの計算通り、てわけかい」
微かな笑いで答えたヴァン、否定を表現しているわけではないことをバースも認識した。
しかしその笑いもすぐに変わる。戸惑いのものに。
画面の中ではミリアによって抱きしめられたグレイに対して、何やらキバがわめいていたからだ。
『くそが……勝ち組ども爆発しろ!』
「しかし心から認めたわけではないようだな」
「そりゃ無理ってもんだろ。誰しもすぐに心変わりをするってのは難しいぜ。あいつにもあいつなりの意地ってもんがあるさ」
苦笑いを交えながらバースは助け船を出した。
「まあ、許してやれよ。あいつも本気で言ってんじゃないだろうし」
だがそれは実現した。
轟音、爆風、衝撃。それらが同時にヴァンの隠し部屋へまで来訪していた。内部住人達には当然の如く、驚愕が手土産として渡された。
「な、なんだ! 何が起きた! 爆発!?」
魔力映像中継器を見やるがそこには黒い画面しか映っていない。おそらく先の爆発で故障したのだろう。もはやその中継器はただの置物となっていた。
「おいおいおい、生徒会長さん! いくら何でもやりすぎじゃないか! 爆発させる必要なんてなかっただろうが!」
「……知らない」
「はっ?」
「あんな仕掛け、俺は知らない」
短く言葉を吐くヴァンの顔面は蒼白となっていた。知り合ってから期間こそ短いが、そんな表情をするのか、と驚きをバースは抱いた。
が、それもすぐに切り替わった。
「ともあれ行こう! あんたが仕掛けたんでなければなおさらまずい。あいつら全員がどうなったか見に行く必要があるだろうが!」
バースの提案に異存はなかった。
生徒会室は思った以上に破壊されていた。
机、椅子、ロッカー等がなぎ倒され、壁にめり込んでいるものさえある。床もところどころ炎が燻っていた。だが、そこはキバットとキバンカが消火作業をすでに始めていたことから、重大なものにはならなさそうではあった。
そんなところへバースとヴァンの2人が駆け込んできた。
「キバット! キバンカ!」
「バースさん!」
「俺たちは無事ですが、グラディウス達とキバが……」
簡易的なれど的確な現状報告を行うキバット達。失点こそないのだが、内心の苛立ちから思わず舌打ちしてバースは答えた。
「お前ら2人はそのまま消火作業だ! 俺も手伝う! 生徒会長さんは3人を探してくれ!」
当然、とばかりに生徒会室に踏み込むヴァン。
が周囲を見渡すが姿らしいものは全く見られない。一瞬嫌な想像が頭をよぎる。
「キバ! ミリア! グレイ! 無事か!」
「当然です!」
突如倒れていたロッカーが飛び跳ねる。そこに簡易防御魔法を展開していたミリアと抱えられたグレイの姿が現れる。
「あれだけせんぱいが頑張ってくれたんです! そのせんぱいを傷つけるのであれば……あたしの骸を超えてからにしてもらいますよ!」
「爆発に巻き込まれたのはグラディウスだけじゃねえんだけど!? 俺もいるんだけど!?」
近くの机がひっくり返りそこからキバが姿を現す。咄嗟にそれを盾としたためか、わずかに服が焦げている程度で済んでいる。
「あなたなんかにかけるものは防御、回復魔法どころか情けだってありません! せんぱいをあれだけ苛めて! 天罰覿面を思いしってください! あとその場にいたら、ロッカー落っこってくるんでそのまま当たってくれると嬉しいんですけどね!」
「え、うおわぁ!」
先ほどミリアが弾き飛ばしたロッカーがほぼキバに真上から落下してくる。何とか飛びのいたことでそれを回避した。
「という訳で会長! あたしとせんぱいは無事です! 会長は犯人を!」
「その必要はない」
三連牙でもバースでもミリアでもグレイでも、ましてヴァンでもない。聞いたこともない発声に刹那だが全員が戸惑った。
「大鵬を捕まえる罠に鴉が引っ掛かった、とでも言おうか……」




