9話 地下にて。
サブタイトルが思いつかなかった。
そのぐらい内容が微妙?
レクスの店の中は、外装……つっても果てしなく続く壁だけなのだが。
そこからでは把握できなかったがとりあえず王城と同じ広さはあった。
敷地面積で言えば下手すれば大型ショッピングモールと変わらないぐらいだ。
「結構広いな、王城と同じ広さか?」
「ええ、そうなんですよ、元々ここは王城の地下室として設けられたのですが、何代前かの王様が埃っぽいということで地上と地下の入口を閉ざしてしまったらしく、もう上と下では行き来できないんですけどね」
広い空間に、スーパーのような商品だなやら、檻とか色々と置いてある、しかも檻には人間……ようするに奴隷ってやつか。
「ここは奴隷を売っているのか?」
「ええ、奴隷だけじゃなく色々と取り扱っていますけどね。さて、それでは早速商品を出していただけますか?」
レクスは少し広くなっている場所に来ると手を広げてさあ来いって感じで待ち構えてやがる。
「んじゃ、遠慮なく」
俺は異空間の入口を上に開いてそこから勇者御用達装備を小山ができる程度落としてみせる。
「え、えぇぇ!?」
これには流石のレクスも驚いたようだ、この驚きが果たして俺が魔法を使った事なのか、それとも品物の質についてなのか、それとも量についてなのか。
「んで、いくらぐらいになるんだ?」
その言葉に正気――――いや商人の本能か、すぐに計算、というか暗算かブツブツ何か言っている。
「そうですね、結構な額になるので、ちょっと当店だけでは出しきれません……」
「そうか、じゃ、他当たるわ」
さっさと金にしたかった俺は、装備を再び異空間収納しようと思ったのだが。
「ま、待ってください、確かに今すぐには用意できませんが、交換でよろしければ出来ますよ!」
レクスのやつ、必死だな……腕まで掴んできて止めようとしてくる。
「えーと金貨三百枚ぐらいとりあえず用意できるなら後は色々と交換でもいいぜ?」
「三百枚ですか?一千枚程度までなら出せますよ?」
予想外だった、っていうかこの武器やら防具とかってそれ以上の価値があるのか。
「分かった、じゃあ一千枚先にもらおう、でだ、どのぐらいで金貨一千枚もの価値があるってんだ?」
「そうですね……この黄金の剣、鎧、兜ですかね」
なるほど、黄金勇者シリーズか、確かにそれだけで結構な価値があるだろう。
「じゃあ、残りは――――そうだな、ここに並べて置いて、売れたらその分の代金の何割かを後でくれりゃいいや」
「代理販売ですね、分かりました、では残りはそういう形で行きましょう」
レジっていうかカウンター?からボロい麻の袋を取り出したレクスは、物品を詰め始めた、どうやら魔法の袋的なものらしい、どんどん入っていく。
まるで俺の異空間みたいだな。
「その袋っていくらでもはいるのか?」
「いえ、そうでもないですね、まあただまだ余裕はありますよ」
へぇ、じゃあこの際全部任せてみるか。
俺は、残りの不要品を異空間からレクスの目の前に出して見せた。
「ま、まだあったんですね、というかショーゴさんは空間魔法師だったんですね!」
ほう、そういう職業もあるのか。
「似たようなもんだな」
「空間魔法なら転移って使えますよね? もしよろしければここに入口を作ってもいいですよ?」
「入口? ――――ああ、入口ね、そうか、入口か……じゃあ、作っとくかな」
俺は――――勇者特典からの指示に従い、入口の魔法陣を床に描いた。
ゲート魔法、空間魔法に属する物で、固定された位置に瞬時に転移するための魔法らしい、
視覚外であっても魔力の消費量は視界内と同じぐらい少ないらしいので、拠点などに作るのが一般的だとか。
知らなかった、まあ俺召喚術師だし?呼ぶのが専門だからな……っていってもちゃんと何か召喚したことないんだけどな。
「そういや、話は変わるが、ギルドのつくり方ってわかるか?」
委員長様達の話を盗み聞きしたとは言え、完全に知ってる訳ではないのでレクスに聞いてみた、商人、それも闇市で店を構えているぐらいのやつだ、何かしら知ってんだろ。
「ギルドですか? 冒険者のですよね? 私は商人ギルドのつくり方なら知ってますが、冒険者は分かりませんね、すみませんお役に立てそうにないです」
だめか、いくら商人でも冒険者の領分は知らんよな。
「――――金貨二十枚とギルドマスターを除くメンバー五人が必要だ」
「誰だ?」
その声は奴隷の檻の方から聞こえた。
「十七番さん? 珍しいですね、貴女からお客様に話しかけるだなんて」
レクスがいう十七番という奴隷を見た。
その檻の中では――――長い黒髪にやたら白い肌、そして赤い瞳、どっかの軍服もどきのドレス的な服装をした、多分俺より年上っぽい女がいた。